ひふみ投信のレオス・キャピタルワークスのネット銘柄ポートフォリオ分析

Pocket


元スタートアップ企業が上場した後、株主はVCや事業会社から、個人投資家や機関投資家に入れ替わっていきます。

企業によっては機関投資家対策が上手い企業と下手な企業があり、その点は業績のみならず、上場後の株価形成の巧拙に繋がっていると感じます。

日本のインターネット企業に投資する機関投資家としては、英国のベイリー・ギフォードなどが有名です。参考記事:こちら

まずはデータが取得しやすいということで、国内大手ファンドのひふみ投信を運用するレオス・キャピタルワークスの保有インターネット企業銘柄についてご紹介です。

☆出典
レオス・キャピタルワークス第10期運用報告書:リンク
レオス・キャピタルワークスの大量保有報告書:リンク

そういえば、2018年12月にレオス自体がIPO予定でしたが、何があったか知りませんが、中止になっていましたね。

ogp_product

光通信・リクルート・ガンホーの3社で組入比率は5.9%

スクリーンショット 2019-05-08 16.15.02

例の如く小さくて読みづらく恐縮ですが、運用報告書にある普段TheStartupでウォッチしているような銘柄群のデータを抜粋しました。四季報に沿ったセクター分類って、納得いかない場合が少なからずありますね。

表の見方の注意点としては下記の通り。

1.青セル:2018年10月以降の株式分割を反映した数字になっているはず(他に株式分割反映漏れがあったらすいません…)
2.赤セル:5%以上保有を目立たせた
3.2018年10月対含み益:これはあくまで2018年10月時点評価額との差分であり、それ以前から保有している株に関しては当然もっと大きな利益ないしは損失が出ていると思われる。あくまで参考程度の指標

尚、2018年10月のレオスの運用残高は7,402億円であり、上記の企業群が占める保有割合は15.31%となります。2019年3月時点では運用残高(ひふみ投信マザーファンドと記載されてる)は7,591億円となっており、微増傾向。

ただし、ひふみマザーファンド7期(運用報告書では10期に相当)の運用残高は8,425億となっており、他のひふみプラスやひふみ年金を組み入れた額なのだろうか。この辺は素人の私にはよくわからない。

いくつかの傾向を紹介しましょう。

☆保有評価額100億以上の銘柄:()はその企業のレオス持分

光通信:158.9億(1.4%)
リクルート:141.5億(0.22%)
ガンホー:121.8億(5.43%)
マクロミル:100.9億(10.13%)

光通信、リクルートのようなほぼ時価総額1兆円超えの企業以外に、今さらながらのガンホーと、マクロミルがあります。マクロミルは現時点では時価総額は500億程度と、2018年10月時点の評価額から半減しており、50億程度の含み損です。

ちなみに、2019年4月発行の運用レポートでは、ひふみ投信全体に対する、光通信・リクルート・ガンホーの3社で組入比率は5.9%となります。

☆2018年10月までに売却した銘柄

ZOZO、ロコンド、ぐるなび

納得感あるラインナップですが、ZOZOをしっかり売り切っているのはすごいですね。そもそもひふみにしては0.1%程度と大した持分ではなかった。

☆2018年度に新規取得した銘柄

インフォコム、ラクス、マクロミル、クラウドワークス、シェアリングテクノロジー、SOU、リクルート、RPAホールディングス、ソウルドアウト、メタップス、Fringe81

新規取得はたくさんあります。この中で分類していくと、リクルートはもっと取得が早くてよかった気がします。2018年IPO組からはRPAホールディングスとSOUを取得、RPAは最近好決算で爆上がりしましたので、保有比率が0.89%なのが寂しい。

シェアリングテクノロジーは去年一瞬盛り上がりましたが、もう旬は過ぎています。メタップス、Fringe81などはしばらく塩漬けなのでは。

他の保有銘柄に対するツッコミとしては、ほぼ日やBEENOSのような毒にも薬にもならない銘柄は、バリュー投資的にいつか上がるのを待っているのか?

セプテーニ、オプト、ソウルドアウトの3社共持ち株比率4%程度で、サイバーエージェントも持ってる。広告代理事業が好きなのか?大したアップサイドあると思えないけど。

インフォコムやデジタルアーツという、TheStartupでもカバーしていない老舗企業は、取得時期がかなり前であれば、それなりに良いリターンが出ていそう。

案外、新興企業に張っていない印象があるが、UUUMは段階的に取得して7%持っており、UUUMもそれなりの含み益があると思われる。

2019年度の新規取得:グノシー、マネフォ、ACSL

スクリーンショット 2019-05-08 17.24.03

続いてこちらは、2018年10月以降に動きがあった銘柄。「当期取得額」は報告書提出の内容にある報告義務発生日の株価の終値とかをざっくり参照した上で算出したり、報告書に記載のある取得額を適用。

大量保有報告書がソースなので、実際に5%以下の動きや、もともと5%以上保有していた銘柄の減少は報告されますが、保有5%以下の銘柄の売却や新規取得に関してはカバーしていません。

既存銘柄のSOUを追加取得し、Fringe81とセプテーニを少し売却。セプテーニは前期末からは増えていますが、直近では売却されています。セプテーニは2018年11月に電通からのTOBを発表していますが、TOBに多少応じたのかもしれません。2018/11/15に1.28%売却しています。

新規取得は、グノシーとマネーフォワードという、マザーズで比較的注目された銘柄と、2018年12月上場のドローン銘柄のACSLの3銘柄。

グノシーは取得直後に下方修正があり、現時点では含み損を抱えています。2019年3-4月にレオスは約10%を取得。マネフォは5%ですが、ACSLは7.8%も取得しています。

逆に、取得されていない銘柄についても考えてみましょう。水面下で、5%未満で取得しているため、まだ顕在化していないだけかもしれませんが、ここ半年くらいで株価の動きが良かったのは下記のような銘柄でした。

老舗組:楽天
そこそこ新興組:エニグモ、アトラエ、ウォンテッドリー、レアジョブ、オロ
2018年IPO組:メルカリ、ラクスル、ベルトラ、Amazia

年初来で楽天は1.7倍、メルカリは2倍近いです。2018年12月の相場クラッシュ時ではなくとも、楽天は長らく株価が不振だったので、楽天あたりを仕込むのは規模も大きい銘柄なのでアリだったのではないかと。

BEENOSやほぼ日のような動きのない銘柄に20億程度突っ込むなら、他に動きありそうな銘柄に突っ込むとか。。流動性がなさすぎて売れないのかもしれませんね。

おまけ:TATERUでの投資損失は91.78億円?

最後におまけですが、2018年9月に売却し切ったので、運用報告書に記載がなかったTATERUについて。ZOZOなどは運用報告書に記載がありましたが、TATERUに関しては2018年の期中に取得・売却したので、期初と期末の比較必要性がないということで、報告書に記載がなかったと思われます。

☆TATERU
取得:2018/5/31 5,162,000株・取得比率5.99%・取得額110.5億円(推定株価2,141円)
売却:2018/9/14 全保有株式・売却額18.7億円(推定株価363円)

あくまで株価は報告義務発生日の終値を記載しているので、実際は多少異なるかと思います。

2018年9月の「融資資料改ざん事件」で株価が暴落していた時期でした。

スクリーンショット 2019-05-08 18.31.47

綺麗な高値掴みでしたね…。実は2018年9月末には700円台まで反転しているんですよね。売却タイミング、本当に難しい。その後は徐々に沈んで、現在の株価が257円で、年初来高値でも341円。とっとと売っておいて正解ではあったかと思います。

しかし、ひふみ投信はTATERUで約90億の損を出したわけです。実は私もひふみ投信に毎月積み立て投資していますが、パフォーマンスがウェルスナビより全然悪いんですよね。7,500億の運用額に対して90億の損失は1.2%程度とはいえ、ひふみのパフォーマンスが悪いのはTATERUと関係していたということを、今回の調査まで気づいていませんでした。

読者の皆さんも同様に、気づいていない人が多いのではないでしょうか?大した額を運用していないのであれば、レポートを読まない人も多いと思うので。

ちなみに、米国株も組み入れていて、ファンド全体に対する比率は13%程度と少ない。下記が主な銘柄。

スクリーンショット 2019-05-06 15.42.38

ネット系でいうと、セールスフォース、アリババ、テンセント、フェイスブック、マイクロソフト、アマゾン、ネットフリックスなどです。しかも、2018年中に新規取得した銘柄が多いですね。マイクロソフトとアマゾンのみ追加取得。

スクエアとかアトラシアンとか、そういうグロース株はないんですね。。米国小型株の保有がなぜないのか(記載がないだけ?)を知りたいですね。

以上です。ひふみ投信が保有してるネット企業って具体的にはこんな企業群なのね。という話でした。

取引が終了していない銘柄に対して、特に何もいうことはなく、せいぜい損切りで確定した「TATERUやっちまったね!」というくらいです。レオス銘柄の今後の不沈同様、レオスが組み入れていない銘柄は何か。どういうロジックで組み入れていないのだろうか?などを考えていくと、面白いなと感じます。



Pocket

コメントを投稿する

「ひふみ投信のレオス・キャピタルワークスのネット銘柄ポートフォリオ分析」に対してのコメントをどうぞ!