ついに日本に上陸したFancyとPinterestの徹底比較

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ソーシャルコマースサービスといわれるFancyが日本上陸するというニュースが賑わいましたね。本誌ではFancyについて言及するのは初ですが、類似サービスとされるPinterestとの違い、及び今後どういう展開になるかについての考察をお届けします。

Fancyはモノを買わせることに徹している

よく言われていることはありますが、Pinterestはイメージ写真の共有が主で、FancyはFancy上に流通しているものは全て買えるようになっているという点が最大の違いです。Pinterestにもギフト機能はありますが、コマースが機能の一部であるという点と、そもそもコマースサイトであるというのは、かなりの違いであります。

また、Pinterestは特にスマホアプリからは写真投稿もできるCGM機能も内包している点に対し、FancyはtoB向けの出品申請ページを設けており、サイト内に流通するコンテンツは全てFancy側で握る仕組みになっています。イメージ×CGM vs 買えるモノのみ×サイト側でコンテンツ制限という構造により、双方のサイトで流通するコンテンツ量にはかなりの差があるでしょう。

PinterestとFancy、直近のDAUによる成長性には疑問符

Pinterestに関しては、日本国内では昨年の今頃に一気に知名度が上がり、その中毒性が指摘されたが、アクティブ率は下がり、日本国内では私の周りではデザイナーくらいしかヘビーに利用していないと思われる。直近のDAUとトラフィックに関して、Alexaから調べてみた。

上がPinterest、下がFancyのDAUをAlexaから引用してきたが、Pinterestのアクティブが下がっているのも事実だが、Fancyも何やら一時期の半分くらいになっている。AlexaランクはグローバルだとPinterestが35位、Fancyは4725位だ。やはりトラフィック量は全然異なるのであろう。

Fancyはセレンディピティコマースの覇者になる可能性も

WebサービスはDAUに捉われがちであるが、各々のサイトがどういうユーザー体験を提供するかの違いに着目したい。どちらも画像とのセレンディピティな出会いという価値を提供しているが、Pinterestは主に女性が目の保養で癒し的な感じで利用する。スクラップブック作成をオンラインで実現したと言われるように。Fancy上では100%商品が買える。

セレンディピティコマースという観点では、サッカー用語でいう「柳沢感」をユーザーに体験させてはならない。この点でFancyに軍配が上がり、ユーザー体験の質はFancyの方が高いと言えるだろう。気に入った画像の商品が100%買えるのと、買えずにRe-pinしてたまに見返して悶々とするのでは大きな違いである。

サイト上で見つけた気に入ったものを買う。そのユーザー体験は必ずやリピート率の向上につながる。Pinterestほどロムらなくても、何か買い物したくなったらFancyへ訪れるというユーザー体験導線になるのではないか。Pinterestは街をうろうろしていて気になったものがあれば買う、Fancyはもう少し買う意識が高い心理状態でサイトを訪れる。

注:「柳沢感」とは サッカー元日本代表の柳沢がよくゴール前の決定的なシーンでシュートを外していたことに由来し、「欲しいモノを手に入れられない」「前の前にある欲求を満たせない」ことの喩えとして使われる比喩である。

トラフィック量はPinterestに優位性があるが、広告ビジネスではなくコマースビジネスという観点で見れば、サイトの設計上Fancyの方に優位性があると思われる。日本法人を立ち上げたばかりのFancyの課題はまずは認知度向上であろうか。

個人的にはPCのUIがイケてない点と、「Fancyする」というワーディングは、「Re-pinする」というワーディング以上に日本では受け容れられないのではないかと感じている。ブランディング上はPinterestの後追い的なイメージを特にマスに対しては拭い切れないであろう。Pinterestの時のように本国でのモメンタムがそれほど強い気運でもない。日本での立ち上がりにはわりと時間がかかりそうな予感だ。ただ、次代を占うポテンシャルの高いサービスであることは断言できるであろう。

資本政策的な観点:Pinterestの$2.5Bは高すぎるのか?

Pinterestの次の資本政策が最近WSJで話題になっている。

As Pinterest Grows, Startup Seeks $2.5 Billion Valuation

このValuationに関して、大してまだマネタイズしてないサービスにも関わらず、強気すぎるという観測が市場でも出回っている。2012年5月の楽天などが参加したラウンドにより、累計$138Mを調達。この時のValuationは$1.5Bだ。(出典:Pinterest Raises $100 Million With $1.5 Billion Valuation from WSJ) この時点からの現在までのサイトの成長性はDAUベースでみるとAlexaの通りほぼ横ばいである。今回の$2.5BのValuationに嫌気が差している投資家も少なくないという。

一方のFancyは直近のValuationは明らかにされていないが、2012年10月に$26.4Mを調達している。(出典:The Fancy Just Raised $26.4 Million, With American Express On Board )累計の調達額は$44.4M。さすがに$1BのValuationには達していないであろう。せいぜい$500Mくらいが現実的かと思われる。

Pinterestの高すぎる希望Valuationに嫌気が差した投資家たちがFancyに出資し、この分野の競争が加熱していくというシナリオも今後は想定されるであろう。ただ、このPinterestの次のラウンドのValuationはいくらくらいが妥当なのかは正直検討がつかない。ポスト$1Bディールのプライシングは至難の業であろう。相応のトラフィックは持っているので、相応のバリューにはなるのであろうが、適正価格の算出は難しい。未上場株で適正価格を算出しようという魂胆がアホらしいといえばそれまでですが。

サイトパワーの差に関して言えば、一時期のGroupon vs LivingSocialを思わせる構図であるが、Fancyの巻き返しがあるかに今後注目したい。

*本記事はBLOGOSに転載しないよう、お願い致します。

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