Facebookの次のNext Big thingを見つけるのは難しいが、ポストFacebook時代における確実なトレンドの一つとしてバーティカルSNSが挙げられるだろう。身近な親しい友人とのコミュニケーションであればpathだし、恋人とであればbetween、著名人のファンコミュニティであればリボルバーやsynapse salonが挙げられる。
バーティカルSNSの一種としてNextdoorを紹介する。Nextdoorはサンフランシスコに本拠地を置く「ご近所SNS」だ。通常のwebサイトは登録にメールアドレスさえあればいいが、このサービスでは自分の現住所と郵便番号が必要で、登録後に郵便でパスワードなどが送られてくるという。なので私自身、サービスを使うことはできていない。だが、注目すべき伝える価値があるサービスと判断した。
ニューヨーク市との提携も発表されたNextdoor事業概要
コンセプトは近所の人と繋がることで利便性が増したり、地域活性化に貢献できる。という感じ。HPに掲載されている「Nextdoorを使って実現できること」の一例に、犬の見張りを依頼できる。などがありました。僕個人としては、近所の人に醤油を借りれるとか、近所のお姉さんと仲良くなって飲みにいけるとか、そういうことがNextdoorを通して可能になると思います。
■Nextdoor事業概要
設立:2010年
サービス開始:2011年10月
iOS版ローンチ:2013年5月
リードインベスター:ベンチマークキャピタル(シリーズBまで実行)
その他投資家:Greylock Partners(初期のFBとLinkedinへも投資)
資金調達額:$40.2M
提携:2013年6月にNYCが都市コミュニケーションツールとして採択を発表
その他様々な都市の警察署とも提携している?
開設都市数:約120(米国のみの展開と思われる)
開設地域数:約14,100
プライベートメッセージ数:約50万(2013年2月時点)
まだそこまでメジャーなサービスとは思えませんが、既にNYCが市として提携を発表しているのがすごいですね。NYCのスタートアップに対する寛容さというか、積極的な姿勢が伺えます。さすがfour suqareの日を制定する街なだけあります。
ローカルSNSの可能性:コミュニティ時代の到来?
このNextdoorに関して、マーケット、ポジショニング、立ち上げのオペレーションの3つの観点で考えてみましょう。Nextdoorは米国のサービスですが、カナダでも既に展開を検討しているようで、遠くないうちにグローバル展開するでしょう。今回は米国に限らず、日本市場の観点でも考えます。
■マーケット:ご近所プラットフォームは共有するコンテンツ次第?
Facebookの浸透により、特に日本では仕事で一度会っただけの人でも繋がる時代になりました(米国ではLinkedinがその役割を担う)が、一方で近所の人と繋がるプラットフォームサービスは未だありません。近所の人と繋がることのメリットはNextdoor上では治安的なところを推していましたが、地域性を活かしたエンタメにもなり得ると私は考える。
バーティカルSNSの特性として趣味を活かしたテイストグラフ(死語になりつつあるが…)であれば、趣味の合うユーザー同士がコミュニケーションするコンテンツがあるため盛り上がりやすい。一方で同じ地域に住んでいるという価値軸を中心とすると、共有するコンテンツのハードルが少し上がる気がする。しかし、物理的な距離が近いとO2Oに持ち込みやすいため、近所で飲み会でもしましょうとか、そういうのが成立しやすいと思う。盛り上がるコンテンツをどう作れるかが鍵かなと。マーケット自体かなり大きい。
日本国内でいうと特に3.11後に地域コミュニティを重視する流れへの傾倒が見られ、若者を中心にシェアハウス文化が拡がっている。私自身、3年前にソーシャルアパートメントというシェアハウス的な業者のマーケティングを担っており、その後の成長を見ても社会的に家や地域を軸にしたコミュニティへの需要の高まりを肌感覚で感じる。
■ポジショニング:Craigslistを飲み込むポテンシャル
ローカルウェブサービスの覇者といえばクラシファイド広告のCraigslistでしょう。ローカルを抑えると低コストでビジネスがスケールする好例として、国内でもネットサービスマニアの方には広く知れ渡るモデルです。一時期はGoogleの一人当たり営業利益よりもCraigslistの一人当たり営業利益の方が高かったと言われています。(追記注:収益は主にアドワーズ方式と最初は掲載していましたが、特定カテゴリによる掲載課金方式のようです)
そんなCraigslistと比較するとこんなポジション。Craigslistは掲示板による物々交換のトランザクションが主なため、SNS的に地域の人と繋がりが維持される仕組みはありません。Nextdoorは物々交換が主ではないものの、繋がりをベースにその後物々交換などの市場を生み出すことができる。これは後述するmixiの事例でも十分あり得るシナリオといえます。ポジショニング的には、落ち目と言われるCraigslistを飲み込めるポテンシャルがあります。
■立ち上げのオペレーション:フィールド・オーガナイザーが肝
CraigslistはCraigsさんの地域向けメルマガから始まったと言われていますが、ローカルに特化したオペレーションが欠かせないと思われます。
案の定、求人を覗いてみると「フィールド・オーガナイザー」というコミュニティマネージャー職を都市ごとに募集しています。現実的なオペレーションとしてはNYCのフィールド・オーガナイザーがその下にSOHO担当やMeat Paking District担当というエリアセグメンテーションをして、イベントなどを開催してオフラインからユーザー獲得する地道なプロモーションに勤しむと思われます。その結果としてバイラルで広まり、数年後に巨大なプラットフォームとなる。というシナリオが思い浮かびます。どこのエリアでもいいので、素早く立ち上がるパイロットケースを作れるかが鍵。
バーティカルSNSのヒントはmixiのコミュニティにあり
上記から、Nextdoorは立ち上げ難易度は高いものの、Craigslistを超えるポテンシャルのあるローカルSNSであり、ベンチマークキャピタルが張るのも納得である。という結論に達しましたが、Nextdoorに似たサービスって国内にないのか。と思うと、mixiの地域コミュニティってありましたね。
大学2年の頃に私は東横線の学芸大学駅に住んでおり、mixiの学芸大学駅コミュニティがありました。そこで何人か同じ慶応生同士で知り合い、そのうちの一人がclick on cakeの長沼ってやつだったりしましたね。残念ながら近所のお姉さんと出会って、近所のBARに飲みにいくという夢は実現しませんでしたが、今振り返ってもmixiの付加価値の高さを感じた経験でした。
mixiに関してはあまり触れない本誌ですが、mixiはコミュニティ機能が最大の価値であり、特定のコミュニティジャンルに特化したバーティカルSNSは多く考えられる。芸能人ファンコミュニティのリボルバーとかもある意味その発想ともいえるだろう。このコミュニティ機能という既存資産を活かした事業展開を私なら考えるが、mixiがリリースする50本アプリにそういうサービスはおそらく含まれて入るんじゃないかと思う。
ついでにSNSに関して付け加えておくと、指摘するまでもないが外部ネットワーク性でレバレッジが効くモデルで、バーティカルだと特化しているがゆえに多数の人と繋がるスピードが遅くなるので、Facebookやmixiのようなスピードでは普及はしない。pathがスケールに苦戦する最大の理由は外部ネットワーク性という果実を最大限活かせない構造であることに起因する。
バーティカルコマースは既に乱立している国内市場だが、今後半年から1年後のトレンドとしてバーティカルSNSも浮上してくる可能性が高いと私は予測します。
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