CGMサービスが持つデータ量はどれくらいが最適か

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先日発表した、美しすぎる食べログのマネタイズモデル:グルメサービスのキャッシュポイント比較一覧という記事に対して、複数の有識者より連絡をいただいた。そこで食べログとRettyの1レビューあたりのボリュームが、サービスの提供価値をどう左右するかという論点に行き当たった。

サービス設計を考える上で有用な論点であろうため、食べログとRettyを一例に深堀りしたい。

データ量が多い=価値が高い、は真か?

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両サービスの性質を比較するとこうなる。食べログに比べてRettyのレビュー分量が少ないのは明白だろう。各ポジションに?を付けた点が大きな論点になる。

■食べログの提供価値

・店舗のレーティング
・エリア、ジャンルのランキング
・かなりの分量に渡るレビュー
・料理写真のみならず店内や外観など豊富な写真投稿

■Rettyの提供価値

・ソーシャルログインによる実名投稿
(ゆえに知人のお勧め情報が可視化される)
・趣味が合うレビュアーを見つけやすい
(タイムライン方式のUIのため)
・投稿ハードルが低いため投稿しやすい

まず食べログに関してだが、1レビューあたりのボリューム(現在は最低200文字から)が信頼性を底上げしているという点はたしかにあるだろう。しかし、私の周囲のユーザーは「レーティングやランキングは見るが、レビューまで読まない」という人が多い。多くのユーザーにとっては詳細なレビューは不要なのかもしれない。勝負デートや接待の時に詳細なレビューを読み込むユーザーはいそうではあるが。

1レビューあたりのボリュームが多いから、信頼性のあるデータへ加工できるという観点はあるが、「レーティングやランキングのみ見るユーザーが大多数である」という仮説を置くと、1レビューあたりのボリュームの多さは本当に価値が高いのか再考の余地がある。

1レビューあたりのデータ量の長所と短所:二次加工に価値

食べログとRettyの事例から少し離れて、抽象化して考えてみる。

■データが多い長所

・データ量と内容の信憑性は比例する傾向にある
・豊富なデータから二次加工したデータは価値が高い傾向にある

■データが多い短所

・投稿ハードルが上がりがちなので投稿数が減る
・データ量が多すぎてユーザーにとってそこまで必要ない場合がある

■データが少ない長所

・投稿ハードルが下がるため投稿数がスケールしやすい
・ユーザーがレビューを気軽に参考にできる

■データが少ない短所

・データ不十分で参考にならない場合がある
・データが少なくて二次加工しても価値あるデータを生み出せない

パッと思い付くところはそんなとこ。論点は主に2つかな。

①:投稿ハードルの高低と得られるデータの信憑性の相関
②:データの二次加工による付加価値の創造

①はデータ多い方が信憑性が高いんだけど、少ないからといってユーザーが意思決定できないとも限らないという極めて悩ましい話。

②はランキングとかの生成に結びつくため、明らかに価値になる。しかし、投稿ハードルを下げると全体の「投稿量」は増えるため、「1レビューあたりの分量の多さ」とは違ったデータが取れ、二次加工して付加価値出せるかもしれない。

食べログとRettyのタグラインと提供価値の比較

ここで食べログとRettyの話に戻ります。タグラインを比較しましょう。

食べログ:ランキングと口コミで探せるグルメサイト
Retty:友達のおすすめが集まる実名グルメサービス

食べログは「ランキング」を一番前に押し出していることからも、データの二次加工による付加価値に自信がある様子。一方でRettyはやはり実名押し。両サイトは提供価値が異なるんですね。僕の中の解釈ではこういった提供価値。

食べログ:ミシュランに匹敵するグルメガイド
Retty:友達のお勧めの店を知ることができる

どちらも価値がある市場です。後発のRettyは食べログのポジションを見て、そこを取りに行っているともいえます。食べログはミシュランのようなグルメガイドが持つ市場のリプレイス、もしくは共存といえるので、既に市場はそれなりにあります。Rettyはソーシャルログインに乗じた市場で、オフラインのやり取りで友達のお勧めを知りたいという需要はたしかにあるのですが、それがどれほどの規模なのかはちょっとわからず。

二次加工データの価値が、市場の転換点となる?

食べログ vs Rettyで焦点になるのは、投稿ハードルの低いRettyの口コミ数が食べログを越えた時に、二次加工で価値を出せるかという点に収斂するのかもしれません。1レビューあたりの分量が少なくても、投稿量がスケールすればそのデータの二次加工に価値は出るのか。出ないのか。

Rettyユーザーである私でさえ、最終チェックは食べログの点数を必ず見ざるを得ないというのが現状です。Rettyの二次加工データが食べログのレーティングより価値が高いと思われ始めたときが、市場の転換点といえるでしょう。超簡単にいうと、食べログのランキングやレーティングより信憑性の高いデータをRettyが作れればRettyが勝てる可能性が上がります。かなりハードルの高い牙城だと思いますがね。

ユーザー数や投稿数を伸ばすことはもちろん大事ですが、コンセプトレイヤーで未来をどう描いているのかが一番重要ですね。データをどこまで取得しにいくかという話は、コンセプト設計の際に考える大きな一つのテーマといえそう。ビッグデータとかいって、データ取りゃなんとかなるって発想も好きじゃないんですよね。どんなデータがどう使われるかという想定を最初にしっかりした方がいいですね。それをサボってる経営者は少なくなさそう。

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