久々に個人的に大ヒットしたビジネス書でした。本誌の読者は、シリコンバレーの起業家の本とかを読む前に、この「リクルートの すごい構“創”力 アイデアを事業に仕上げる9メソッド」を舐め回すくらいに読み込んだ方が良いでしょう。
TheStartupの読者でこの本が刺さらない人は、もう一切TheStartupは読まないでくれというくらいには、ビジネスディベロップメントについてわかりやすい解説されていますね。
リクルートのコンサルティングを長年務めていたBCGの方が、リクルートの新規事業の作り方を、他企業にも展開しやすいメソッドとしてわかりやすく紹介しています。
リクルートの様々な事業の成功例失敗例が紹介されており、最新の事例ではホットペッパービューティーの例も紹介されており、非常に勉強になりました。既存事業でもKPIを変えることで再成長が可能であるという証明になっています。
「美容領域でどこよりも早く、代替不可能なプラットフォームとなる」ことを目的に、「価値KPI」をこれまでの「ホットペッパービューティーの広告売上」から、「サロンボード活用サロン数&予約数」に転換することを決断。” https://t.co/vVm9HMLLYo
— 梅木雄平 (@umekida) 2017年6月8日
“このサロンボードの導入により、2010年度に約110万人だった予約数は、2016年度には約6000万人にまで増加。心配されていた売上も約3倍に増えたという。” https://t.co/rFhc8TrB7J
— 梅木雄平 (@umekida) 2017年6月8日
いくつか気になる箇所をtwitterでシェアしながら読んでいましたが、抽象的な話にはリアクションがつく一方、こういった具体例はまるでリアクションされないのが興味深かったです。
本書は「0→1」「1→10の前半」「1→10の後半」「10以降」と4つのフェーズで章構成されており、それぞれのフェーズでのリクルートの仕事の仕方を紹介しています。5章目の「経営陣の役割」はおまけ的なものですが、大企業の経営者には役に立つ内容だと思います。
リクルートは各フェーズで深く丁寧に考えてオペレーションに落とし込んでいるんだなという印象を持ちました。たしかに過去の経験から、リクルートでそれなり以上の立場にあった方とお話をすると、事業の粒度を細かく落とし込んで考えていらっしゃる印象がありました。
国内のスタートアップを客観的に見ていて、リクルートでのある程度以上の立場の人のような事業構築力を有した人材が少ないのではないかと感じます。リクルート出身である必要は全くないのですが、なんか事業の作り方が「粗そうな企業」は少なくない。経験値がないので、わからない場合もあるんでしょうね。
いくつか個人的にツボだった話がありましたので、紹介しましょう。
マネタイズ:時間か予算のリプレイス
“これまで5000円の小遣いを持ち、毎月全額使い切っていた人が、いくら良いサービス、おもしろいサービスができたからといって急に月1万円払えるようにはならない。新しいサービスに料金を支払うためには、何かほかの支出を削ってその料金… https://t.co/e1DyoMA1gp
— 梅木雄平 (@umekida) 2017年6月8日
“希望的観測ではなく、「誰の財布から、どの分の支出を代替するのか」というレベルまで突き詰めて考えなければならない” https://t.co/BXvNlvbgob
— 梅木雄平 (@umekida) 2017年6月8日
これ、案外具体的に落とし込めていない事業者が多い気がします。
私の場合、Umeki Salonというプロダクトを例に挙げると、1つ狙うべきポイントとしては「起業家や意識高い起業家予備軍」から「月1回程度の飲み会の料金(4,000円)」で「飲み会で得られるより良質なオフレコ情報とコミュニケーション」を提供するという目的があります。
オンラインサロンを始めた当初は「メルマガ」が競合と思われがちでしたが、そうではなく「飲み会」が競合の一つです。
ウメキワークスというプロダクトの場合は、「投資家や起業家」が「自分で市場について調べる時間」を「コストカットできる」という価値を提供しようと考えて始めました。案外投資家は読んでくれないのですが、思いの外起業家の読者がかなり多いです。
プロダクトを出して1年運用した結果としては、想定以上に起業家にニーズがあったが、投資家にとっては本業とも言える行為なので、投資家にはさほど刺さっていないようでした。投資家はそこをコストカットしてはいけないという考え方があるのかもしれません。
タイムベース競争:スピードは6倍の価値の差を生み出す
“タイムベース競争とは、コストと品質という2軸の競争の世界に、「時間」すなわちスピードという3軸目を加える考え方” https://t.co/lplaE7P7Lq
— 梅木雄平 (@umekida) 2017年6月8日
“タイムベース競争に優れた企業と平均的な企業では、成長率では3倍、利益率では2倍の差が生まれるというものである。3×2で、実に6倍もの利益成長の差が付いている” https://t.co/W4Gir9dB8B
— 梅木雄平 (@umekida) 2017年6月8日
“・市場の不をもう一度見つめ直し、自らの提供価値を再定義し、「スピードで圧倒する」「マネタイズポイントを変える」「周辺領域に拡大する」「他社のビジネスプロセスに入り込む」などの形で進化させることで、新たな成長を生み出すことができる” https://t.co/E5Cva5rWj5
— 梅木雄平 (@umekida) 2017年6月8日
この辺の話も目から鱗でした。スピードが速いと、6倍も利益成長の差があるのか!と。スピードはこれからもっと重要性を増していくでしょうね…
一度事業を始めてしまうと「市場の不」を見つめ返すのって、実はあまり定期的にやっている人は少ないのではないかと思います。定期的に見つめ返して、素早くピボットかけるのも重要ですよね。
“既存顧客のすぐそばにある需要を掘り起こすことが、イノベーションの成功のカギ” https://t.co/mN0sF5SSAi
— 梅木雄平 (@umekida) 2017年6月8日
言われてみると当たり前体操ですが、既存顧客へのアップセルが一番利幅も大きそう。既存顧客周辺の需要を誇り起こすというのも、案外灯台下暗しでおろそかになりがちな打ち手だと思います。
ということで内容を紹介しすぎてしまうのはアレなので、続きは書籍で。各フェーズで丁寧に腰を据えて取り組まなければならない「勘所」がこの書籍から掴みやすいです。私も本書を読んで、携わっている事業のKPI設定を再考しようと思った次第です。
ぶっちゃけ、リクルートに入社して学びたいと思いましたね。こういう時代ですし、兼業というか週2日社員みたいなの、募集してませんかねw 梅木の週2日未満の起用にご関心のあるリクルートの方いらっしゃれば、メッセージください!
2017年のビジネス書としては、ベストセラー候補であるとまで言い切って良いと思いました。なんと楽天ブックスでは売り切れになってました。なので、皆さんアマゾンで。Kindle版あるので、Kindle版オススメです。