日本上陸が噂されるSpotifyの事業数値と日本の音楽コンテンツ市場

Pocket

spotify音楽関連のスタートアップサービスやその構想を聞くことが度々あるが、いずれも強いニーズがあると思えなかったり、マネタイズの匂いがしなかったりする。本誌では「音楽サービス」についてまともに触れたことはないだろう。

「umekiは音楽サービスには興味ないのだろうか」というtweetを見た覚えがあるが、興味がないわけではなく興味が持てるサービスが市場にないだけだ。

音楽サービスといえばSpotifyだ。このスウェーデン発の月額課金制の音楽ストリーミングサービスは世界的に使われており、近々日本上陸も噂されている。Spotifyの事業数値および日本の音楽市場について本稿で紹介する。

有料会員数600万人を誇るSpotifyの事業数値

先日出ていたオリコンスタイルの記事を元に整理すると

■Spotifyの事業数値

アクティブユーザー数:約2,800万人(おそらくMAU)
有料会員数:約600万人
プレミアム月額会員価格:9.99ドル
配信楽曲数:約2,000万曲
ユーザー作成によるプレイリスト:10億

2012年度売上:716億円
*月額会員のみでライフタイム1年と仮定。厳密には広告収入もあるとのこと。

美しいですね。たまらなく美しい数字です。crunch baseを元に、ファイナンス状況を見てみましょう。

■Spotifyのファイナンス状況

2011/6:1億ドル調達
参加株主:KPCB&Accel&DST
2012/11:1億ドル調達
参加株主:GSなどと噂されている(参照リンク
時価総額:32億ドルといわれている。

鉄板すぎる株主布陣。完全なレイターステージ。次のメガIPO銘柄ですね。場合によっては時価総額1兆を超えそう。特にDSTのディールはマジで鉄板ですね。大型ディールにはほぼ顔を出してくる。

参考:Facebookなどへの投資で知られるDigital Sky Technologiesのポートフォリオ(From The Startup)

SpotifyのモデルはGrouponなどと違ってサステイナブルなモデルだと思うので、手堅く成長していくと思う。2013年に入ってからアジア進出を発表しているが、各国の音楽市場に癖がなければ、ユーザーメリットがあるサービスであるため、プロモーションコストを掛ければ知名度も相まって純粋にユーザーが増えるのではないか。

ちなみにSpotify同様の音楽ストリーミングサービスは競合にDeezerというフランス発のサービスがあるようだ。

日本の音楽コンテンツ市場の特性

日本上陸が昨年から噂されていながらも、なかなか実現しないのは日本独自の市場の難しさがあるといわれている。音楽レーベルがうるさいのだろう。

ソーシャル時代に音楽を“売る”7つの戦略 “音楽人”が切り拓く新世紀音楽ビジネスという本によるとこういうデータが出ている。

■日本におけるオンライン音楽課金市場

・iTunes市場シェア:8%
⇒これは欧米と比較して圧倒的に低い
・レコチョクの市場シェアが最も大きい

たしかに日本の楽曲のiTunesにおける品揃えは悪い。これは諸外国と比べてガラケー市場が発達しており、その際にレコチョクが強かったことが尾を引いているといえるだろう。Spotifyの上陸においては、iTunesですら苦戦しているといえる対音楽レーベルとの交渉でどれだけの楽曲数を日本で獲得できるかが鍵といえよう。

海外の音楽レーベルの事情がわかりませんが、日本の音楽レーベルってCDが売れていた時代はかなり儲かっていたと思うので、新しいビジネスモデルが利益率が低いと対応しにくいのではないかと推測します。

動画ストリーミングのHuluより時価総額が高い理由

2012111601音楽ストリーミングの月額制に対し、動画ストリーミングの月額制のHuluはYahoo!などによる買収が噂されている。10億ドルでの買収も噂されているが、既に32億ドルの時価総額であるSpotifyとの差は何なのだろうか。こんなところではないかと推測した。

1:利用時間=音楽>動画
2:コンテンツ数
3:課金文化

You tubeという巨大プレイヤーが動画にはあるとはいえ、音楽ストリーミングの方がスマホとの相性がよく、利用時間が伸びそう。

コンテンツ提供数の差がユーザーメリットにダイレクトに響くため、そこも重要なんだろうな。Huluが日本展開した時にお試しで使ったが、日本のコンテンツがなさすぎて離脱した思い出が。

音楽に課金する文化はあっても、動画に課金する文化がない。You tubeが動画に課金しない文化を作ってしまったともいえる。

ゆえにHuluがSpotifyのような1兆円企業になるにはハードルが高く、8-10億ドルで買収されておくのが関の山な気もする。AT&Tも買収に名乗りを上げているようだ。

ストリーミングのみならずプラットフォームとしての可能性

現在は音楽ストリーミングサービスによる月額課金が主な収益モデルであるSpotifyだが、将来的にはFacebookにおけるZyngaのような、プラットフォームとしてサードパーティーのコンテンツを受け入れていくような動きがありそうだ。この話に関しては下記の記事が詳しい。

Spotifyアプリには、地球の音楽メディアの未来が宿っている

というか、この方の連載はSpotifyに限らず、Pandoraなどにも詳しく言及されており、かなり勉強になる。時間がある時にじっくり読んでおきたい。

特別連載企画『未来は音楽が連れてくる』

ということで、一刻も早くSpotifyには日本上陸していただきたい。国内の音楽ストリーミングサービスはDeNAがGroovyというのをリリースしているが、2013年6月現在ではあまり使われておらず、検索してもメディアの注目度はさほど高くなさそうに思える。月額課金ではなく都度課金が特徴

Groovyのサービスカラーは心なしかSpotifyと同じ色な気がするが、commもさほど流行っていると思えないDeNAの新規サービスとして、スケールすることができるか注目したい。選定する市場はいいと思うんですが。

——————————————————————
■About this media & Yuhei Umeki

私に興味がある方はこちらからいつかお茶したい登録してみて下さい。「いつかお茶したい」された人から10%くらいの確率でこちらからお誘いすることもございます。宝くじ感覚でご登録下さい。

スポットでのコンサルティング依頼はこちらから受けつけています。プロモーション企画や資金調達の依頼が多いです。決してコーヒーミーティングではそういう依頼はしないで下さい。

サロンへのご入会は歓迎です。会員数150名突破!スタートアップ業界の最新動向について知りたいならUmeki Salon



Pocket

コメントを投稿する

「日本上陸が噂されるSpotifyの事業数値と日本の音楽コンテンツ市場」に対してのコメントをどうぞ!