セッション名:
大型資金調達したスタートアップが狙う次の一手スピーカー:(敬称略)
加藤勇志郎(キャディ)
倉富佑也(ココン)
吉兼周優(Azit)モデレーター:
田中良和(グリー)
まずは大型調達ということで、各社の直近の調達ラウンドをご紹介。
キャディ:10.2億円(2018/12/14)参考リンク
ココン:28億円(2018/10/5)参考リンク
Azit(CREW):10億円(2018/9/3)参考リンク
各社の資金調達の思惑と裏側
各社の事業概要は割愛します。各リンク先でどうぞ。
Q:資金調達の際のポイントは
加藤:どれだけVCの目線が高いか。1兆円規模の企業で、世界を目指したい。我々の目線をどう上げていただけるか。
田中:目線が合わないVCってそんなにいるのか
加藤:本当に世界を目指しているVCは日本には少ないと思う。当社の株主であるDCMは米国拠点でグローバルの知見がある。資金調達活動は、ヘビーな採用活動と捉えていた。
倉富:総額41億円調達している。3-10億円程度のM&Aを何件かしている。資金調達は自社事業ではなくM&Aに使っている。借入もあるが、総額で26億円くらいM&Aに使っている。
田中:資金調達活動で資金用途をM&Aですと言って、話が通じるのか?
倉富:出資をいただいて再投資するので、だったら(ココンの見込み投資先に)直接投資したいというVCもいる。
田中:M&Aで拡大というと、なんとかザップという会社がありますが…
倉富:M&A対象先はEBITDA1倍以上をミニマムにしている。赤字会社を立て直すとか、マルチプル高い会社はPMIコストが高く難易度が高い。過去に8社小規模M&Aをしているので、問題なく成長ができる範囲の会社に対象を絞っている。
吉兼:長期目線で何をすべきかを把握してくれる投資家じゃないと、認識がずれてしまう。2019年1月には安心安全対策でサービスを停止していた。こういう意思決定を許容してくれる投資家じゃないと難しい。株主は誰も反対しなかった。
田中:ファイナンスは大変か?本当にその価格でEXITできるのかと投資家も思ってくると思うが。スタンダードな考え方のVCだとついてこれなくなると思うが。
吉兼:毎回大変で、モビリティは資金を投下し続けなきゃいけない。株主が増えていくと、調整や交渉コストは調達ラウンドが進んでいくと大変になっていく。新しい考え方の投資家じゃないと難しく、利益で見られると難しい。成長率や流通総額で見てバリュエーションしないといけない。
エンジェルは理解を得られやすいが、VCで理解していただけるのは少ない。事業会社はまた視点が違い、実社会に必要なパーツの一つと捉えられているので、需給が一致したりする。
ダイリューション(希薄化)をどこまで気にするか?
Q:資金調達は無限にパターンがあるが、各社どういう戦略を持っているか
倉富:初期はバリュエーションが高くなければビジョンと熱量で出資をいただけたが、後半になるにつれて、複数の事業があると、EXIT時にどれくらいのバリュエーションで投資家が求めるIRRを満たせるかをロジカルに説明できることが求められると感じている。
田中:今後もM&Aのために資金を集めていくのか
倉富:必ずしもそうではない。現在はフリーキャッシュフローから投資をしている。
吉兼:ダイリューション(希薄化)は一切気にしない。お金がたくさん必要なビジネスモデルなので。財務的な話ではなく、事業のポジショニングでバリュエーションが決まっている気がする。調達時には法律と海外のプレイヤー大丈夫なの?という2つをひたすら質問される。モビリティという大きい市場の中でのアーリーステージのプレイヤーと見られている。
田中:私は上場しても50%以上保有しているのですが、ダイリューションしていってもモチベーションを維持する秘訣は?
吉兼:ほとんど金銭的な欲求がなく、アセスメントを受けたら偏差値20くらいだったw EXITしても金銭的リターンにはあまり関心がない。この領域をやりきらなきゃいけない使命感があり、そのモチベーションがほとんどだと感じる。社会的責任を背負っているビジネスが好き。Airbnbの考え方が好きですね。
加藤:前回ラウンドは自分でほとんどやったが、投資家的な目線で考えるというのを社員教育の観点でも必要だと感じる。自分だけではなくそれぞれの経営陣が経験することは大事だと思う。
田中:ダイリューションについてどう考えているか
加藤:会社全体をどれだけ大きくするかが重要なので、ファイナンシャル的なダイリューションはあまり気にしないが、意思決定権は考えている。上場後の持ち株比率の想定などはある。
各社の今後の調達イメージ
Q:これからいくらくらい集めていくのか
吉兼:何百億単位で使わないといけないので、できるだけ集めたい。今調達中のラウンドが大きめなので、その次のラウンドは国外から考えないといけないと感じている。国内で自分たちと同じような戦略をとっている企業はないので、自分たちで考えるしかない。
倉富:次は60-100億円調達したいと思っている。伸びる確信やストーリーはあるので、それに乗っていただける投資家がいるからこそ実行できる。
田中:何社からいくらずつ集めるイメージなのか。1社で数十億投資できる大企業やVCは少ないと思うが。
倉富:海外のファンドはミニマム30-40億円なので、その辺にも相談している。事業シナジーがあるところは額に関わらず、資本提携はしたい。長期保有を前提としていただけそうな投資家からお声がけしている。
加藤:投資の仕方がAmazonに近いので、拠点を幾つか作る必要があり、次のラウンドは数十億単位になる。グローバルの進出をするときには、3桁億円規模の投資が必要となる。フォローオンでついてきていただける投資家が好ましい。商社やメーカーからも関心をいただいているが、中立性が大切なビジネスだと思っている。
梅木感想:ウメキワークスをもう3年もやっていたり、国内の資金調達状況は6-7年ウォッチしてきましたが、ここ数年さらに調達額が巨大化しています。エコシステムとして業界全体への投資額が増えていて、調達の巨大化自体は良いと思う。
ただ、EXITを今までの基準のみを元にして考えていると、理解し切れない案件も増えている中で、投資家側の柔軟性も求められてくるだろうと改めて感じました。従来のみの基準、Azitの吉兼さんが言っていたような基準にはなりますが、そこに縛られると、ユニコーンになる企業への投資機会を失ってしまいそうな気がします。