2015年3月に2012年億調達企業33社の行方を検証した記事を出しました。この手の記事は、「回収できなそうですね」みたいなことも記事内でいうので、非常にバズりにくく寂しいですが、地味にPVは伸びるというTheStartup定番スタイルだったりします。
スタートアップ業界のしょこたん様からリクエストを受け、「いや、2012年版はやったんだけどな」と思いつつ、2013年版を作成しました。
読者からのリクエストに応える、ジェントルマンな筆者であります。
2013年に1億円以上の資金調達を実施した企業は本誌独自調査では74社。その後どうなったか、下記に簡単にステータスを。ちなみに2012年は33社でしたので、2013年は倍増以上。スタートアップ投資が盛り上がり始めた時代といえるかもしれません。
■2013年億調達:74社
IPO:8社
M&A:4社
プレIPO観測:8社
10億以上調達:11社
1億以上調達:11社
その後のステータス未確認:30社
清算や未上場継続予定:2社
プレIPO観測まで含めるIPO確率は22%。10億調達のうち半分はIPOしてくれると仮定すると28%がIPO銘柄となる確率です。1億以上の出資では1/4以上はIPOするわけです。2013年銘柄のシリーズA以降のVCのパフォーマンスとしては4社投資して1社IPOできなければ、出来が悪いといえます。
各セグメントごとエクセルのシートを貼っていくので、詳しくご覧になりたい方は画像をクリックして拡大してお楽しみください。
2013年億調達銘柄:IPO済8社、M&A済4社
まずはIPO済銘柄。本誌でもおなじみどころばかりですね。時価総額的に大きかったのはgumiやエイミングです。gumi復活なるか。
*並びは2013年の調達リリース日順
M&Aは4社。2015年下半期にかけもっと増えそうな気も。2014年10月のnanapi以外は全て今年のM&A銘柄です。いろんな理由があるかと思いますが、基本的にIPOモデルではないよねというところがM&AでのEXITとなります。TheStartupでは2015年下半期はM&Aに力を入れた記事を増やしていく方針です。
プレIPO観測8社、10億以上調達11社
この辺からが興味深い銘柄になってきました。上記のIPO済とM&A済は結果が確定した銘柄であり、上記は今年中にIPOなるかという銘柄。ヴォラーレとリッチメディア以外は二桁億円の大型調達を経て(ジーニーのソフトバンクからの金額非公開案件、wantedlyが2015年6月に日経新聞との資本業務提携を発表しているが、引っ越したオフィス規模から二桁億円の調達と類推)レイターステージを迎えているのが興味深いです。
二桁億円の調達をレイターステージでしているということは、未上場で100億円を超えるバリュエーションの企業も少なくなく、未上場で100億円のバリュエーションの案件の出口がどうなるかが見所。IPOが狭まってきている中で、プレIPO銘柄も1社くらいIPOし損なう企業が出ても不思議ではない。
続いてがプレIPOの噂は聞こえてこないものの、10億以上調達を実施している企業です。ここからのIPO確度は約5割と本誌では見積もります。スマートニュースやランサーズあたりはほぼ確定として、FinTech銘柄が本当にIPOできる水準の利益を今後2-3年で出していけるかが最大の見所。また、一般的にマネタイズに時間を要するCGMメディアはIPOまでいけるのか?案外厳しいのではないかというのが私の見解です。
1億以上調達11社:ここからIPOは出て1、2社か?
10億以上調達ほどの派手さはないものの、2013年以降に着実に次のラウンドに進んだのは11社。AnyPerkあたりは手堅くEXITを実現しそうだとポジティブな見解をよく聞きます。
他の案件はというと、絶好調であれば昨今の資金調達環境では上記の企業群のように10億以上調達ができるはずなので、これら11社は必ずしも絶好調どころばかりではなく、むしろIPO確度は低いと見積もります。あっても1,2社と想定。その代わりM&Aの対象となりやすそうです。
Snapeeeあたりはかねてから「写真アプリで上場はない」と本誌で主張してきましたが、4億調達。その後日本市場では縮小するという噂を耳にしました。そこで4億調達ではなく、売却しておくのが正解だったはず。ダウンラウンドじゃないともう買い手はいないでしょうね。
ステータス未確認30社の半分は厳しいのではないか
*並びは2013年の調達リリース日順
さあ、これらの30社はどうなることやら。この中には今まさに調達中という企業もあるでしょうし、追加調達しなくとも十分売上利益をあげてIPO準備に入っているところもあるかもしれません。しかし、この30社のうちの半分はニッチもサッチもいかず、次のラウンドの調達ができないと予測します。
特に1-2億程度の調達だと月次のバーンレートを1,000万円と仮定すると1-2年で確実に溶けます。調達資金は人材採用と広告費に充てることがほとんどであるため、先行投資フェーズでその先行投資によって後々利益を上げようという企業であれば、この1-2億でIPOまでいけなければ追加調達をするはずの頃合いなのです。
同じ億調達でもIPO 済やプレIPO銘柄は2013年には既に3億以上の調達をしていた比率が高いのに対し、ステータス未確認企業のほとんどが3億未満で、30社中4社しか3億以上の調達はありません。
ここの30社の企業群はその多くが厳しい状況に置かれており、IPOはあっても1-3社程度。Trippiceなどはオプトから経営者が買い戻しをしたという説も耳にしており、オプトは経営者に買い戻しさせた案件を「EXIT実績」と記載しているけしからん企業ですね。
この30社の企業群で筆者が最も気になるのはcakesですね。どうなることやらと。ユーザーとして使っているのはMoney Treeです。なくなると困るので倒産しないでください。あと伸びてそうなのはグッドパッチとトークノートあたりでしょうか。他は知りません。
エクセルを直すのが面倒だったので上記表には入れていませんが、元頓智ドット井口氏が率いたテレパシーなどというGoogleグラス銘柄もありました。井口氏がいなくなったのであの会社はどうしたものかと思いきや、まだ存在しているようですね。HPがありました。最近、全く耳にしませんが、Googleグラス関連の市場はそもそも明るいのか筆者はかなり懐疑的です。
ステータス未確認にも入らなかったのが残り2社。20億規模の資金調達をしたグライダーアソシエイツ(Antenna)はそもそも上場予定がないということで、未上場でいくとのこと。
2015.6.18訂正
初稿ではアドテクのDENNOOは清算と記載しましたが、清算しておりませんでした。謹んでお詫び申し上げます。
今後はステータス未確認の30社からリビングデッド企業が湧いて出てくるでしょう。そこに安値でM&Aを仕掛けていくのが盛り上がりそうな2015年後半です。
確率論的には2013年銘柄ってヒット率高めな気がしますが、業界関係者の皆さんいかがでしょうか。シリーズA以降で4社投資して1社のIPO見込みがない投資プレイヤーは平均パフォーマンス以下です。
これ系の記事、制作するの大変なのでたまにはバズってほしいです。続きが読みたい(来年に2014年版など)人はFacebookでシェアしてくださいね。。。苦笑。その人に個別で送ろうかな。