2013年4月25日に予定されているオークファンのIPO。上場間近銘柄と業界では囁かれていましたが、ついにですね。オークファンというサイトについて、そしてその収益構造を有価証券報告書より抜粋して分析します。
aucfanはオークションやショッピングの商品や価格情報の比較・検索・分析などが可能なサイトです。オークションに出品する際や買い物する際に相場観が知れる。という点が最大の提供価値といえます。オークション版カカクコムのようなものです。実際に何かブランドネームなどでオークファン内で検索すると、ヤフオク・楽オク・モバオクの三大オークションサイトに出品されているデータが主に出てきます。
収益ポートフォリオはクックパッドに類似?
注:単位=百万円
まずは直近の売上とセグメント別売上、そして経常利益をまとめました。サービス課金とは後述する月額有料のプレミアム会員を中心とした課金を指します。このサービス課金が収益の半数以上を占めます。
この収益ポートフォリオはクックパッドに非常に似ています。若干古いですが、本誌でクックパッドを分析した際のデータと記事を参考までに。
参考記事:アットコスメのアイスタイルが上場。クックパッドとの比較からジャンル特化型CGM事業の成長要因を探る
広告がアフィリエイトか自社メディアの枠を売っているか、という程度の違いです。上記の記事を書いた2012年3月時点でクックパッドの有料会員数は50-60万人でしたが、2013年4月時点では約90万人まで伸びています。クックパッドの株価に関してはここ1年で約3倍になっています。
オークファンに関しては主要オークションサイトからデータを引っ張ってくるアグリゲーションモデルで、他のオークションサイトが盛り上がれば盛り上がるほど、データも増えてSEOも強くなり、ユーザーに認知される機会が増えていきます。オークション市場の成長性と強く連動するモデルといえるでしょう。
プレミアム会員数が伸びる余地:10倍以上は伸びる
続いて会員数です。有料会員に相当すると思われる「プレミアム会員」は月額498円で、過去3年間の落札データ検索や出品者向け機能の利用が可能になり、落札相場検索のハイスピード化、出品テンプレートの保存、入札予約、仕入情報などのサービスが利用できる。とのこと(有報より抜粋)
売り手からするとより高く売りたい心理的に、オークションの相場観を掴むことは重要です。特に単価の高いものを定常的にオークションで売るような、オークションのヘビーユーザーにとっては、オークファンのプレミアム会員機能は月額500円程度であれば痛くない投資でしょう。オークションのヘビーユーザーが有料会員に転換していると推測されるため、継続率やライフタイムバリューも高いと思われます。
この有料会員数がどこまで伸びるかというベンチマークは2点あると私は考えており、1つはヤフオク、1つはスマホによるオークション市場自体の成長性です。
■Yahoo!プレミアム
会員数:784万ID(2012年3月末)
料金:月額399円
提供内容:ヤフオクの参加費を伴う本人確認システムが母体
コンシューマ事業会員サービス売上高:373億円(2012年3月末)
コンシューマ事業収益モデル:Yahoo!プレミアム+システム利用料
落札時に商品総額の5.25%など:リンク
日本最大のオークションサイトであるヤフオクでの売上規模はこれくらい。プレミアム会員は784万IDもあることから、オークション自体は現時点でそれなりの市場規模であり、この5-10%程度はヘビーユーザーであり、まだオークファンの存在に気づいていないだけ。という可能性が十分あります。仮に5%の潜在有料会員がいたと仮定しても約40万人。オークファンの現状の有料会員数は約3万人ですから、10倍くらいまでには伸びるであろう。と単純に帰納的に推測されます。
もう1つのベンチマークは「スマホコマース」市場の伸びです。スマホで展開するいくつかのサービスにより出品ハードルが下がり、今後オークション市場の伸びはスマホが牽引していくと予測されます。成長率の予測は根拠が見当たらないので出しませんが、明らかに伸びます。スマホオークションに関しては本誌では下記の記事で分析済みです。2013年後半から2014年にかけて、スマホオークションの競走は国内で激化すると読んでいます。
参考記事:スマホへ主戦場が移るネットオークション:成否の鍵は写真投稿ハードルの低さ
結論:ブルーオーシャンで戦うオークファンは明らかなbuy
現時点でも取りきれる市場がヤフオクの存在から明白であり、SEOを中心とした(IPOで資金調達するとTVCMもあり得るかも)プロモーション施策でサイトの認知度を上げ、有料会員数を伸ばせる余地が少なく見積もって10倍以上あり、スマホによりオークション市場自体の盛り上がりも容易に推測されます。
そしてオークファンの最も面白い点は、オークファン自体がオークションサイトではなく、オークションのアグリゲーションサイトであるという点です。オークションサイトはヤフオクなどの巨人がいつつ、スマホではこれからスタートアップが複数しのぎを削る舞台ですが、オークションのアグリゲーションという観点での強い競合は見当たりません。強いて言えばカカクコムになるのでしょうが、新品と中古品と棲み分けができています。なのでDGインキュベーションも出資しているのではないでしょうか。
市場が明らかに伸びる余地がある×競合がいないブルーオーシャン
これがオークファンの市場です。
分析した結果、エニグモ以来の非常に分かりやすく伸びそうな銘柄であると個人的に判断できました。オークファン、buyですね。有料課金が中心のモデルは会員数が伸びるに連れて利益率も上がっていきます。なかなか美しいビジネスモデルだと思いました。
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