clickoncake(クリックオンケーキ)という誕生日や記念日に送るデコレーションケーキのECサイト、をご存知だろうか。ジャンル特化型のコマースサイトが隆盛な中で、面白い事例といえるので紹介する。クリックオンケーキは私の周りを見渡すと、特段女性からのリアクションが多く、女性ウケするサービスといえる。
クリックオンケーキの設計思想を株式会社COC代表の長沼真太郎氏に伺いながら、ジャンル特化型コマースを運営する上で留意するポイントが見えてきた。ちなみに長沼氏は北海道の著名洋菓子屋「きのとや」の二代目であり、古いパティシエ業界に対する挑戦としてCOCを立ち上げたという。
■1:「遠くに住む大切なあの人に」という磨き上げられたコンセプト
一見ただのデコレーションケーキのECに見えるが、実は裏に明確な利用シーンを想定したコンセプトがある。clickoncake.comのはじまりというSTORYページによると、過去の実験から遠くの家族や友人の誕生日に送られていたことがわかったようです。
きのとやで北海道だけでなく全国発送のケーキを2年前から実験的に始めました。その結果、7割の方はプレゼントとして遠くのご家族やお友達に贈られており、さらにその9割の方はお誕生日プレゼントとして贈られていたことが明らかになりました。初めて誕生日ケーキを遠くに住む家族に贈ることができて、新しいケーキの使い方でしたという声をたくさんいただきました。(STORYページより編集)
データを元に「遠くに住む大切なあの人に」というコンセプトを設定。たしかに家族の誕生日にサプライズ的に送ってみてもいいかもなと私も思いました。ユーザーに利用シチュエーションを絞ることで、「そこで買う理由」を作りやすく、コンセプトでCVRは上がりやすくなると思う。
■2:PinterestやFabを彷彿とさせるデザイン性の高さ
サイトを見ての通り、デザイン性のかなり高いサイトで写真のクオリティが高い。サイトデザインに関して長沼氏に伺うと
デザインの参考になったのはFabです。一番重要と考えたのは、写真のクオリティです。リアルのケーキ屋さんの店に入って、ケーキを眺めているよりも、より美味しそうなケーキの写真を使うこと。デザインの観点でいえば、ケーキ業界では通常はタブーといわれている青を写真で使いました。食品は暖色系の方が美味しく見えるためです。しかし、青も使うことでカラフルな世界観を演出し、お客様にワクワク感を与えたいと考えました。(長沼氏)
Pinterest風UIは他のコマースサイトでもありそうだが、ここまで大きい商品画像を使っているコマースサイトは私が見た限りではなかった。
一見、あり得ない大きさの商品画像だが、写真の大きさからシズル感が鮮明に伝わりやすく、CTRは高いのではないかと推測される。「店頭で眺めるよりも美味しそうに見せる」というこだわりが感じられる。商品画像に対する執拗以上なこだわりは、コマースで最も重要な要素の一つではないだろうか。
■3:「美味しさ保証」で返金対応も。良質なユーザー体験へのこだわり
1の「遠くに住む大切な人へ」という明確な利用シーン+2のシズル感のある商品画像、これだけでも買う理由はあるが、「美味しさ保証」という対応もあるという。これはザッポスでいう「返品OK」的なものに近しいかと思うが、靴なら返品したらまた別で出荷できる。だがケーキはそうはいかない。クリックオンケーキのケーキを買って素敵なユーザー体験ができれば、美味しさ保証を求めてくるユーザーもいないであろうか。
また、サイト上では「アマゾンでは得られない価値を提供するオンラインショッピング体験」を謳っているが、こうしたコンセプトとデザインによるユーザー体験と、ここでしか買えないという商品の希少性がポイントになるだろうか。
たしかにAmazonは便利だが、クリックオンケーキでケーキを買うという体験は、ストーリー性やデザイン性を鑑みると、店頭でケーキを買う以上に素敵な体験になるかもしれない。商品名にロマンを感じたりもする。No.1ケーキがAntoinette’s Secret Garden アントワネットと秘密の花園
名前だけでそそられたりする。商品一覧ページ。
■補足:コンテンツマーケティングも充実
The cake magazineという自社ブログメディアを保有しており、それなりにPVを獲得している記事もある。Facebookページも既に7,000人突破。
私も注文して食べてみましたが、美味しかったですね。既存のECのルールに捉われない、こうしたエッジのあるECが出てくると面白いですね。
Umekiとケーキを食べながらお茶したい方はこちらからリクエストや「いつかお茶したい」登録を。
会員数140名突破!スタートアップ業界の最新動向について知りたいならUmeki Salon