こちらの本を國光さんに勧められて読み進めているのですが。
あこの本はアメリカの様々な産業の起業家25人の事業史を端的に紹介した良書です。1人あたり20ページ程度なので、1日30分〜1時間で1人分ずつとか読み進める読み方が良いでしょう。
時系列が肝で、アメリカの発展において、「どういう順序で産業が勃興していったか」も抑えることができます。過去の歴史を時系列に抑えることが、未来予測に役立つというのが國光さんの信条のようですが、かなり的を得ていると感じますので、この本を読みながらアメリカ史を把握することをお勧めします。
今日はその中でも、ディズニーの話が興味深かったので、簡単にご紹介。
ご存知の方も多いでしょうが、ウォルト・ディズニーはアニメーション制作スタジオから事業を始めて、映画制作を手がけていくようになります。その際に、ディズニーが生み出した「うさぎのオズワルド」というキャラクターの著作権が、配給会社名義で取得されてしまっていて、それ以降自ら考え出したキャラクターやそれに関するすべてを厳しく管理するようになります。
それから「ミッキー」が生まれ、「白雪姫」が生まれ、それらが登場する映画がヒットし、その「キャラクタービジネス」で売上を伸ばし、終いにはABC放送と契約を結び、「ディズニーランド」という番組を流し始める。
その番組は、カリフォルニアに開演予定のテーマパークの名前であり、番組をを通してプロモーションしていき、テーマパーク「ディズニーランド」の大ヒットへと繋がっていく。そして、ディズニーランドは様々な企業にとっての広告出稿の場へとなっていく。
なぜこの話に私が興味を持って紹介しようかと思ったのかというと、エンタメビジネスの一つの有用な方程式だと感じたからです。
1.コンテンツがヒットする(興行収入)
2.コンテンツ内のキャラクターが人気となる(ライセンス価値)
3.コンテンツやキャラクター関連グッズが売れる(物販収入)
4.メディアを通してコンテンツを再利用する(ほぼ無料での宣伝)
5.自社プラットフォームをリアルで持つ(入場料収入)
6.自社プラットフォームの集客力がビジネスになる(広告収入)
エンタメ業界で、アニメーションを起点にここまでビジネスをグロースさせたのは、歴史上ウォルト・ディズニーが初めてなのではないでしょうか。
コンテンツビジネスが、コンテンツビジネスで終わってしまうか。その枠を超えて、ディズニーランドまでスケールするか。
今後、大きな流れで見ると、AIとIoTで労働生産性が上がり、人々の余剰時間が増える中で、エンタメビジネスの相対的価値が今より上がります。その際に、こういったディズニーのグロースサイクルを知識として知っているか否かは、自らがエンタメビジネスを手がける際の打ち手に大きく影響してくる気がします。
エンタメ業界の人からすると、知られていて普通のことなのかもしれませんが、「ディズニーランドを作ってしまう」までやってしまう人はなかなかいません。「ポケモンランド」とか、本来的には作っていいはずじゃないですか。それなのにやらないのは、ポケモン関係者がウォルト・ディズニーほどには商売センスがないからなのでしょうか。
ある意味で、イケダさんは「イケハヤランド」を作ろうとしているあたり、このサイクルに従順に取り組んでいるのかもしれません。エンタメビジネスの終着点は、リアルスペースである、と。堀江さんも「ホリエモン祭り」やってますしね。
特に見落としがちなのは、「コンテンツが最大の広告となる」という点でしょうか。広告でユーザー獲得する前提で事業を考えている人には、馴染みがない発想かもしれません。コンテンツを生み出せるプレイヤーが少ないので、「コンテンツが最大の広告になる」ことに気づかないのかもしれない。
ちなみにディズニーは現在は番組に飽き足らず、自前で「ディズニー・チャンネル」なるケーブルテレビを持っていますね。
エンタメの価値が相対的に上がる時代において、「体験価値」が上昇し、すでに音楽業界ではライブ市場が伸びています。一見、面倒くさいようにも思えるのですが、「ユーザーに素晴らしい体験価値」を提供できれば、しっかりとした収益も付いてくるのではないかと思います。
「アメリカン・ドリームの軌跡」の中のウォルト・ディズニーの20ページから考えると、これほどまでに学ぶことがあります。ただ単に読むのではなく、自分が携わるビジネスにいかにして応用させるかという視点で読み、理解しようとし、解釈をする。という読み方をしていくと、有意義な書になるのではないかと思います。
本は読むだけではなく、「読み方」が大切ですね。