サブスクリプション(月額課金)の本質は「お世話になっております経済」か?

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今日はサブスクリプションモデル(以下サブスクと略)について、少しご紹介と考えを。

Zuoraというサブスク・マネジメントのノウハウ提供に特化したサービスがあるのですが、そのメルマガで送られてきた情報がけっこう有用でした。

私自身、サブスク大好きでして、Umeki Salonもウメキワークスもサブスクを採用しています。

インターネット企業が提供するサブスクには主に2種類あり、クラウドを前提としたB2BのSaaSサービスと、C向けのエンタメコンテンツサービス。前者はSmartHR的なもので月額数万円、後者はNetflix的なもので月額数百円であることが多い。

いまさら言うまでもないですが、サブスクは利用に対する対価というよりは、アクセス権を購入する考え方です。私は上述のB2B向けとC向けの間のスモールBを狙って、Umeki Salonとウメキワークスを立ち上げていますが、サブスクモデルの恩恵を受け、それなりに成立しています。

サブスクのベースとなる価値は「アクセス権」

皆さんもCユーザーとして課金してるエンタメサービスがあると思います。

例えば、Netflix。先月1度も見なかったが、昨日の私のようにひたすらテラスハウスシーズン1を1日中見るような月もある。8月は損したが、9月は元を取った。というような考え方です。

ちなみに私はNetflixを一度も解約しようと思ったことはなく、月額数百円なら、たまに見たくなる時用にそのまま課金しておこうという発想です。

この手の「アクセス権の購入」という文化は、様々なサブスクサービスの普及で理解しているユーザーが増えてはきています。しかし、地道な啓蒙が必要ですし、好みも分かれると思います。

サブスクの課題としては、初期の立ち上げが想像以上にしんどい。ということではないでしょうか。立ち上がると、後述するバイラル効果も含めて良いグロースが実現しやすくはなりますが、初期は相当な忍耐が必要です。

私はサブスクにおけるペイウォールと広告が似てると考えており、広告を同じ人に何十回か浴びせればCVRが上がるように、同じ人にペイウォールを何十回か浴びせればいつかコンバージョンしてくれると思っています。

サッカーでいうと、ペナルティアエリア外からミドルシュートを地道に打っていく。入らなくても、スペース(サブスクでいえば「課金しようかな」と思う心理的スペース)が生まれてくると感じています。

サブスクの「お世話になっております経済」とは

上記の「アクセス権購入」という概念は、「サービスとユーザーの持ちつ持たれつの関係」とも言い換えられると思います。

ワンショットの都度の買い切りではなく、たくさん利用する月もあればそうでない月もあるけど、中長期的にサービスを提供したい/されたい関係。顧問弁護士や税理士も同様のモデルといえます。一度も利用しない月もありながら月額顧問料を支払う。いざという時は、使い倒す。

Zuoraのメルマガにいくつか記事が紹介されているのですが(メアド入れてのebookのDLという形式をとっており、データ取得に抜かりがないなと感じます)、3つの重要なKPI:サブスクリプション・ビジネスの成功のためにという記事があり、そこでの下記の言葉には考えさせられました。

サブスクは、リレーションシップを収益化する。

前提として、サブスクが提供するサービスにユーザーは対価を払っています。その「サービス」とは、「コンテンツ」と「コミュニケーション」に分解できるのかなという気がします。

ここにおける「リレーションシップ(関係性)」とは、上述の「利用する月もあればない月もある、持ちつ持たれつの関係」とも言えるし、「コミュニケーション」とも言い換えられるのではないかと。

直接的なコミュニケーションが発生しなくとも、「持ちつ持たれつの関係」というのは広義の「関係性」と定義できます。言わずもがな、メッセージや対面で会うなどはコミュニケーションです。

そしてサブスクはユーザーにとっては満足度が高く、利用期間が長ければ長いほど「愛着」も生まれやすいと思います。「愛着」が湧くサービスは、口コミしたくなったりもしますよね。

サブスクははっきりいってしまうと、コンテンツ価値以上の収益を生み出していると感じます。同じコンテンツでも買い切り型とサブスクでは、サブスクに「リレーションシップ」という価値が乗っかってくる。

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図にするとこんな感じ。リレーションシップ価値をきちんと提供できれば、買い切り型に対してサブスク型に収益率の軍配が上がります。

この「リレーションシップ」のパターンが「持ちつ持たれつ」とか、「直接的コミュニケーション」とかあるのですが、他にも考えるといろいろありそうです。「応援課金」とかもそうでしょうし、それこそ言語化できないので「空気を売っている」ということもできます。

サブスクの収益率の高さの本質は、私はこの「空気を売れるか」にかかっていると思っていて、これははっきりいって「水を売る」より利益率が高いわけです。水かて安くても原価かかりますが、空気は原価はゼロといえます。

リレーションシップ・プレミアムによるプライシング

サブスクではプライシングが相当重要です。

プライシングに関して、参考になる記事がありましたので貼っておきます。

SaaSのプライシングに向けた4つの思考プロセス

上記の記事では「競合調査」などが重要とありますが、私はサロンとウメキワークスという実務経験を通して、「広義の競合設定が必要である」という認識を得ました。

たとえば、サロンは当初メルマガの代替と思われたのですが、メルマガ980円とサロン月額4,980円と比べられると、サロンがえらい割高に感じてしまうわけです。

実際にメルマガのほとんどが一方通行的で、サロンは双方向的なので、「月に1度飲み会に参加するより、サロンに入ったほうが有益な情報を得られるのではないでしょうか?」というセールストークに切り替えました。これは感覚値的には正しく、私が他に入っているサロン(田端サロンや箕輪編集室)で同じセールストークを受けたとしても、納得感があります。

これはリレーションシップ・プレミアムによるプライシングの例になる気がするなと思いました。

ちなみに「コンテンツ」は今後、特定領域においてはコンテンツはコモディティ化してしまうこともあると思います。映像・音楽系のサービスでは既にコモディティ化していて、NetflixでもAmazonプライムでも同じ作品が観れたりします。

私は映像系サブスクはHulu含めて3つ入っていて、必ずしもユーザーが1つしか選ばないとは言えないのですが、コンテンツで差別化できない点はアルゴリズムによるレコメンド精度を高めるとか、そういう努力をしているのだと思います。

コンテンツ価値はゼロにはなりませんが、サブスクにおいては相対的にリレーションシップ価値のほうが上昇していく気がします。リレーションシップ価値は、ブランド価値のような無形資産がほとんどですが、工夫や視点を変えることによって生み出せます。

リレーションシップ価値を重視し、その価値を最大化できるサービスが今後は強いのではないでしょうか。

リレーションシップ価値の一つ、というかそのベースに「お世話になっております」的な「持ちつ持たれつ」の関係や、挨拶やオフラインによる直接的コミュニケーション、果てはPR活動によるブランドイメージ向上のコミュニケーションがあると思います。

よって、サブスクは「お世話になっております経済」で回っていると私は感じたのです。

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