TechCrunchTokyo2013のスタートアップバトルを見てきた。24社のプレゼンがあり、本誌で既に紹介したreluxやKAIZEN platformも名を連ねていた。今回は未だ本誌で紹介したことがなくかつ今回のプレゼンからその事業性に可能性を感じた2サービスを紹介する。1社目は本の要約サイトflierだ。奇しくも先日のMovida DemoDay参加企業である。
flierの特徴:元戦略コンサルタントによる本の要約
flier自体、本の要約をコンテンツとして提供するサービスだ。web上でもPDFでダウンロードしてでも読める。既に日経や東洋経済など17の大手出版社と提携しているようで、著作権の問題はない。むしろ要約をリリースする際には書籍の担当編集者に確認してもらっているという。
flierの要約を読んで本を読みたくなったというユーザーも多く、リリース間もないようだが好調なようだ。無料版・月額525円版・月額2,100円版の3タイプを用意し、法人版もある。法人では既にIBMやトーマツに導入されているという。
本という領域こそ、キュレーションは向く。課金文化もある
本誌でもしつこいくらいに「キュレーション」については様々なサービス事例を挙げて語ってきている。先日のグルメサービス俯瞰の記事では食べログ&RettyのCGMとホイチョイ&テリヤキのキュレーションという構図を作ることも出来る。グルメ領域においてのスケーラビリティはCGMであり、CGMの優位性は簡単に揺るぎそうにない。
しかし、情報は肥大化する社会背景の中でキュレーションのニーズが高まっているのは明らかだ。ニュース領域ではGunosyやSmartNews、旅館ではreluxなどスタートアップでキュレーションサービスが顕在化している。
flierのような本の領域はどうだろうか?この領域こそ、キュレーションとかなり相性の良い分野であると考えられる。本を読む時に我々はジャケ買いや立ち読み、またはブロガーの書評などを参考にするだろう。その本の要約を高いクオリティーで提供してくれると、本を実際に買う際にかなり参考になるし、要約だけ10分程度様々な本を空き時間に読むというのも有用だ。
私は本屋をよく徘徊するが、本を買って読むだけでなく本屋から情報を得ている。それは本の並びであったりジャケットであったり時に立ち読みであったり。なぜ本屋に行くとアイデアが生まれるのか:嶋浩一郎書
flierのような質の高い要約サービスは本を買うという工程の前に新たなユーザー行動を生み出し、その要約単体でも課金する価値のあるコンテンツとなるため需要のあるサービスだと感じる。
CGMかプロフェッショナルか。キュレーションの類型
本の要約という分野では既にbukupeというプレイヤーがいる。bukupeは主にCGMでユーザーが要約を投稿するメディアだ。現状、bukupeではコンテンツの閲覧に特に課金は必要ないようだ。
情報過多な現代において、厳選された上質な情報であれば月額で課金するユーザーは明確にいると思われる。特に所得の高い層において。その観点でいうと、bukupeのCGMの要約を読むより、flierのプロの要約を月額課金で読むという方が合理的であると判断するユーザー層はいるであろう。
戦略コンサルによる要約という質が担保されたサービスであることが最大の差別化要因だが、月額制にして定期的に新しい要約が送られてくるというのもユーザーがサービスを利用し続けるリズムを作る上で効果的といえよう。
結論、本という分野においてはプロによるキュレーションがCGMより効果的でビジネスとしてもスケーラビリティがある。と判断する。
おまけ:スタートアップメディアのキュレーション
最後に、我々のようなブログメディアとキュレーションの関係について触れておきたい。ブログメディアが乱立し記事が膨大に増えていく中で、闇雲に記事数を増やして情報発信していくことだけが正解だとは私は思わない。ビジネス的には記事数を増やしてPVを伸ばすのが結果的に広告売上も伸びて正解なのだとは思う。
一方で記事数が多すぎると、そのメディアの中で読むべき記事とそうでない記事を読者は取捨選択しなければならない。読者のリテラシーを嘗めているわけではなく、頭を使わずともこのメディアの記事であればどれも読むに値する。というブランディングを図るのも一つの手であり、The Startupはそうでありたいと考えている。
決して面倒で様々な情報を扱わずに記事を書かないわけではなく、伝える価値が高いと判断したことを伝える。今後はよりその意識を高めていきたい。The Startup自体が一つのキュレーション機能があると読者に思われるメディアを志しています。ゆえに掲載して、いける!といいですね!と書いたサービスが転けた時は私は猛省します。
イベントに参加したからといって全てのサービスを横一列にプレゼンの内容を報じるのではなく、その中から伝えるに値する新鮮味のある情報のみ選択し、それを深堀りする。flierに関しては、「跳ねそうだ」と判断した。TechCrunchTokyo2013のサービスについてはもう1社紹介予定だ。
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