オプト、トリッピースへの出資金を投資簿価以上で経営者に買い戻させる

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最近、スタートアップ経営者が既存株主から株を買い戻すという事例をいくつか聞いた。そのうちの一つであるトリッピースによるオプトからの株式買い戻しの話は、先日の2013年資金調達企業の検証記事でも触れた。

この事例に関して、複数の関係筋からのヒアリングにより、輪郭が浮かび上がってきたので、事例として紹介する。

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◼️トリッピースの資本政策

2011.5:シードラウンド5-600万円(サムライインキュベート&MOVIDA)
2012.5:アーリーラウンド?数千万円(オプト)
2013.8:シリーズA?2億円(Draper Nexus)

出展:トリッピースHP

オプトは2013年10月に東証一部への鞍替え。利益への圧力がより厳しくなったことも背景にあり、早めに少しでも利益計上したいという狙いもあってか、オプト側からトリッピース側へ「株式を売却したい」という話が持ち上がったという。その際にオプトはトリッピース代表取締役である石田氏に買取を迫ったわけではなく、他社に株式譲渡することを視野に入れたようだが、最終的には石田氏が買い取りを申し出たという。

オプトによるトリッピースへの出資額は数千万円と推定されるが、オプトから石田氏が株式を買い取った際に支払った金額は1億円を超えるという説もあり、オプトにとっては投資簿価での回収ではなく、多少なりとも利益を得ているようだ。それも相まってか、経営者からの買い取りに過ぎないのに、オプトのHPにはトリッピースはEXIT実績として記載されている。

623cf2f6092c719237b2c61e4ec45038-1024x652リターンが出ているとはいえ、これをEXIT実績とするのはいかがなものだろうか。オプトはそういえばサマリーにも出資しているなと思いきや、HPでは見かけない。記載漏れか、株式譲渡済みかどちらかであろう。決して「EXIT」はしていないかと思うが。

そもそもオプトはスタートアップに投資をして何をしたいのか。純投資なのか事業シナジーを模索したいのかはっきりせず、それゆえ中途半端な段階で「売りたい」と申し出てきたのではなかろうか。オプトのようなCVCは投資リターンも狙いたいし事業シナジーも欲しいと欲張りである。狙いをはっきりしたほうがよかろう。一見、投資を受ける側からも魅力的に見えるのだが、トリッピースとの事業シナジーは素人目には明らかに想像しにくい。ワークしなかった悪しき事例といえよう。

この「オプト・トリッピース事件」はいかがなものかと思うが、経営陣による既存投資家からの株式の買い取りは必ずしも悪いことばかりではないと思う。投資後に経営陣と株主の目線が合わないこともあるだろう。買い戻し事例としては、U-NOTE代表取締役小出氏が既存投資家のANRIから買い戻ししているという事例も耳にしている。

スタートアップ経営者のみなさまには、投資後の株式買い取りの事例として本案件は覚えておいていただきたい。GREEにスタートアップを売却しないほうがいいぜ!の記事もかつてあったが、オプトから出資を受け入れると買い戻すことにもなり得るぜ!(しかも投資簿価じゃなくて色をつけてな)ということもいえよう。今後ファイナンス予定の起業家のみんなは気をつけようぜ!



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