次代の時価総額10億ドルサービス:Fab.comは衝動買いを誘発するコマースサイト

Pocket

今年からは海外の主要プレイヤーのネタも提供していこうと思います。Fab.comはセレンディピティ・コマース銘柄として、Pinterestに次ぐ注目度の高さです。UIはPinterestライクですが、最大の違いは全てコマースに直結していること。商品画像がフィードで流れてきますが、全て購入できるものが流れてくる。フラッシュセールのコマースとも言われていますが、デザイン性の高い製品のコマースという方がしっくりきますし、CEOもそう主張しているとか。

■目次
1:Fabの概況
2:コマースサイト市場概要とEtsyとFabの比較
3:Fab類似サービスMONOCOと国内オフライン雑貨バルスとの比較
4:アパレルフラッシュセールGILTとFabの比較

Fab.comの現況:会員数は900万人

色々とソースを拾ってまとめると下記のようになる。もともとはゲイ向けSNSだったとか、短期間で急成長とかその手の話は全て下記のリンクでご確認下さい。

■ビジョン:デザインにまつわるすべてがある場所を確立したい
出典:450万ユーザーに成長のFab.comを率いるCEO、Pinterestとの協業に関心

■会員数:900万人(2012/11、FabのCEOブログから)
出典:オシャレなソーシャル&モバイルコマースFab.com

■最新時価総額:$600-700M(2012/7/18シリーズCで$105M調達)
出典:Fab Seals The Deal On $105 Million In New Funding

■市場規模:デザインコマースは1,000億ドル規模らしい
出典:ピボット(方向転換)はいつするべきか?ピボットする時に確認する10項目

Fab.comは女性が衝動買いをするためのコマースサイト

セレンディピティ・コマースというのはあくまでお洒落ぶった言い方であり、要は衝動買いを誘発することを指します。デザインコマースの市場が1,000億ドル規模らしいとはいえ、Fabで誘発するような「衝動買い」の市場はどれくらいなのでしょうか。私自身はほぼ計画的な買い物が90%のため、衝動買いの心理があまりわかりません。やはり女性がメインユーザーではないかと思われます。少し古い資料ですが、女性の衝動買いについてという資料で少しは女性心理がわかりそうです。

・半年の間に6割の女性が衝動買い
・単価3,000円以下が8割を占める
・購買動機は恋愛に似た直感的・感覚的な感情で幸福感をもたらす

この辺のtipsは汎用的に当てはまりそうですね。

ものすごくわかりやすくいうと、Fab.comはフランフランみたいなものですね。たまにCIBONEみたいなものも紛れ込む。フランフランをフラフラしていて、いいなと思うものは見つかることもあれば見つからないこともある。目的性があって行く場合もあるでしょうが、無目的に暇つぶしに訪れることもあるかと思います。Fab.comは無目的に訪れて、衝動買いをするサイトといえそうです。 

Fab.com最大の競合は、衝動買いが同様に多いEtsy?

購買行動は「目的性のある購買」「無目的で衝動的な購買」に分けられます。オフラインでこの比率がどうなっているのかの詳細は追いきれなかったため、本稿では割愛しますが、オンラインのコマースサイトはどのような性質を持っているでしょうか。

こんなマッピングでしょうか。ハンドメイド品を売りにしているとはいえ、最大の競合はEtsyといえるのではないかと思います。目的性の高い買い物であれば、検索機能が優れていればokともいえますが、無目的で衝動買いを狙うサイトであれば美しいUIで滞在時間を上げる必要があるでしょう。EtsyもFab.comもどちらもPinterestライクであり、UIではあまり差別化はなく、ハンドメイドvsデザイン性の高い商品というMDでの差別化になるのでしょう。

バルスの決算短信から国内市場規模を探る

Fab.comのターゲットユーザーや戦うマーケットが上記で明らかになりました。日本国内ではFab.com的なサービスをフラッタースケープがMONOCOとして展開しています。国内市場はどうなのでしょうか。

MBO実施前のフランフランなどをフランチャイズ展開する株式会社バルスの決算短信を見てみましょう。(出典:H23年度決算短信

売上:333億円
営業利益:19億円
営業利益率:5.7%

自社商品もあるでしょうし、在庫を持つ持たないという違いもありますが(フラッシュセールサイトは在庫を持つでしょうからMONOCOも在庫は持つと思われます)国内においても最低2,000億円程度の市場はあるといえます。(バルスで業界シェア7%くらいと想定して逆算)よってMONOCOもスケールすれば二桁億円の売上は作れそうですね。

フラッタースケープの複雑な株主構成は気になりますね。事業数字が順調に伸びていれば、Fab.com類似銘柄として億単位調達があり得そうです。

GILTよりは確実性が高い?:Fab.comの未来

フラッシュセールではなくデザイン性の高い製品に特化したコマースという表現をしているとはいえ、フラッシュセールとしての側面からも考察します。Grouponのようなオールジャンルクーポンではなく、モノのフラッシュセールとしてはGILTが良い比較対象になるでしょう。

GILTは最初こそ上手く立ち上がっていたように見えましたが、最近はどうなのでしょう。アパレルのファミリーセールをオンライン化した感じでしたが、アパレルだけでは苦しいとみたのか、GILT CITYという高級クーポン市場にも手を出しています。Crunch Baseを見ても最近はあまり話題になっていないようで、2011/7のシリーズE以降に2012/10に$15Mをデッドでファイナンスしています。予想以上に事業が伸びなかったことと(Unique Visitorは昨年の同時期よりと比較したらむしろ下がっている)Grouponの類似銘柄として成長可能性に投資家が疑問を持ち出した結果ではないでしょうか。 

■なぜGILTは失墜したのか

①:ファミリーセール市場の限界(市場規模がさほど大きくない)
②:ユーザーはファミリーセールで服を買い続けることを好むか?(飽きられた。ユーザー行動の再現可能性が低い)

この2点に集約されると私は考える。ファミリーセールはたまに寄って買うから希少価値があるし、掘り出し物に巡り会えたらラッキーな感じがする。しかし、毎回ファミリーセールで服を買いたいと思うだろうか?しかもGILTで取り扱うのは高級ブランドであり、ファッショニスタがメインターゲットと思われる。ファッショニスタが毎回ファミリーセールで服を買いたいと思うか?答えはNoだ。

蛇足までに私は大学時代にBNYでファミリーセールのバイトをしていたことがある。そこで得たインサイトは、たしかにファッショニスタも来場するのだが、金を持ったセンスのない客がとても多かったという事実だ。そういうユーザーはたまたま買いに来たという感じで、GILTのようなサイトで扱う服を継続的に買うような層には見えなかった。

GILT側は期間限定セールなど、ユーザーモチベーションを揺さぶったが、それはドーピングのようなもの。ユーザー行動を本質的に見誤ったのではないだろうか。ユーザー行動の再現可能性が低いということは、持続可能性が低い事業である。ゆえにGILTの今後は厳しいと判断する。

■GILTの教訓はFab.comに当てはまるか

①:デザインコマース市場の限界:○
⇒ファミリーセール市場はセカンダリー市場のような面もあり、フラッシュセールだけに頼らないプライマリー市場の魅力を持ってすれば、それなりの規模であると言える
②:ユーザーはFab.comでデザイン性の高い商品を買い続けるか? :△
⇒メインは雑貨であり、必要性は低い。どれだけ中毒性を維持できるかがポイントであるとも思うが、Pinterestですらアクティブ率の低下が囁かれており(日本国内では自明ですね)この点は判断し切れませんね。

ゆえにFab.comはGILTよりは成功確率が高そうだが、飽きられるか否かというリスクを孕んでいるといえます。今は飛ぶ鳥を落とす勢いのようですが、中毒性を維持するのはPinterest同様に最大の課題といえそう。

そんなこんなでFab.comを3つの観点で分析してみましたー。2013年に国内でも大きくブレイクするでしょうか。楽しみな銘柄です。

ネット業界の転職ならブライツ!

会員数130名突破!スタートアップ業界の最新動向について知りたいならUmeki Salon



Pocket

コメントを投稿する

「次代の時価総額10億ドルサービス:Fab.comは衝動買いを誘発するコマースサイト」に対してのコメントをどうぞ!