不動産スタートアップがいくつか登場しているが、成功確率が高そうなのはマンションノートのみだと、本誌独自の定性調査で筆者は感じた。時折本誌でも触れる機会があったマンションノートだが同サービスを運営する株式会社レンガ藤井真人氏にサービス運営の話を伺った。
1時間ほどサイトを触って見たが、デザイン性やUXは2014年現代にアジャストされた、不動産業界では先ずあり得ない先端的な感じだ。不動産サイトはスタートアップサービスであってもどこか楽天臭がするところが多い。サイトのレスポンススピードが非常に速い点も良い。
口コミは金で買うな。立ち上げ時は足を使った地味に獲得
藤井氏が実際にマンションを購入しようとした際に、仲介会社が物件の悪い点を説明しない点に、高額な買い物にも関わらず、なぜ不動産領域はレストランのように口コミサービスがないんだと不便を感じたという。その不便さを解消するためにマンションノートを立ち上げた。
2013年3月にサイトを立ち上げ、2013年12月には口コミが100万件を突破。綺麗に立ち上げたように見えるが、実はかなり泥臭く立ち上げたようだ。
2013年3月にサイトを立ち上げましたが、実はもっと早く立ち上げるつもりでした。前々から地道に口コミは集めていました。最初はクラウドソーシングなどを使って1投稿いくらかお金を払えば口コミを集められるだろうと思っていました。実際にお金を払って集めた口コミは、実は使えない信頼性が低いものが多く。。。
すぐにそういった手法での口コミ獲得は断念しました。
その後、博報堂出身の藤井氏と社内のメンバーの知り合いを駆使して足を使って口コミを獲得していった。かつての同僚や後輩に頼み込み、1人あたり○件の口コミを取ってくれ。など極めて地道に口コミを集めた。そうして集めた初期の口コミは質が高く、その後のサイトの口コミの品質をコントロールする上で有用だったという。
筆者も「口コミを金で買った」事業経験があり、実際にその施策は機能しなかった。金で買えれば楽なのだが、そうはいかないのがCGM。初期は地道に丁寧に口コミを集めるのが、遠回りに見えて最短距離であることは、実務を通して実感している。
く、口コミが見たい!マンションノートの投稿サイクル
マンションノートの事業数値を藤井氏は赤裸々に答えてくれた。
■マンションノート事業数値
月間UU:45万
UU/PV:約7(similar webより)
予測月間PV:約300万
流入経路:ほぼ検索で物件名などのロングテールワード
実際にどういったユーザーが訪問するのだろうか。パターン化してみた。
■マンションノート利用ユーザーパターン
①:引越検討者
②:自分が住んでいる物件を知りたい人
③:マンションオタク
④:不動産保有者(投資用物件など)
マンションノートは物件に関する口コミを投稿してポイントもらう。そのポイントを使って他の物件の口コミを閲覧するというシステム。
当然、引越を検討している人が一番他の物件を見たいというニーズが強い。現に筆者も引越し検討中なため、マンションノートを漁ってみたし、口コミが見たいから投稿をするという心理は理解できる。ちなみにここ住みたい。
それ以外のユーザー層からの投稿も多いという点は盲点だった。現在住んでいる物件の口コミが見たいというニーズは筆者も理解でき、実際に昨年マンションノートにテスト投稿した際は、今住んでいる物件の投稿をして、実際にその物件の投稿を見たと記憶している。
他にはマンションオタクがけっこう投稿するとか、投資用不動産を保有するユーザーが売却で有利になるように?良い口コミを書く傾向にありそうという話があり、不動産の口コミというとかなり敷居が高そうだが、そういった投稿サイクルになっていることが把握できた。
ネガティブな投稿こそが、ユーザーの引越判断に役立つ
不動産はたしかに情報の非対称性が強く、SUUMOもHOME’Sも本当にわかりにくくて不便だ。あんな利便性の低いサイトが高収益を上げているなんて、死ねばいいのにと筆者は常々思っている。
高額商品ほど購入を迷うもので、明らかに口コミのニーズはある。実際にどんな口コミがユーザーの引越判断に寄与しているのだろうか。
実際に住んだことがある方の「ここが悪い」「ここが気になる」などのネガティブな口コミが役立っているのではないかと感じます。物件の良い点は仲介業者が説明してくれます。悪い点も踏まえてこそ網羅的な条件が出揃い、引越を判断する際に有益ではないでしょうか。
筆者も実は不動産業界の経験があり、こんな顔と低いコミュニケーション力で営業したこともある。不動産業者の立場としては空室は早く埋めたい。聞かれない限りは物件の悪い点は言わずに、早く埋めてしまいたいのだ。仲介業者によってはその物件の内覧案内が初めてなこともザラで、内覧担当者がその物件について何も知らないことは日常茶飯事。内覧担当者はただの案内役にすぎず、物件に関する情報では役立たないことは少なくない。
また、マンションノートではユーザーからの口コミを自然言語解析でレーティングするシステムを社内で持っているという。ユーザー単位ではなく口コミ単位の投稿分析が可能であり、投稿内容から「実際に住んでいた物件らしい口コミなのか否か」などを判断しているという。こういった解析技術は口コミの信頼性の担保に繋がりそうだ。
質の高い口コミの例として下記のようなものが挙げられる。(クリックで画像は拡大します)
ユーザー課金も法人課金も。多様なキャッシュポイント
最後に収益モデル分析を。サービスの成長を第一に置き、マネタイズはギリギリまで伸ばしたいという藤井氏。だが既にユーザーからも法人からも「お金を払うからこんなサービスを提供してくれないか」という要望はあるという。
■マンションノートの想定収益モデル
ユーザー課金:ポイント購入の従量課金(現時点では未実装)
法人課金:データ販売や広告販売■マンションノートの現状の収益モデル
アドセンスによるクリック課金
Yahoo!との提携による問い合わせ課金
不動産という高い買い物なので従量課金でのユーザー課金のハードルは低いといえ、1物件閲覧をいくらに設定し、いかにユーザーのAPRUを上げられるかがユーザー課金ではポイントになる。
法人向けでは自社物件の口コミデータは当然欲しいだろうし、そこから導き出される分析はマーケティングデータとして有用だ。マンションノートの媒体力が上がれば純粋に広告出稿のニーズも高まる。
現段階ではYahoo!と連携しており中古不動産売買の掲載情報と口コミ情報が同期される。そこから問い合わせに至ると課金が発生するようだ。
面倒なこと=独自コンテンツを持つ企業が勝つ
僕が不動産スタートアップ領域でマンションノートに興味を持ったのは、他社が従来のSUUMOなどと少し価値軸をずらしただけの掲載型であるのに対して、CGMという圧倒的にめんどくさいことをやろうとしているからだ。不動産のCGMなんて1ユーザーあたりが投稿できる上限件数は低いし、みんなのウェディング並にパッと見無理ゲーに見える。しかし、無理ゲー気味なアプローチこそ現代の文脈では求められているのではないかと、フリークアウト佐藤祐介氏のこのツイートを見てハッとした。
データをクローリングして載せるだけのビジネスだと差別化が難しくなりレッドオーシャン化する。現に掲載課金型の不動産サイトは山ほどあるし、お祝い金などのキャッシュバックという施策もコモディティ化している。はっきり言うと、キャッシュバック賃貸のようなモデルでは何も目新しくなく、資本力あるところに勝てないのではないか。という話。勿論そんなことは当事者はわかっていて別の秘策があるのかもしれませんが。
藤井氏に話を聞く限り、マンションノートは相当地道に口コミを集めていて、質への拘りも強い。こういった姿勢が地道に強いサイトを築き上げていくと思う。
The Startupかてコモディティ記事はほとんどやらず、手間はかかるけど趣味なんで適当に書いているオリジナル記事ばかりだからこそ、一部の方にご愛読いただけていると感じる。仮にTechCrunchがThe Startupの10倍のPVがあろうが、影響力が10倍とはいえないのではないか。TechCrunchに載っている記事は他でも読めそうな記事が多く、コンテンツの独自性は低い。
CGMは立ち上げ難易度は高いが、ユーザー視点のサービスであり、掲載型と比べて圧倒的に支持される。ホットペッパーと食べログ、どちらがユーザーに支持されているかは明白ではなかろうか。こうした「メンドクサイ系スタートアップ」には今後注目していきたい。
New!今後YouTubeアカウントでサロンコンテンツの配信を予定しています。チャンネル登録100人いくとYouTubeスタジオが使えます。登録お願いします!
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