クリスアンダーソンの新著「MAKERS―21世紀の産業革命が始まる
」をサクッと読みました。本誌の読者にクリスアンダーソンの説明は不要として、なぜ2012年に「MAKERS」という概念を提唱してきたのか、少し考えたい。
■1:金融⇒メーカーへの回帰?
2000年代はリーマンショックに代表される金融の世界が力を持っており、力を持ちすぎて破滅した方向へ進み、現状では解体の方向へ向かっています。UBSの大規模リストラはまさに外資系金融の終わりとも言われていたりもします。資本主義に関する疑問も呈され、私も先週の会食では資本主義の恩恵を受けた知人から「資本主義に飽きた」という話を聞きました。金融の次のモメンタムの提示としての「MAKERS」である気がします。
■2:大規模製造業ではなく「モノのロングテール」を可能にする小規模メーカーが多数出現
今回の「MAKERS」ムーブメントと過去のメーカーの違いは、大規模製造業が流行るのではなくニッチな小規模メーカーが多数出現するという構造にあります。「モノのロングテール」がキーワードになっています。
■3:モノのロングテールの実現を後押しするEtsyとKickstarter
本書ではモノのロングテールを後押しするプラットフォームとしてEtsy、Kickstarterについて事例を交えた説明が載っています。日本国内でも共に有名な両サービスですが、Etsyはハンドメイド品のプラットフォームとして、Kickstarterはとりわけモノを作って販売する必要がある事業の初期の資金調達(予約販売と市場調査の役割も多分に果たす)のプラットフォームとしてスケールを続けています。
ニッチなモノを作りたいという社会的ムーブメント(金融的発想での儲けたいというよりかは、それに逆行した「好きなモノを作ってそれが誰かに受け容れられると幸せ」というささやかな心理に思えます)と親和性の高いEtsy、Kickstarter。こうした社会トレンドに乗っているサービスはまだまだ伸びるのだろうと思います。有名な話ですがPinterestの初期の立ち上げはひたすらEtsyの画像でトラフィックを稼いだとも聞きます。
国内ではKickstarterのようなクラウドファンディングはCamp fireとReady for?が2強で走る時代だが、Etsy的サービスの代表は思い浮かばない。一時期は乱立に見えたが、現状では立ち上がっていないと見ることもできるだろう。下記の記事を昔書いたが、Groupon戦争ほどの盛り上がりを未だ見せていないしそこまで国内で盛り上がる気は今のところしない。
参考記事:国内で乱立するEtsyクローン。その結末はGroupon系と同じ道を辿るだろう
モノのロングテールのムーブメントはどれくらい大きくなるのか、いつまで続くのかはわかりかねますが、ポスト金融の次の大きなトレンドの一つになる可能性は高そうです。モノのロングテールを後押しするようなスタートアップに張るというのは時代との親和性も高く、ありでしょうね。
ちなみにEtsy、Kickstarter両社ともNYが本拠地です。昨今NYのスタートアップシーンが盛り上がりを見せているようですが、ウォール街からスタートアップに人材がどれだけ移ってきているのか(それとも全く移っていないのか)興味深いところですね。
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