グルメ系サービスの比較です。ありそうでない記事かと。グルメ系サービスは知り合いが多いのですが、The Startupはあくまで中立的なメディアであると前置きしておきます。ご了承下さい。
国内で展開する主な8つのサービスで比較してみました。(ホットペッパーはなんとなく外しておきました)こうしてみるとグルメ系サービスには「ユーザー」「店舗」「その他広告主(ナショクラなど)」の3つのキャッシュポイントがあることがわかります。
そのうち上場企業で公開数字を拾うとこんな感じです。食べログはカカクコム内の事業でセグメント別営業利益が見当たらなかったため営業利益の記載は割愛。
クックパッドが月額会員で成長を牽引しているのは周知の事実で、直近の公表数字では会員数90万人。上記の表から記載を省きましたが、2013年度3Qの売上内訳は月額会員2,184百万円、広告1,359百万円。営業利益率も53%とかなり高く、クックパッドのビジネスモデルが美しいと言われていることはネット業界では有名です。
今回は食べログのビジネスモデルに着目してみます。今後の展開次第ではクックパッドより美しくなってしまうのではないかと思っています。
比較の数字で出したので言及してみると、ぐるなび的な営業マンを抱えるモデルは現代のwebサービスでは仕組み上、美しくないですよね。売上規模の割に営業利益は薄いですし、時価総額もクックパッドとぐるなびでは3倍近くの開きになっています。市場は営業利益率の高い企業を評価します。
食べログ月額会員の伸び:鍵はプレミアムクーポンにアリ?
食べログのユーザー月額課金の現況と今後のポテンシャルの整理です。
参考:食べログプレミアムサービス
■月額課金現況:2013年5月現在
・有料会員約15万人(月額315円)
■月額課金アップサイド予測
・有料会員50-100万人
・根拠:外食は地域性に偏りがあるためクックパッドほどの有料会員数にはならないと推測■課題・リスク要因
・無料会員のスマホでのユーザビリティの悪さゆえのユーザーの離脱
⇒ランキング、詳細設定しての店舗検索ができない■主な有料会員機能
・プレミアムクーポン
・ランキングとこだわり検索(モバイル)
・広告非表示
私は無料会員ユーザーとして利用していますが、リスク要因に挙げた通り、ランキングやこだわり検索がスマホでできない点にストレスを感じます。この点にストレスを感じて、有料課金するユーザーもいれば、離脱するユーザーもいるでしょう。
注目すべきはプレミアムクーポンで、先日とある女性起業家とランチした際に「食べログのプレミアムクーポン使ったけどお得で良かった!」と言っていたのが印象的でした。プレミアムクーポン?あるんだ。ふーん。くらいに思っていましたが、上記の遷移先を見ても5,000円オフとかになれば、1年分の課金総額3,600円を越えるわけですから経済的なメリットは十分ある。
しかし、プレミアムクーポンを利用することと月額課金のLTVを天秤に掛けて、課金すべきか判断するという賢いユーザー層は多くはない。プレミアムクーポンの打ち出し方、ユーザーへの認識のさせ方のチューニングが重要だと思いました。経済合理性で判断するはずの僕ですらここまで考えませんでした。あとは食べログヘビーユーザー層(グルメな人)は所得がそれなりに高いと推測され、そういうユーザーにクーポンは機能するのか?という疑問も少しあります。
店舗会員有料サービスで堅調に店舗から課金
続いては店舗有料サービスの考察。参考:食べログ店舗会員のご案内
登録店舗数:約77万件
有料サービス利用店舗数:?
ここは堅調に課金できそうなポイントですね。ここまでスケールすると。有料サービス利用店舗数は開示されていませんが。
これに加えて、cenaというお店の予約も始めました。予約に関してはOpen tableのようにシステム使用料型なのか、送客課金型なのか詳細はわかりかねますが、大きなプラットフォームを活かした新たなキャッシュポイントであることには違いありません。実際に「食べログを見ました」と電話で予約するユーザーが多いのであれば、大きなキャッシュポイントになり得ます。
あとは広告も。参考:食べログ媒体資料
食べログのキャッシュポイントと成長ポテンシャルを下記に整理。
・ユーザー月額課金(有料会員:50-100万人へ伸びる?)
・店舗有料サービス:(数字非公開だが、伸びる余地はまだある?)
・予約課金:(始めたばかりで伸びしろは大きい?)
・広告:(クライアント業種が絞られるだろうがまだ伸びはある?)
4つのキャッシュポイントがあるわけです。クックパッドもびっくりの美しさかもしれません。僕は美しいものに弱いのです…。
ソーシャルCGMのRettyが突く、食べログの盲点
食べログと同じCGMで、スタートアップ界隈で本誌も一押ししているRetty。ソーシャルログインをベースとした、食べログの匿名性の高いレビューとは真逆のポジションを取っています。レビューが40万件を突破したようです。サービス開始からまだ2年経っていません。食べログのレビューが現在400万件のようなので、2年で1/10まできたということは、今後更に伸びるペースは加速していくと思われます。
Rettyに関してはこの記事を出す直前に、うっかり武田さんと飲んでしまったので、あまり迂闊なことを言えませんが、食べログとの比較をするとこうなります。
Rettyはソーシャルログイン前提のサービスになるため、店舗のレビューは概ね好意的な評価が多いです。FBにネガティブな内容の投稿をするとセルフブランディングがよろしくないように、Retty内においてもネガティブなレビューを書く人はあまり見受けられません。
一方で食べログは匿名ということもあり、Rettyと相対的に比較すると厳しめのレビューが多いのも事実。厳しめのレビューも参考にはなるのですが、レビュー内容によって店舗からのサービスへの印象が変化するのは明白。Rettyが突ける食べログの盲点はここにあると私は思います。食べログの有料店舗サービス利用をやめて、Rettyに乗り換えるという可能性は今後出てくるでしょう。
現状はあまりマネタイズしているようには見えませんが、外食のCGMは先行者の食べログを見るとキャッシュポイントが多いので、将来は明るい。のかもしれません。
その他サービスのマネタイズ:予約特化と写真特化
今回8サービスを比較しているので、最後に残りのサービスを。
ポケットコンシェルジュやOpenTableは予約がメインのキャッシュポイントといえます。グルメ系写真サービスでは最近ではSnapDishとペコリが強いと聞いています。SnapDsihはこういうイベントをやっていることもあり、広告主はもう入っているかと想定。
写真系サービスに関しては、Snapeeeのようなスタンプ課金とかはあるでしょうが、ユーザー月額課金は厳しく、広告主導になることが予測されます。あとは広告の上にコマースをアドオンするとかでしょうか。新興サービスの言及は薄くなってしまいましたが、写真アプリのマネタイズに関してはこちらの記事を参照して下さい。
今回の記事の結論としては、食べログは美しい。けどRetty頑張って下さい。という感じです。市場がある分野だと、中長期でのキャッシュポイントが多くなるので良い。キャッシュポイントを考える上での事例になればと。
一部で、The Startupで有利に書かれている企業は金もらっているという噂を最近耳にしますが、あくまで個人のオピニオンを書いているだけです。メディアも叩かれることはあります。孤独ですね。
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