かなりご無沙汰となりましたファンドリターンシリーズ。ジャフコ様のキラキラリターンをお送りした3ヶ月ぶりです。今回はついに投資先が多いこともあり、本誌の読者もかなり多いと思われるインキュベイトファンド。HP情報が充実しているとはいえ、かなり整理するのが大変でした。2015年1月には110億規模の3号ファンドも組成しています。本稿ではまず1号ファンドのリターン予測を。
■ファンド概要
名称:インキュベイトファンド1号
組成:2010年5月
規模:28億
償還期間:8年
LP:DeNAが中心
参考:中小機構ホームページ■リターン予測
調査対象投資先:15社前後
予測IPO:1〜3社
予測M&A:3〜5社
予測累計投資金額:20億前半
予測累計回収金額:110億前後
予想リターン倍率:4倍前後
期間:2010年9月〜2014年11月の投資先から集計
既にEXITが確定したものを中心にお送りします。先にリターンサマリーを下記に洗い出します。
■インキュベイトファンド1号リターン予測:110億
ポケラボ:26.7億
エイミング:70億前後
イストピカ:2億
ietty:3億
MUGENUP:5億
チケットストリート:3億
ポケラボリターンは26.7億。ポケラボ1発回収は本当だった
確定したEXITの代表格がポケラボ。中小機構のHPによると1号ファンドは28億です(30億という説もありますが)。
■ポケラボディール詳細
買収額:138億
インキュベイト持株比率:19.36%
予想インキュベイト出資額:5億前後(2010.9)
インキュベイト回収額:26.7億
尚、インキュベイトファンドのGPである和田さんのセレネ、本間さんのコアピーブル(両方ともGP1人の個人ファンド)が15.1%ずつとなっており、それぞれポケラボ1発で20億ずつの回収です。両者のファンド規模は3億前後と聞いたこともあり、余裕の1発回収となっています。
ただし、EXITした後のインキュベイトに関係ないとはいえ、ポケラボの減損は記憶に新しいところです。
DeNAがLPのインキュベイトのポケラボ案件をGREEが買って減損するという、DeNAにとっては二重(リターンとライバルの減損)においしいディールとなってしまいました。
エイミングは10.88億のリターン確定。IPO後に期待
続いてが2015年3月25日上場予定のエイミング。SBI&サイバーエージェント研究会のブログの情報も参考にしつつリターン予測。
■エイミングリターン予測=70〜80億
2014.11:6.08億(テンセント関連会社へ既存株譲渡)
2015.3:4.8億(公募価格920円×売出予定526,400株)
⇒持株比率16.84%から15.1%に減少
IPO後:66億(1,500円×残り約440万株)◆予想インキュベイト出資額
2011.6:3億
2011.9:3-5億
既存株譲渡と公募時の売出は確定。公募価格ベースの想定時価総額は約300億となりました。gumiショックの影響があると予測されますが、仮に初値1.5倍で全て売ったと仮定すると(実際にはいきなり全て売らないでしょうが)60億前後のリターンを得られます。IPOの売却タイミングは難しく、一気に売る場合と徐々に売る場合などパターンが分かれますが、あくまで初値1.5倍で全部売り切ったと仮定した数値です。
謎のイストピカの売却ディール
2012年にインフォコムが買収したソーシャルゲーム会社イストピカにインキュベイトファンドは2億出資していました。買収額が非公開のため、ディール詳細は謎です。
■イストピカディール詳細
2010.10:インキュベイトが2億出資
2012.8:インフォコムが買収(価格非公開)
予想リターン;最低2億(優先株のため)
情報がないのでわかりかねますが、良さげなディールであれば金額を公開することの方が多いはず(しかし、ネクソンによるインブルー買収価格も非公開でした)。どれだけリターンが出たのが測りかねますが、優先株での出資が多いインキュベイトであるがゆえ、出資額の2億は最低限回収したと予測します。ポケラボほどのインパクトにはなっていないはずです。
Incubate Camp 2nd&3rd採択8社の行く末
インキュベイトファンドはシード&アーリーステージのプログラムの「Incubate Camp」を開催していることでも知られています。Umeki SalonにもCamp出身の起業家がかなり所属しています。2ndと3rdの案件がインキュベイトファンド1号案件に入っていると仮定し、予測を立てます。
■インキュベイトキャンプのスキーム
◆シードステージ採択
Post Valuation:3,000万円
出資額:300万円◆追加出資でアーリーステージ採択
Post Valuation:1億円
出資額:3,000万円
ざっくりいうとこんなスキームでした。ここ最近は違うようですが。よってCamp経由のディールは基本的に300万円から3,000万円レンジでの出資となり、シリーズA以降のディールであれば追加出資でもう少し入れていく感じです。1号ファンド28億として、15-20億を上記3社(ポケラボ、エイミング、イストピカ)のゲームに突っ込んでいると仮定し残り10億前後がCamp経由と後述する+αのディールに配分していると予測します。
Camp経由のインキュベイトの出資額は1,000万円から追加出資があった案件でも累計1億未満と仮定し、出資額予測は付けませんでした。
Incubate Camp2nd&3rdに出たスタートアップですから、インキュベイトから最初の出資を受けているのは2013年が多いはずです。丸2年経つとシードステージの資金は尽きてくるため、有望か否かの判定として、次のラウンドに進めているかが指標となります。8社のうち億調達ラウンドに進んでいるのは不動産のiettyとイラストクラウドソーシングのMUGENUPの2社になります。
■ietty:アイマーキュリー(mixi)から0.5億⇒YJ&IFから2億
最近はリアル店舗を作ったという話も聞くietty。いつの間にかパンツを脱ぐ営業スタイルが得意という小川氏が率いるスタートアップです。不動産分野ではオウチーノが上場していますが、かなり切ない時価総額(2015.3.15時点で18億)となっており、事業体が違うとはいえ、跳ねている不動産スタートアップがさほど多くはない中で、チャット営業スタイルがどこまでワークするか見物です。
どれくらいのリターンが出るか分かりかねるので、明確なリターン予測は保留。何かしらの形で着地させ、小川さんは和田さんを男にすると予測します。インキュベイトの予想保有率は10%前後。YJのラウンドで追加出資しているので、やる気が伺えます。30億でEXITとして3億回収と予測。
■MUGENUP:クラウドソーシング銘柄のIPOは多いが・・?
リアルワールド、クラウドワークス、2015年内のIPOが噂されるランサーズなど、クラウドソーシング関連はIPOが増えています。とはいえ利益が出にくいモデルであり、イラスト特化で特殊性な環境であるとはいえ、総合型を上回る利益は出にくいモデルかと思います。
とはいえ、リアルワールドでIPOまでいっているので、マルチプルに置けばMUGENUPもIPOできてしまうと単純に予想できます。IPOしたとしても公募時時価総額は50億前後となるでしょう。インキュベイトの予想保有率は10%前後。ゲームほどのインパクトはないにしろ、Camp銘柄初のIPOの可能性がある案件といえます。ベストシナリオで5億回収と予測。
他の6社に関しては回収不能としました。売却できても数億円台前半で、優先株によりインキュベイトが損しないもしくは若干のリターンが出る程度となります。
他大型調達済み案件:チケットストリートとcreww
他に1号ファンドの案件と思われ、かつ億調達まで進んでいる案件が2件。
■チケットストリートディール詳細
2012.5:インキュベイトが0.15億出資
2013.3:みずほ&三菱UFJから0.6億調達
2014.8:GREE VENTURESから3億調達
予想インキュベイト保有率:10%前後
チケストの予想として東洋経済オンライン取材時に80億でeBayに売却と出していますが、記事に対する軍曹さんの反応を見ると・・・。仮に30億で売れたとしても、10%持っていたと仮定し、最低ライン3億回収と予測。
もう1社は日テレから1.2億調達しているcrewwですが、エンジェルリストのようなものを目指していそうですが、ワークしているようには見えません。回収不能と予測します。
以上です。1号はポケラボ以上にエイミングがホームランで、上場後のエイミング株をどう売っていくかでリターンが決まってきます。非ゲーム案件でIPOが出るか注目ですね。1号ファンドより分析が大変なのが2号ファンドでして、大きく当たるのがどれか正直今のところ読めません。
*インキュベイトファンドHP上のIPOポートフォリオに「セレス」「リアルワールド」「みんなのウェディング」などがありますが、これらは全てインキュベイトファンド1号ではなく、その前身のファンドからの出資がほとんどとなるため、本稿の1号ファンドからの出資とカウントしていません。