iemoとmeryの買収は合理的だったのか?PMIを予想する

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今朝は驚きのあまり記事が小説風になってしまいましたが、どのメディアも買収の事実と買収企業のコメントは報じていても本案件の解説はありません。まさか買収予測記事の翌日にこんな買収案件が発表されるとは思いもよらず。コピペメディア各誌にはない論点で本買収案件を振り返りましょう。

iemo&mery

前提条件:高いか安いかは市場が決めることではない

まず本買収案件に対する世論の反応として「50億か!」「高いな!」というコメントが多数ありましたが、部外者の価格判断は本当にどうでもいい。未上場企業のM&Aという世界は本誌で示した「国内非ゲーム案件はざっくり20億前後未満」という相場観はあるものの、明確な市場はありません。

よって「高いか安いか」は買い手が決めること。meryはリリース1年半、iemoに至ってはリリース9ヶ月での売却となったわけですが、既存株主に損をさせず、スマホという時流に乗った将来性が高いサービスであるとの判断をDeNAを下したのだと思われます。

M&A案件の際にはやはり価格に対する憶測や「高い安い」が飛び交いますが、2012年のFacebookによるinstagram買収は当時10億ドルで「高い」と言われましたが、現在のinstagramの普及ぶりを見ると誰しもが合理的な買収であったと思うはずです。

買い手が欲しければその時の相場観では多少高いと感じても、のちのち金(ユーザー)のなる木になったりして誰しもが納得する買収。むしろお買い得な案件だったと思うようになるでしょう。サイバーエージェントのようにキュレーションメディアを内製で10個作ってまともに残ったのがセレクティとスポットライトだけというより、明確に立ち上がっているmeryやiemoを買った方が成功確率も高く合理的な判断だと私は思います。

キュレーションメディア収益性の鍵は「ブランド力」

DeNAは今回の買収を皮切りに「キュレーションプラットフォーム構想」を推進すると発表していた。数年後にはキュレーションプラットフォーム全体で MAU5,000 万⼈を目指すとあるが、そのMAUを実現した際にどれくらいの収益を上げられる算段があるかが最大の焦点だ。DeNAの前年通期の売上は約1,800億円で営業利益は約500億円(注:最初の記載では空見して売上を500億円と表記してしまいましたので訂正します)。次の柱を作るとなると3年後には年間売上100億円は欲しいだろう。いや、もっと欲しいだろうな。。。

仮に5つのキュレーションメディアを走らせ、1メディアあたり10-20億の売上を立てる。こうした事業は本当に実現可能なのだろうか。シュミレーションしてみよう。meryを例にとって考えよう。女性キュレーションメディアの収益予測には本誌の女性誌市場をリプレイスする可能性を秘める、女性向けキュレーションメディアをもう一度読むとイメージが沸くだろう。

■mery事業年間売上予測(2014年時点⇒2016年時点予測

月間PV:約2億⇒約5億
月間UU:約1,200万⇒約3,000万

ブランド広告:0円⇒?億
アドセンス:2億⇒5億
コマース:0円⇒2-3億
*アドセンスは1PV=0.1円と低めの想定

キュレーションメディアは「収益性が低い」という声が一部でもあるが、現段階ではアドセンスしか収益手段がない場合も多く、低いと言わざるを得ない。だが彼らは当然そこで終わるつもりはなく、meryでいえば女性誌市場からユーザーがスマホシフトした際に最もユーザーを保有しているメディアになるという算段だろう。

女性誌市場は巨大でありVeryだけでも好調時は月間広告売上が3.6億。meryがスマホ女性メディア市場で確固たる地位を築ければ、後にラグジュアリーブランドも広告を出稿するようになり、月商で1-2億程度なら容易に売上があがるようになるだろう。それが2年後なのか5年後なのかという時間軸の違いなだけで、スマホに可処分時間が寄っていくのであれば、広告費は当然後から付いてくる。その時にmeryがずば抜けたブランド力を有しているかが鍵だ。

月商1億と見積もってもブランド広告で年間約10億。アドセンスを継続するかはわからないが、アドセンスと本丸といえるコマースの売上を足せば、順当にPVが伸びていけば2016年時点で年商20億規模の事業になっていることは想像に難くない。それを逆算して現時点で30億で買うというのは、むしろ安いのではないかとも思える。5年単位では十分改修できる先行投資だ。

meryの立ち上げノウハウを持ってして他の分野へ横展開する。住はiemoがいる。だが2メディアだけでは売上100億を作るのは難しい。それなりの規模の市場の中で横展開する必要がある。雑誌にあるような分野では「食」「男性誌」なども考えられるだろう。meryとiemoのノウハウがあれば横展開の時間も大幅に短縮できると考えられる。

最近はバイラルメディアに対する田端氏の痛烈な批判もあったが、キュレーションもバイラルも最終ゴールを達成する手段であると捉えているスタートアップが少なくないはずだ。とはいえキュレーションコンテンツだけで良いと私も思わない。キュレーションでスケールした上にいかにオリジナル記事を出していけるか。本日出したマンションノートの記事内でも触れたが「いかにめんどくさいことができるか」が今後重要になると思う。

DeNA以外にキュレーションメディアやるならカカクコム?

キュレーションメディアプラットフォーム的な構想があり得るとするなら他にはどこか。冒頭の通りサイバーエージェントは買収文化がないので、おそらく今回の案件には入札していないと思いますし、今回の2社とサイバーエージェントは水と油的な感じかと思います(2社ともクレバーなので、サイバーエージェントのやったります!文化とは合わなそうです)。

GREEはこの記事が2社の売却の意思決定に軽微な影響を与えたとしたら本誌冥利に尽きますが、おそらく入札していたでしょう。他にあり得るならカカクコムかなと予想します。食べログのような大きいメディア事業を持っているので、メディア事業自体は得意なはず。現にステルスでキナリノというキュレーションメディアを運営しており、既にFacebookファンは10万人(おそらくオーガニックで)獲得しています。

DeNAとカカクコムがmeryの入札で競り、価格が高かったDeNAが最終的に勝ったのではないかと本誌では予想します。キュレーションメディアを売りたい事業者はカカクコムやGREEに持ち込むと良いかもしれません。GREEは対抗してバイラルメディアを買い漁るとかあり得ますね。

一方でキュレーションメディアには法的リスクも

今回の買収の前には、NAVERまとめの著作権違反が上場審査基準に引っ掛かったことが原因で、LINEの上場が延期になったのでは?という説もあった。他のキュレーションメディアも「NAVERまとめに準じる」としていた場合、法的リスクもある。

本誌が知人を介して弁護士にヒアリングしたところ、上場審査時はコンプライアンス上最も厳しく見るので引っ掛かるだろうが、上場後の方がそうした審査が緩く株式の売買は投資家が勝手に判断してくれということで、今回の2社が仮にNAVERまとめと同様で著作権的にグレーだとしても、さほど突っ込まれないのではないか。という見解があった。

今回のDeNAによる買収がキュレーションメディアやバイラルメディア買収の引き金を引くのか、これで一旦終了となり、他のスタートアップが買収される道筋は閉ざされるのか。今回の2社はタレントバイ的な側面もあったと本誌では考えており、この規模感(1社20-30億程度)でのキュレーション/バイラルメディアの買収はもうないかもしれない。

記事タイトルの「iemoとmeryの買収は合理的だったのか?」という自ら設定した問いに対しては、合理的であるというのが本誌の見解だ。DeNAの株価は4%ほど今日下がっていたが、良いディールだったと思う。

今後のGREEの買収動向に注目したい。

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