はじめての編集を読んだのはいつのことだろう。漠然と編集者に憧れがあり、僕の友達はEsquireだったあの頃。時が経ち、僕は書くことを生業とするようになった。書く仕事といっても、誰かに言われたことを書く下請けライターではなく、書きたいことを見つけて書く。文章は企画編集のウワモノであり、ベースとなる企画がないと書く意味はない。
このブログやってるやつがこんなスパルタ塾に行っているというのをFacebookで見て、企画編集の幅を拡げないとヤヴァイと思っていた僕は参加を申し込んだ。そのブログのやつは途中で来なくなったけど。
はっきりいうと、ここ最近はプレゼンしたりパネルに出る方が多く、今更受講するのもなと思っていた。講師陣よりも受講者のレベルが高いか否かがこの手の講座の最大の価値であり、刺激的で面白い受講者がいるのかが最大の懸念だった。
このスパルタ塾は毎回のようにメディア業界の第一線のゲストを迎えてスパルタな課題を課せられプレゼンしていく構成だ。
9月にはじめて講座に参加したが、レベルの高いプレゼンがいくつかあって唖然とした。ヤヴァイ、アウェイだ。底辺だ、俺。と思った。
嫌な汗を感じた夏の終わりだった。後期から参加した僕がはじめてプレゼンした課題はこんな課題だった。
女性ファッション雑誌『GINZA』のカルチャー特集に見えてファッション特集になっている企画案を考えよ。
(実際のプレゼン相手はGINZA編集長)
これに対して僕はストレートに「GINZAみたいなファッション雑誌読んでる女性ってモテないんで、デート特集とかいいんじゃないすか」と提案した。いかにGINZAの読者がモテないかを熱弁した。ラグジュアリーブランドの服を好む女性は男性からすると近寄り難く、マス受けはしない。Oggi系統の綺麗目OLの方が俄然モテる。バレンシアガのバッグを持つ女性はモテないという仮説を常日頃から持つ僕としては自然な発想だった。
するとこのプレゼンはGINZA編集長に相当なショックを与えてしまい、講座では僕のプレゼンがあまりにひどすぎて出禁にすべきか緊急会議が開かれたという。そんな話を昨日講座の最終講義が終わった飲みの席で暴露された。
僕を魅せてくれたスーパーサラリーマンたち
ぶっちゃけ塾生のレベルってどうなのよと懐疑的な態度で臨んだわけだが、僕を魅了してくれた塾生が何人かいた。
外資系広告代理店のプランナーの方
女性ファッション雑誌の編集者の方
AMの編集者の方
こういった方々が僕には印象に残った。彼らの秀逸な企画やプレゼンをインプットできたのは、僕自身の編集の幅を広げてくれたと思う。同じ課題に対してどんなアプローチをするのか。その幅を引き出しとして持っておくことが重要だ。
一方で僕の危惧したとおり、クソなプレゼンも少なくなかった。僕自身もクソなプレゼンは少なくなかったし、興味関心の低い課題はサボったりもした。ハニカムはもう読まないと思う。塾生の半分くらいのプレゼンは記憶にない。企画偏差値70から30までの玉石混合な塾であった。
最終課題はこれだった。
あなたがいかに特別な人か、そしてその特別さがいかに世の中に貢献出来るかを説明せよ。
この課題だけは、今までそういった表現は避けてきたがノマドフリーランサーの僕がスーパーサラリーマンたちに負けるわけにはいかない課題だった。これで負けたらフリーランスを引退すべきだ。
僕は「自分が出演するプロモーションビデオ」を駆使し、辛くもスーパーサラリーマンたちにこの回は勝つことができた。全然企画を作れない上で辛酸を舐め続け、プライドもズタボロにされた上で掴んだ1勝だった。
岡本太郎はこう言っている。
迷った時は、危険な道を選べ。
この日はプレゼンする前から勝利を確信していた。信じていたという方が正しい。本田圭佑が蹴る前にFKが入るというイメージと一緒だ。あれで負けるわけがない。負けるわけがないレベルにクリエイティブを詰めることが重要だということを学んだ。(厳密には動画作ってもらっただけ)
とにかくスーパーサラリーマンたちに編集者としては勝てないと思った。白旗宣言だ。僕は彼らに活かしてもらうポジションで頑張るしかない。
編集者だけが編集スキルが必要なわけではないと認識しろ
この講座を通して、僕は編集者向きではないことがわかった。菅付氏からのこんなコメントが印象に残った。
イタコ力が足りない。プレゼン相手のことを考え抜けば、その人が自分の中に降りてくるから。その人になり切って企画を考えるのが編集者だ。
僕も企画を考えることはあるが、往々にして自分を起点とする。自分を起点とした企画が相手のニーズに合致した時はハマるし、そうでなければハマらない。相手に関する情報を徹底的にインプットし、自分が相手の立場ならどんな企画を立てるかを考え抜く。その視点は抜け落ちていたし、自分の発想の癖だった。
そして僕は相手を活かすよりは自分を活かし切るプレイスタイルを好む。FKは俺に蹴らせろというタイプだ。ただ、本田圭佑が香川真司にPKを譲ることがあるように、時にアシスト役に回る必要もある。僕でいえばインタビューの仕事とかはそうだ。
編集とは、企画を考え、人を巻き込み、モノを作ることである。
企画を考え、人を巻き込む。その段階では特にイタコになる編集者的能力が必要になる。
編集は「集めて編む」という言葉の通り、膨大なインプットがベースとなることも痛感した。自分はインプットが全然なく、シエスタしてばかりいる場合ではないと感じた。
「モノを作る」というアウトプットにおいては、シンプルなロジックで如何にクリエイティブに伝えるかが重要であることを改めた学んだ。塾生のプレゼンを聞いても印象に残るものと残らないものがある。明快な主張かつ笑いがあるか。その2点が印象づけられるかの違いな気がする。
梅木雄平を奈落の底へ落としたスパルタ塾で地獄を見よう!
編集において必要な要素を講座を通して再確認できたが、これは編集者だけではなく多くのビジネスマンにも必要なスキルだ。編集者でないからといって、自分にはこの講座の話は関係ないと思った読者がいるのであれば、センスがなさ過ぎる。ここでドキッとしていただきたい。編集ができる人材はどこいっても価値が今後は高騰していきます。
編集についての上記の解説など「はじめての編集」の中にきっとあることだ。しかし、テキストをなぞるのと、嫌な汗を掻いて体感するのとでは、血となり肉となるモノが全く異なる。なにより、どんな企画でも諦めないで取り組もうと思えるようになった。気がする。
僕にとってスパルタ編集塾は「メディア業界の第一線の講師陣を相手にスーパーサラリーマンたちと企画を競う場」であった。正直、けっこう行きたくなかった。脱落者もたくさんいた。
そんな菅付雅信の編集スパルタ塾(第二期)が4月に開講する。僕も受けてたいゲストの会がある。高崎卓馬さんとかね。
リンク先の豪華ゲスト陣に憧れるような人はまず受講すべきではない。そのレベルでは到底太刀打ちできない。この中にはそのうち一緒に仕事することになる人がいそうだなとか、営業して仕事を取ってやろうという気概で臨むことをお勧めする。
スパルタ塾の塾長である菅付雅信氏はプレゼン講評時はやはりスパルタだ。最初の講評は怖くてチビりそうになった。しかし、良い企画はしっかり受け止め、良い面を評してくれる。そして、飲みに行けば案外優しい。僕がオフラインで人と会うと「全然イメージが違う!ネット上で損してますね」と言われるようにね。
編集スパルタ塾にコピーを付けるとしたら。
梅木雄平を奈落の底に突き落とし、地獄を見せてくれる塾。
としておこう。
君も、地獄を見てみないか?
地獄からは、新たな景色が見えるはずだ。
*申し込む際はぜひ「The Starup見ました」と一言添えたり、申し込むか悩んでいる旨を僕にメッセージしよう。別に僕はリワードを貰っているわけじゃないのでステマではない。
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