サブスクリプション・マーケティングの実態と収益最大化のポイント

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私が一番好きなビジネスモデルは月額課金モデル。言い換えると、サブスクリプションモデル(以下サブスク)ともいえます。

過去にはこんな記事でサブスクモデルを紹介してきました。

サブスクの本質は「お世話になっております経済」か?
最低5年は粘れ!その先に果実が。月額課金12サービス数値比較

私自身、オンラインサロンやウメキワークスなど、自社事業は全てサブスクなので、非常に関心が高い領域です。ミッドタウンのツタヤで「サブスクリプション・マーケティング」なる本を見つけて読んでみたので、気になった点を少しご紹介します。

なお、本書のサブタイトルである「モノが売れない時代の顧客との関わり方」ですが、サブスク=所有権へのアクセス課金ではないので、その点は大きな違和感がありました。たしかに、オンデマンドビデオサービスや、音楽ストリーミングにそのロジックは当てはまりますが、メルマガやサロンの情報はもともと「所有」という概念はないですが、サブスクサービスです。

サブスクリプション・エコノミーの実態

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上記は本書からのスクショで引用ですが、サブスク・コンサルティングサービスを提供するズオラ社が「サブスク・エコノミー・インデックス」を作成し、売上の伸びがS&P500に対して9倍あると示しています。

具体例として、アドビの2016年末の決算は過去最高収益の58.5億ドルに達、その78%がサブスクからの収益だったと挙げられています。

サブスクはユーザー獲得と同様、いやそれ以上に解約率(チャーン)を下げることが利益を大きく左右するため、チャーンをケアせよという話がしつこく紹介されています。知らなかったのですが、引用すると、下記が平均チャーンレートとのこと。

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メディアのチャーンレート、36%もあるのか!高いな。。

最近、ニコニコ動画やクックパッド、食べログの月額課金ユーザー数のピークアウトが報じられていますが、チャーンレートが高ければ、新規ユーザー獲得数よりも解約者数が上回ってしまいます。

これら3つのサービスは機能提供型課金とも言われており、NetflixやHuluなどのコンテンツを見るために課金が必要というピュアなコンテンツ課金の場合は、機能型よりもチャーンレートは低いのではないでしょうか。機能型とコンテンツ型に分けてのチャーンレートも知りたいところです。

コピーできない「関係性」という価値をサブスクで提供せよ

本書のPART1ではこんな記述があります。

他の企業があなたの提供する商品やサービスをコピーすることは可能かもしれない。しかし、あなたと顧客との関係をコピーすることは不可能である。

たとえばECでラ・ペルラというブランドのパンツを買うとしましょう。ぶっちゃけどこで買っても価格に大差はありませんが、Amazonを普段から使っていて、Amazonプライムも使っていると、届くの早いしポイントもつくし、まあAmazonでいいか。Amazonを選択します。

ECの利用頻度が低い人でも、Amazonプライムビデオや、Kindleに日頃触れていれば、脳内のAmazon占有率が高いため、第一想起でAmazonを選択するでしょう。顧客との関係性というのは、こういうものを指すのかなと。

この関係性でいうと、サブスクのみで重要な話でもないわけですが、ユーザーごとにセグメントを分けて、待遇を変えることでエンゲージメントを強める施策の重要性を下記のように紹介していました。

積極的に意見を述べたりアドバイスしてくれたりするロイヤリティの高い顧客や潜在的なアドボケイトを見つける。自社を支持してくれる人に対して、貢献を認める、特別な催しに招く、特別プログラムを用意する、感謝の気持ちを伝えるなどの形で報いる。アドボケイトが自社のために効果的に活動できるよう支援する。

エバンジェリスト、スーパーユーザー、アドボケイト、ヒーロー。呼び名は何であれ、企業はこうした人々を増やさなければならない。彼らは商品、サービスを使い続けてくれるだけの顧客ではない。良い評判を広めてくれるのだ。

通常のサービスとサブスクにおいて、サブスクの方がサービスとユーザーの接点が多かったり、ライフタイムが長かったりします。ゆえに、「より」関係性が重要であり、財の性質によっては「リレーションシップ課金」となっているのだと思います。

SUB

人は誰しも特別扱いされて悪い気はしないでしょうし、好きなサービスであれば好意的な口コミを自然としてくれるものです。良い意味でユーザーを差別し、一部のユーザーに特権的なサービスを付与するという考え方は、サブスクに限らず様々なサービスのマーケティングにおいて、もっと練り込んで考えてみても良いかと思います。

しかし、こういったインフルエンサーを買うのは間違いで、「支持は得るのみであり、買うのものではない。」という指摘も本書ではあり、これは昨今のインスタグラマーのPR投稿を快く思っていない私としては、同意です。

人々は製品を買っているのではなく、自分が伝えたいスーパーストーリーを作るために行動しているのだ。もちろん、スーパーストーリーを持つ製品を買ったり使ったりすることが、そうした行動の一部になる場合もある。

これもサブスクに限った話ではないと思うのですが(汗)成熟社会においては単純な物質的な消費よりも、人々は潜在的に「自分が伝えたいストーリー」を持ちたいという思いがあるといえます。インスタに載せるために旅行する。とかは、まさにそういったユーザー行動の顕在化の表れです。

また、ストーリーは後付けのマーケティングではなく、戦略である。プロダクトの根本をなすというか、プロダクトにストーリーが組み込まれているというのが、良いプロダクトなのでしょう。

これを上記の話とつなげていくと、サブスクはライフタイムが長い方が当然ながら収益性が高く、ゆえにストーリーが内在したプロダクトの方が、ユーザーが愛着を持ちやすく、プロダクトとの関係性を(勝手に)感じて、口コミしてくれる(かもしれない)と考えられます。

本書はぶっちゃけサブスクの話のみで1冊持たせるのは厳しくて、サブスク以外にも当てはまる話を沢山盛り込んで、なんとか本として成立させた感があるのですが(実際に世の中、そういう本は少なくないです)サブスクに限らず、マーケティングに関心のある人は読んでみても良いと思います。

チャーンを意識せよ。チャーンを下げるための施策は何か死ぬほど考えよ。というのが、サブスクサービスの最大の肝であり、既存ユーザーに提供するサービスの質の向上がチャーン低下への最大の近道で、その結果として「顧客とサービスの関係性(の強化)」があるのかなと。

これを本書では「価値育成」といいますが、具体的なチャーン低下の施策(退会ページを見つけづらくするとかではないやつ)の話をもっと知りたかったなと感じました。小手先のテクニックって、案外ありますからね。Umeki Salonでもチャーン低下のための小手先のテクニックってありますw

ご興味ある方は下記から是非。
【Not Sponsored 記事】



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