M&Aの成否はどの段階で見極めるのか:GREEのポケラボ買収の事例

Pocket


ポケラボ93億、オープンフェイント90億の減損によりGREEの2015年第2四半期決算の当期純損益が76.6億となったという決算発表がありました。

10959735_10205488673956783_2285657938688629252_nこの決算を受け、Umeki Salonでも話題にしてみましたが、M&Aの成否の判断はどの段階でするものなのかという疑問がわきましたので記事化しておきます。

■M&Aの成否を判断する論点

①:買収時のロジック(他社状況を鑑み、その時点の買収が正解か)
②:買収後に買収時のシナリオ通りに買収先の事業が成長したか
③:人材交流で買収側に明確な利点があったか(ノウハウ吸収など)
④:買収価格を越える利益を買収先は数年後に累計してもたらしたか

ポケラボをケースとして取り上げましょう。2012年10月にGREEはポケラボを138億円で買収しました。

①の買収ロジックとしてはポケラボのネイティブアプリの開発力にGREEが目を付けたと言われており、GREEが内製でネイティブアプリの知見を溜めるよりもポケラボを買収した方が早いという判断だったのでしょうが、価格算定ロジックは不明です。

当時、ポケラボの大株主であったインキュベイトファンドにとってはホームランディールで、これ一発でファンドがペイしたという説もあるほど。VCの視点で見るとかなりの投資回収に繋がったため、インキュベイトファンドの視点ではこのM&A(というかEXIT)は成功といえるでしょう。

②の買収後の成長という観点では、下記の記事を見ると2013年9月期は売上60億純損失3億ですが、2014年9月期は売上46億純損失1億。トップラインは下がっており、大ヒットゲームを出せなかった。今後5-10年に渡って100億以上の営業利益を出せる子会社という判断をするのは難しい。ゆえに、今回のタイミングで減損に踏み切っているわけです。

株式会社ポケラボ 決算公告

③の人材面ではポケラボの代表を務める前田氏がGREEの執行役員に就任するなど、一定の成果はあったと考えられる気もします。

最後に④の価格面では、138億円で買収して今回93億円の減損。明らかに138億で買収した価値はなかったわけで、純粋な数字の収支だけで見るとこの買収は失敗といえるのではないでしょうか。10億で買収したのであれば、93億もの減損には当然繋がらないわけで、買収時の価格算出で過大評価してしまった。

2012年10月の138億での買収から2年5ヶ月後の2015年2月に93億の減損。

これは明らかに失敗したM&Aといえるのではないでしょうか。

ポケラボ

M&Aの成功確率は3割と言われており、よくあることといえばよくあることと言えるかと思います。

ですが国内のスタートアップ環境を鑑みると、このディールが失敗と定義されることにより下記のような流れになる可能性が高まるのではないか。

①:大企業によるM&Aの選択肢が狭まる(厳密にいえば高値掴みに気をつける企業が増え、ハイバリュエーションでの買収は減る)
②:そもそも現在の未上場企業のバリュエーションが加熱しすぎであり、バリュエーションが適正な価格へ収斂されていく
③:M&AでのEXITが狭まるとゾンビ系スタートアップが増殖する

教訓としてはやはり価格の話で、私も多くの起業家と接していて、この事業でよくこのバリュエーションを主張するよなという例を散見します。買収され、一見成功したように見えても、このポケラボのディールのようにPMIで数字が悪ければ、その買収自体は失敗となり、よろしくないでしょう。

こういった事例が増えないためにも、事業価値に見合わない価格での買収は増えてほしくないと思いますし、本誌をご覧の起業家の皆様は今一度自社事業のバリュエーションが本当に適切なのか、そのバリュエーションで自分の首を将来絞めることになりかねないか、再考いただくことをお勧めしますが、資本政策は不可逆ですね。現在の市況ではハイバリュエーションを主張し、それを通す難易度が下がっている状況なので、数年後も見据えていただきたいところであります。

2014年12月に上場したgumiの株を売り浴びせて作った特別利益80億があったこのタイミングで減損するとPLインパクトが和らぐと見て、GREEは今回の減損に踏み切ったという観測もあります。

GREEの今回の減損に関しては「どんまい!」とエールを送ると共に、市場ではDeNAのngmocoの減損はいつかという気運が高まっていましたが、2015年2月5日発表の決算では減損は発表されませんでした。ngmocoの減損はそのうちあるのでしょうか。

M&Aの成否はどの段階で判断するのか。私は買収から一定期間経った上での買収時の価格を上回る利益回収かそれと同等のノウハウ吸収があったと判断できるか否かがポイントであり、買収後3-5年程度での検証が最適化と思いますが、読者の皆さんはいかがお考えでしょうか?ぜひNewsPicksなどでご意見をお聞かせ下さい。

  • Umekisalonバナー プロフ写真入り
  • bnr_tc_300_250

New!Umeki Salon、2月は3,000万以上の資金調達を実施した起業家は無料とするキャンペーンを実施中。

内容の参考:ネットの未来を予測するには歴史を学ぼう、動画分科会を始めてみた

広告出稿をご検討の方はこちらをご確認下さい。

Umeki Salonの神8名の人生を変えた書籍8冊

梅木雄平が選ぶ珠玉の書籍40冊

今日も適当にツイート中。 @umekida

 šƒoƒi [RGB -72dpi i685 ~65)_



Pocket

コメントを投稿する

「M&Aの成否はどの段階で見極めるのか:GREEのポケラボ買収の事例」に対してのコメントをどうぞ!