金と権力で人付き合いを考えるな

僕の中では昔から人付き合いに関するルールがある。

どんなに偉い人が相手でも必要以上に媚び諂わないことだ。

もちろん偉いお方に一定の敬意は表する。

しかし相手が上場企業の社長だったり、業界で有名な人だったりすると、必要以上に腰を低くして接する人が少なくないように思える。そういう人を逆に軽蔑する。

僕はどんな社長が相手でも必ず「○○社長」とは呼ばない。
「○○さん」と呼ぶ。

どんなに偉い立場であっても同じ人間である。極力対等な関係を築きたい。そしてメディアの人間にはそういう姿勢が求められると思う。時に権力と闘う必要がある立場の人間が、偉い人相手にへこへこしていたのでは話にならない。良好な関係は築きつつも、決して相手にコントロールされてはならない。梅木雄平ひいてはTheStartupがコントロール可能なものだと思われてはいけない。そこには緊張感が必要だ。

イベントとかで名刺交換したりとか（そもそもイベントに登壇した際に名刺交換したくないという記事を書いて燃えたが）そういう風景の中で、どうして対等ではなく「自分なんて」という姿勢の人が少なくないのだろうか。堂々と振る舞い、相手にとって自分も有益になりうる存在だとアピールすれば良いではないか。そう思えないならは話しかけなければいい。ビジネスはファン交流の場ではない（それを生業とするビジネスは別だが）。

スタートアップ業界においてもこうした傾向は目に付く。上場した経営者や一部の有名な人が必要以上に祭り上げられる。上場したから有名になった、有名になったから祭り上げられるようになったとか、色々パターンはある。

そして手前味噌だが僕ですらごくたまにこの手の出来事に遭遇するようになった。大学時代の遠い知り合いが「なんかあいつ少し有名になったらしいな。紹介してくれよ」とか、サロンがスケールしてくると僕を批判していたような人でも手のひら返しで「最近すごいですね」と言ってくる。

ちょっと調子が良すぎないだろうか。
そういう態度を変えてくる人たちを、僕は一切相手にしない。

資本主義社会においては金や名声を持つものが偉く、そこにすがる人がいるという構造なのか。それを100%否定することは難しいだろう。そうした側面もある。数字という結果を出すものは確かに評価に値する。だが、一発当てた人が不当に評価されすぎな風潮も感じている。

周りが必要以上にチヤホヤしてくることに気を良くする成功者もいるかもしれない。だが、それ以上にそれを寂しく思うことがある成功者が多いのではないか。僕は成功者を極力成功者として扱わない。むしろ少し弄ったりして楽しむ。僕が成功者の立場だったら、腰を低して「すごいですね」と連発されるより、ほどよく弄られるくらいの方が心地良いし印象に残るからだ。

成功者相手には極力「すごい」と言ってはならない。うっかり僕もいいかけることはあるけど、それより相手の印象に残るインサイトなりを提供した方がプラスに働く。成功者の自尊心は既に満たされているから、あなたが満たす必要はない。

「今日は楽しかった」と相手に言ってもらえる。それはリップサービスかもしれないが、そういう相手とは「また今度」がたいていある。僕なら相手にそう伝える時は、確実にまた会いたいと思っている。

ミーハー心で「すごい人」に接するのはやめよう。

金や権力に必要以上に屈することはやめよう。

人間関係を築く気があれば、そういうことはマイナスに働くと直感的にわかるはずなのだが。

だから僕は偉い人に媚び諂うことはない。理想をいえば会う前に既に自分は認知されている状態で関係を築きたい。そうでなくとも僕が相手と関係を築きたいと思えば、なんとかその場で存在感を示したい。それができなくて失敗したことも多々ある。

決して交友関係は広くないけど、これが僕なりのルールだ。

僕は冷徹だというイメージが直接会ったことない人にはあるらしいと一部で聞くこともあるけど、最初の敷居が高いだけで、身内にはたいていそれなりに優しいはずだ。ただ、面白くないと思う人や話していてつまらないなと思う人にはたしかに冷たいため、そういうイメージを持たれるだろう。僕は八方美人ではないし、すぐ顔に「早く帰りたい」という表情が出るのだ。

なのでこれからまだ僕と会ったことがない読者の方でこれから会う機会があるかもしれない方は、決して変に下手に出ないでほしいし、一方でつまらないと思われるリスクもあることを承知してもらえると嬉しい。僕自身が相手につまらないと思われるリスクがあることももちろんわかっている。