なぜスナックは潰れないのか?成功するコミュニティ5つの要素

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例の箕輪マンが編集の、SHOWROOM前田さんの人生の勝算。金曜夜にサクッと読みました。

前田さんとは一度ランチをご一緒させていただいたので、直接聞いたお話もありましたが、SNSに次にライブストリーミングが来るという話と、自身の体験から設計したコミュニティサービスとしてSHOWROOMという観点が私にとっては興味深かったです。

若手栽培マンがこの本を読んで、俺も仕事に燃えてやるぜ!とモチベーションを上げられそうな観点では、藤田晋さんの「起業家」的な効用もあるといえるでしょう。特に「自分のコンパスを持とう」という話は、万人に刺さって良いと思います。

本稿では前田さん曰く「秘伝のタレ」だという、コミュニティサービス論について、本書を引用しつつ、考えを深めていきたいと思う。

☆梅木が考える「人生の勝算」を読んだ方がいい人

・コミュニティサービスに高い関心がある人(実益性的にマスト)
・起業家物語に心を動かされたい人(サプリとしてのエンタメ)
・同年代のトップランナーから刺激を受けたい30歳前後の人

なぜスナックは潰れないのか?コミュニティには「余白」が必要

まずは本書から何点か引用します。

私自身がコミュニティビジネス好きであることは、読者の皆さんならご存知でしょう。私は一見、冷たいように見えて身内には優しいんですよ。大勢に愛想を振り撒けないだけで…

コミュニティサービスの原体験がありまして、何度か紹介したことがありますが、私は6年前にソーシャルアパートメントというシェアハウスのマーケティングをしていました。実際に自分で住んでいたこともありましたし、コミュニティという付加価値に強い関心を持ちました。当時年収300万円なのに、独り暮らしの8.7万円の祐天寺の部屋から上野毛の10.4万円の部屋に引っ越しました。年収に対しての家賃が高いよw

しかしその貧乏な時代の私が家賃を上げてでも入居したいと思うほど「面白そう」というコミュニティの価値があったのですね。

その後ご存知の通りUmeki Salonというオンラインサロンを作って早5年が経つのですが、コミュニティには「賞味期限」があるということを経験上知っていました。常連も固定からされ、新規参入しにくくなっていきます。Umeki Salonでも実際にそういう悩みを抱えており(マンネリ気味です)どうにかしたいなあと思っていました。

これからのUmeki Salonを設計する上でも、コミュニティが深まる5つの要素の話は非常に興味深く、整理してみたくなりました。Umeki Salonで当てはめてみると

1.余白:梅木自身の不完全さ
2.常連客:きむしんさん、けんすうさん、田端さん、國光さんなど
3.仮想敵:TechCrunch?
4.共通言語:栽培マンなど(これはTheStartupでもそう)
5.共通ベクトルや目的:ここが弱いかなあ

こんなとこかな。スナックは本書での説明もある通り、ママが最大の資産であり、食べ物や飲み物は大したことないし、店も狭いので家賃も大してかからない。銀座のクラブや西麻布のラウンジよりクオリティは低いはずです。しかし、「人間的な」コミュニケーションがあるという点が魅力で、ママの不完全さこそが最大のコンテンツである。

要は、完璧な人よりも突っ込みどころがある人の方が、コミュニティ運営に向いているのではないかというのが前田さんの仮説。自分を客観的に分析するのはなかなか難しいのですが、私は突っ込みどころが多く、愛されキャラであると言われることがたまにあるので、コミュニティ運営者としての素養はあるのでしょうね。

モノのクオリティが大したことない分、お客さんに頼ったりするとか、愛想よく接することで、「居心地の良い空間」や「何か有益な情報を得られそうな空間」にすることが大事なのでしょう。「スナックうめき」に改名しようかな。

このコミュニティが深まる5つの要素と、スナックの事業資産が「人のつながり」であるがゆえに潰れにくいという話を聞いただけでも、本書を読んだ価値がありました。

その人だけのストーリーが、体験消費の価値を上げる

他にはこの話が気になりました。

最初3つの引用は前田さんが小学生の時に弾き語りをして稼いでいた話。当時からPDCAをしっかり回していたんですね。私にとっては「小学生なのに弾き語りで必死に稼いでいたのか!」ということ自体はそんなに刺さらなくて(こういう話が刺さる人はもちろんいると思う)こういう本質を見抜くのがすごいなと感じました。「通りかかった人が素通りできないような突っ込みどころ」とか、インターネットでもそのまま言えることです。

クオリティではなく、心が動いたから課金する。その場合の課金は、比較対象がないので、そのお客さんにとっては松田聖子のライブ5,000円よりも、前田さんがお客さんのために覚えて1週間練習してくれた「赤いスイートピー」の方が価値があるわけです。

実は私も女性を口説く際に、人生で一度だけ「自作の恋愛小説」を作ってプレゼントしたことがあります。これは人によっては気持ち悪いと思われるでしょうが、それが自分なりの真剣な気持ちの示し方でした。結果としては、結構喜んでくれたとは思いますし、お返しに似たようなモノをもらいましたが、やはりとても嬉しかったですし、今も大切にしています。

もちろんこの「自作の小説」は高値で販売したわけではないですが、「オーダーメイドが圧倒的な差別化になる」ことを身をもって実感した例でした。

ビジネスに話を戻すと、「どうすれば相手の心に刺さるか」というのを逆算する発想が今後ますます求められます。成熟社会においてはモノでの差別化がどんどん難しくなるため、ストーリーが売れるということは今までも十分に語られていることですが、そのストーリーを「オーダーメイド化」するところまでいけると、価値が相当に上がるので、高価格での消費が実現します。むしろ、ただのストーリーだと陳腐してしまい「どこかで聞いた話」として、片付けられてしまうようになるかもしれない。

2年半前に「感情課金」に関する記事を書きましたが、「その人だけの特別な体験」をいかに演出できるかが今後さらに重要といえそうです。ある種Instagramも、課金ではないものの、インスタグラマーにとってはInstagramが特別な場所になっていて、そこでたくさんの「いいね!」がもらえることは、それ自体が彼女たちの体験消費となっており、ゆえに中毒になってやめられなくなるのでしょう。

前田さんは「SNSの次はLIVEが来る」と言っていますが、國光さんなどネット業界でもタイミング的に2017-2018年はLIVEという時期にさしかかってきており、日本国内では2018-2019年が本格的にLIVEサービスが普及していくと私は読んでいます。

その先駆けとしてSHOWROOMは投げ銭モデルでの課金も成立しており、構造的には利益率が高いモデルとして将来的に利益がそれなりに上がりそうだなと感じています。

LIVEサービスはまさに「路上弾き語りライブ」と構造が似ているので「その人だけ」に対する体験を提供しやすい。インスタライブを開催するユーザーが増えてきていますが、インスタライブ上でのフォロワーとのコミュニケーションとか、「その人とだけの体験」がまさに生み出せます。ラジオでリスナーのお手紙を読んでくれる感じ。そういった「公開上でのパーソナルなコミュニケーションの価値」が今後さらに上がっていくと思う。

長くなりましたが、私が「人生の勝算」を読んで学びとしてさらに思考を深めたという点では、上記のような感じです。

こうしたコミュニティ論や体験価値論以外も、「ビジネスにおける人を好きになる能力の重要性」とか、汎用的で腑に落ちる話も多かったです。UBS時代の話とか、面白かったですね。

記事で触れたのはほんの少しで、記事の8割くらいは私の話だったのでw ぜひ続きは本を読んでみてください。こうやって、感想を記事にすることが、インプットの質を高めることにつながりますから、書評を書くことは「自分のために」オススメですね。



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