最近Umeki Salonで議題に上げた話がなかなか多様なコメントが出て、記事で広く意見を聞いてみたいと思ったので、記事にしてみました。
Uberの初期投資家・カラカニスによる「エンジェル投資家」という本が出て、それを読んでいる起業家や投資家がTheStartupの読者には多数いらっしゃるかと思います。
本書の中で、カラカニスは「月次報告を送ってこなくなった投資先から久々に連絡があったら、倒産報告だった」という話があり、それ以降「投資先からの月次報告を必須にした」という話があります。
スタートアップによる投資家に対する月次報告ですが、VCであれば必須とする方が日本では多いかと思います。特にラウンドが進んでいけばいくほど、例えばIPO準備などもあるので、レポーティング精度も上がり、きちんとやっているスタートアップの比率が高まるはずです。
一方でシードやアーリーステージでまだVCが入っておらず、エンジェル投資家のみの場合、月次報告は必須とすべきなのでしょうか。
私が聞く限りでは、月次報告を煩わしいと思っている起業家も一定数いますし、実際に月次報告のオペレーションが回っていないスタートアップも多数あるかと思います。
サロンでは「月次報告必須派」と「月次報告必須ではない派」に意見が分かれましたので、回答者名は伏せて、コメント欄の一部を要約してご紹介します。
月次報告「必須」派の理由
必須派の言い分としては下記の通りです。
<投資家側>
・その程度のことができない起業家に出資とかありえない(國光談)
・何れにしても決算はあるわけで、月次で報告できないのは…
・積極的に関与しなくても投資先の実態把握ができる
・定期的に注目するので「手伝わなきゃ」と思いやすい
<起業家側>
・頭の整理と言語化を強制的に求められる。経営についての振り返りを強制的に持てるので、うまくいってないことにリソースを割きすぎてPDCAが遅延することを避けられる。
・結果として事業の進捗や実態の報告共有を怠っているがゆえに投資家側が推測・バイアスに基づいて支援行動し、それが的外れで、起業家側は関係性から強く否定できず、結果スタートアップの大事なリソースが枯渇して事業が停滞することがある。
月次報告「必須ではない」派の理由
「必須ではない派」は下記の通り。
<投資家側>
・シードやアーリーだと他にやることもたくさんあるので、負担にならない範囲でできれば良いのではないか。
・放置型エンジェルだと、毎月読む量が多いと辛い。
・自分からは一切求めない。前提として投資した起業家自体を信頼して流ので、ダメだったらそれはそれで仕方ない。
<起業家側>
・特にシード・アーリーでは報告するトラクションも積み上がっていないこともあり、レポーティングに時間を取られるより事業を前進させる方に時間を使いたい。
國光氏「投資先に対する月次報告は必須だが…」
この議論の中心として参加していた國光さんですが、「投資先かられポーティングがないのはあり得ない」と口火を切りました。
しかし、gumiやCandeeの投資家に「レポートをもらったことがない」と突っ込まれ、國光さんは「投資家としては月次報告必須。俺が経営している場合は、月次報告は不要」という、お考えと実態となり、「國光現実歪曲空間」という名言が生まれましたw
今回の議論は大前提として「VCではなくエンジェル投資家など」に対して、シード・アーリーステージで月次報告は必須にすべきかという話であり、シリーズA以降は月次報告を投資家に対してきちんとしているスタートアップの方が多いかと思います。
基本的にやった方がいいというのは理解しつつも、月次のレポーティングに工数を割きたくない気持ちはよく理解できます。
エンジェルの中にも、アクティブ・エンジェル(エンジェル専業など)とパッシブ・エンジェルがいて、投資件数が多いアクティブ・エンジェルでも、件数が多いがゆえに1社あたりに割ける時間が少なくなるので、月次報告をもらっても、読まないとか、むしろ量が多くて困ってしまうこともあるようです。
起業家は出資を受ける際に、そのエンジェルがアクティブなのかパッシブなのか。その中でも、月次報告に対して必須とする考えなのか、起業家に任せるという考えなのかを擦り合わせた上で、投資を受けるのがベストだなと感じました。
エンジェルにも種類があり、昨今は「モンスター・エンジェル」というワードも生まれています。モンスター・エンジェルは管理型エンジェルで厳しい指導もあるので、モンスター・エンジェルと自由にやりたい起業家は、相性的には最悪と言えるでしょう。
本誌読者にはシード・アーリーを経て次のラウンドに進んでいる起業家も多いかと思いますが、シード・アーリー期に投資家に月次報告はしていたでしょうか?
エンジェル投資家の皆さんは、投資先の何割くらいが月次報告が送られてきて、月次報告に対して必須と思っているか、柔軟性持ちたいと思っているか、送られてきてむしろ困っていたりするw かなど、twitterやNewsPicksで様々な意見が出てくると、シード・アーリー期の起業家にとって参考になると思います。
ぜひお気軽に「自分がどうだったか」や、「こうすれば良いと思う」というご意見と共に、記事をtweetやpickいただけますと幸いです。面白い意見があれば、引用で追記させていただきます。
起業家と投資家のコミュニケーションの在り方で、スタートアップの成功確率が異なるなどがあれば面白いのですが、なかなか定量的に判断するのは難しそうですね。
Umeki Salonではこの記事にあるような議論をしております。
2018年8月30日(木)には久々にイベントをやりますので、ご興味のある方はサロンを覗いてみてください。
今回の議論の元となったこちらの書籍もまだの方は是非。エンジェル投資に関心のある方には、役立つ内容かと思います。