本日、Klabがマザーズに上場しましたね。
久々のネット関連銘柄として注目があつまることが予想されます。(現時点でのcapは150億くらいですね)
SAP系としては初の上場ということで、今後のSAPの上場の噂も盛り上がっていくことでしょう。
SAPにはさほど詳しくないので、Klabの上場に関しては別の視点から考察してみたいと思います。
公式HPによるとKlabの株主は
SBI、IMJモバイル、ドコモ、セがサミー、CAモバイルなどとなっています。
未上場である「IMJモバイル」「CAモバイル」が株主という点はとても興味深いです。
IMJモバイルの投資事情はさほどわからないのですが
CAモバイルに関してはひそかにIPOディールに顔を出してきていることがわかります。
2010年のイーガーディアンのディールでは
DI、伊藤忠、GREEと共に株主に名を連ね
近々韓国の市場であるコスダックに上場が見込まれる
パワーテクノロジーのディールでも名を連ねています。
(ここは株主が大杉な気もしますが・・・)
他には「ボルテージ」「パピレス」などしか
主なネット系IPOディールがなかった厳しいご時勢である2010-2011年において
コスダックも含めるとはいえ3社のIPOを出した
この一般的には知られざる「CAモバイルの投資部門」に関して、本稿で迫りたいと思います。
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■①:CAモバイルとその投資部門
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ネット業界関係者であれば聞いたことがあるとは思う「CAモバイル」。
名前で察しがつく通り、サイバーエージェントの子会社であり
AmebaでCA本体が単体で黒字転換を果たすまでは
ECナビ、CA FX、ネットプライス(今は連結対象外)などと並び
CAグループの売上高、営業利益を支える「4大子会社の1角」として名を馳せておりました。
(「4大」としましたが著者のなんとなくのイメージです)
知る人ぞ知る「未上場会社」というポジションだったと思います。
「CAモバイルが自社内に投資部門を持っていたこと」は
VCや起業家など一部のコアな層にしか知られておりませんでしたが
事業シナジーを追求しようとする姿勢があり、多くの投資検討案件を抱えていたそうです。
聞いた話によると「デューデリが厳しい」などの評判があったそうです。
*VCのデューデリが厳しいというのは企業側は多少めんどくさいですが
それだけしっかり見ているので良いことだと思います。
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■②:CAモバイル投資部門の特徴
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twitterやFBが浸透する時代となり独立系ファンドも増えてきたこともあり
「顔が見えるキャピタリスト」が増えてきた中で
なぜかあまり表舞台に出てこない「謎のK氏」が率いる部隊でした。
「謎のK氏」は多数のトラックレコードがある「業界的には名の知れた人物」のようです。
話を伺ったところ、この「謎のK氏」率いるCAモバイルの投資部門は特徴が2つあったようです。
①:事業シナジーを追求することによる明確なマーケットでの立ち位置。
②:しつこい(粘り強い)こと。
CAモバイルの投資案件が活発だったのは2007〜2008年頃と聞いておりますが
当時は(いや、今もだと思います)事業シナジーが期待できるベンチャーキャピタルは皆無であり
これから伸びる市場である「モバイル」という分野において
事業シナジーありきでの投資を検討するCAモバイルはマーケットでは希有な存在であったかと思います。
現代のように独立系VCファンドや3大SNS企業などによる投資が活発でなかった時代に
金融系VCと明確な差別化により価値を提供しようとしていたのがCAモバイルの投資部門であり
そのマーケットでの立ち位置から、
他のVCやベンチャーなどから紹介での投資検討案件が数多く入っていたようです。
まさに「知る人ぞ知る」存在であったのかもしれません。
そして粘り強さも特徴としてあったと聞いており
ターゲットにした投資検討先に対する粘り強さは相当なものだと聞いています。
ベンチャーキャピタリストという仕事において
「しつこさ」が勝敗を分ける重要な要因であるかもしれないと感じました。
結構、投資案件って長期化しやすかったり「じゃ、次のラウンドで」なんてこともありますから。。。
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■③:今後も求められるCVCとその難易度
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このCAモバイルの「事業シナジーを追求するCVC」であることにより
出資を受けるベンチャー側から見ると
明確な差別化ができていたようにみえるという観点でも
今後も同様にCVCの需要は大きくあることが想定されます。
CVCは個人的にVC関連では最も興味がある分野なので
The Starupではより詳しく追っていこうと思っているのと同時に
もっと多くのプレイヤーが出てきて欲しいなとも思っています。
ニーズはあるのにCVCあるいはCVC絡みのディールが
出てきにくい背景としては下記が考えられます。
①:そもそもベンチャー投資に資金を回せて回収に時間がかかることを許容できる事業会社の数が限られる
②:社内の投資委員会で決裁を通すのが通常のVCよりも難しくスピードに難がある
③:事業シナジーを生み出せるプレイヤーの不在 or 事業部側への働きかけの難易度が高い
そもそも①はその会社の経営判断となることなので
構造的にしばらくは安定的なキャッシュインが見込めて「一定の予算を投資に回せる余力があるところ」
経営陣が「回収するのに数年掛かるのがベンチャー投資のモデルである」と理解できており
容易に方針を変えないことが必要です。
その上で③はキャピタリストのプレイヤーとしての腕や全社的な協力体制を築けるかどうかが鍵です。
CVCはかなり難易度が高いんですよね。。。
普通の金融系のVCと違うのが特に「投資後の事業シナジーを作るところ」であり
その実務は高度な調整力や発想力を必要とする難解なものです。。。
とあるCVC関係者筋からお話を伺ったところ③の事業部側への働きかけの難易度は相当に高そうです。
ただし、CVCが投資先のサービスを事業シナジーで伸ばすことで
より多くのベンチャーの成功確度が上がるのであれば
かなり極論ですが国策としてやってもいいくらい価値があると個人的には思っています。
例:事業シナジーを追求するベンチャー投資をやっているところはキャピタルゲイン税を下げる、など。
出資を受けるベンチャーから見れば
売上や会員数の伸びという事業シナジーが見込めるCVCがあれば
かなり魅力的に見えるかと思います。
CVC側が状況を整備するのは難易度はとても高いと思うのですが。