リッチメディアが上場承認。だがネットIPO銘柄稀に見る成長性の低さ

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2015年下半期はインターネット関連銘柄のIPOが増えそうです。ヘルスケアメディアを主軸としたリッチメディアに上場承認が出ました。いつものごとくご紹介を。

リッチメディア

時価総額は50-100億。類似のアイスタイルが謎に好調

まずは時価総額関連を。

公開日発行済株式総数:1,544,900株
TS予測公募価格:3,400円
TS予測公募時時価総額:約52億
会社予測来期当期利益:約1.08億円
TS予測当期利益適用PER:約50倍(小粒なので甘めの算定)

出典:東京IPO

さほど規模は大きくないかと。ただし、「ヘルスケア」ってバズワードな気がするので、それだけで跳ねて初値PER100倍で時価総額100億いく可能性もありますが、二桁億円後半で推移していくと予測。

類似上場企業を見るとアットコスメのアイスタイル。CGMと普通の記事型と構造の違いはあれども、広告主は近しいジャンルです。アイスタイル、厳しそうだなーと思っていましたが、最近株価が爆上がり。直近決算は売上71億営業利益4億とむしろ利益率は下がっていますが、時価総額は192億でPER62倍です。シンガポール進出のリリースだけでそんなに株価上がるのか。謎です。ただ、アイスタイルが評価されているのはリッチメディアにとっては好材料。

もう一つ忘れてはならないのがトレンダーズ。こちらが運営していた「キレナビ」は「スキンケア大学」と少し近接していましたが、サイブリッジに事業譲渡。この背景には薬事法違反に対する山本一郎氏のジャーナリズムもあり、スキンケアも薬事法に関連することもあるでしょうから、上場審査をクリアしてきているので大丈夫かとは思いますが、リッチメディアは山本一郎氏リスクがある銘柄と見ることもできます。

資本政策は、SBI&サイバーエージェント研究会さんの記事を参照。詳細は本稿では割愛しますが、何気に累計約6.5億調達しています。2013年のリンク&モチベーションラウンドは公開されていましたが、その後の光通信関連と最後のグローバルブレイン(以下GB)ラウンドはシークレットだったのか筆者は他メディアで確認できませんでした。最後のGBラウンドから逆算すると、直近バリュエーションは約25億。IPOの公募で最低2倍は確保できるかと。

メディア事業の割に低い利益率とIPO銘柄らしからぬ低成長

続いてPL。

2014年 2015年3Q 会社予測2015年 会社予測2016年
売上 1,265 1,163 1,516 1,647
営業利益 84 180 171 176
当期利益 -52 101 158 108
営業利益率 15.5% 11.3% 10.7%

*単位:百万円
*2014年はビューティー事業「HAIR」の買収があった

2014年から2015年は売上2.6億、営業利益0.9億と伸びていますが、2015年から2016年の伸びは鈍化。2015年3Qから通期で営業利益がむしろ下がっており、先行投資に割いたと見るのか業績伸び悩みと見るのか。売上の伸びがイマイチなので、既存事業の伸び率が鈍化していると取ることができそう。

セグメント別売上を見てみましょう。

会社予測2015年 会社予測2016年
ヘルスケア 1,298 1,381
ビューティー 175 244

*単位:百万円

一応セグメント別になっているものの「ヘルスケア」の比率が高い。ここには主軸の「スキンケア大学」と新規事業の「ヘルスケア大学」が含まれる。気になるのはメディア事業の割に利益率が低い点。今後さらにスケールしていけば利益率の改善が見込まれるかと思いますが。しかし、売上の伸びがIPO銘柄の割に破壊力がない。今まで見たIPO銘柄の中で最も成長率が低いですね。保守的に見ているのか、伸びない要因が構造的にあるのか、判断つきにくい。

スキンケア大学はオールアバウトっぽく広告臭が強い

リッチメディアの成長性は、構成比から見てほぼスキンケア大学にかかっています。まず、美容領域の情報提供という観点では、アットコスメと同じです。ただ、一の部に「口コミが主体のメディアが多い中で、ドクター221名、管理栄養士16名など多数の美容専門家の監修のもと、ユーザーが真に信頼できる情報を提供云々」という記載があり、ゆえに売上原価に「記事制作費」とかがけっこう載ってきています。

CGMではなく専門家による情報に価値があるというのはユーザー視点では一理ある一方で、ビジネスモデルとしてみるとスケーラビリティに欠け、利益率はCGMより劣ると言わざるを得ません。

Facebookページも10万ファンがいるにもかかわらず、いいね数は平均すると10-50とかなり少なく、広告で買ってきているどころか、FBページ運用が全然最適化されていないと思われます。記事もガチなお悩み解決系が多く、ガチ悩みワードでの流入が中心と想定されます。代表の坂本氏はCAテクノロジーの取締役だったそうなので、SEOは強いのでしょう。ガチ悩みワード掛け合わせで上位を取ってきていると想定されます。

筆者の見解としては、女性向けキュレーションメディアの中にこういった記事を忍ばせるような感じで、もっと自然に(ネイティブというやつか)悩み解決のコンテンツを入れないと、「メディア」として記事が定常的に読まれる状態にならないと思います。

よって「メディア」という観点で見ると、「スキンケア大学」は「mery」より明確に集客力では劣ります。ニッチなバーティカル分野とはいえ、UI的にも内容的にもなんかオールアバウトみたいで、ちょっと2000年度後半の香りですね。ヘルスケア特化型オールアバウトですね。

メディアの作り方がリクルート的な広告主導メディアっぽいので、ユーザーを集める(はっきりいうと、楽しませて継続率を上げる)という観点が欠けているとざっくりサイトを見て感じました。今風ではないですね。おそらくスキンケア大学のトラフィックが伸び悩んでおり、ゆえに広告売上も保守的な予想としたのではないでしょうか。

スキンケア大学が爆発的に伸びるとは思えず、ゆえにリッチメディアの業績も同様です。よって、IPO銘柄ではあるものの、成長性に乏しく、買い推奨は本誌では致しかねます。

本誌読者の皆さんからの、リッチメディア、スキンケア大学に関する成長性についてのコメントをお待ちしております。ネット美容領域はホットペッパービューティーの独壇場なので、崩す余地はあると思いますけどね。



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