最近は編集者としてコンテンツのことをよく考えます。
ぶっちゃけ、TheStartup上で書きたいことはかなり減ってきていて、もう役目は終えたのではないかと思ったりしてきているのと、スタートアップ市場に結構飽きてきた自分もいます。
という言い訳は置いておいて。
一応昔から、コンテンツの「強度」をうっすらとではありますが考えてきていて、よってニュースリリースのコピペとか、他のスタートアップ系メディアが出している記事の類似品は一切やらないと決めています。
あっ、そう。と思われる程度のコンテンツでは意味がない。逆に、強度の高いコンテンツとは一体なんなのだろう。
◼︎強度の高いコンテンツ4つの要素
①:オリジナリティ。他のメディアではまず読めない。
②:中毒性と再読率。同じ記事であってももう一度読み返したい。
③:想起力。一度読んだだけである程度の内容を人に説明できる。
④:コミュニケーションの起点となるか。そのコンテンツをネタにコミュニケーションが生まれる。
一応「記事」ベースの話にはしていますが、あらゆるコンテンツビジネスに置き換えられる要素だと思います。
①のオリジナリティのあるコンテンツに人は惹かれる。似たような記事を他でも見たよね?という場合はそのメディアへの定着率は上がらない。大抵のキュレーションメディアが死んでいくであろう最大の理由は「オリジナリティがないこと」に尽きると思う。業界トップのキュレーションメディア以外は、じわじわと死んでいくと思います。圧倒的なコンテンツ量でブランドを確立したMERYのようなところ以外は、オリジナリティもない場合ば二番煎じで終わり、大した利益にもならないでしょう。
そういったオリジナリティの高いコンテンツは、何度でも読みたがる人がいます。②の再読率はそういった指標。メディアをリピートする、定着するという話ではなく、同じ記事をついつい再読してしまう。一度読んだんだけど、印象が強すぎてもう一度検索して読んでしまうとか、そういう話。中毒性の高いコンテンツとも言い換えられます。不朽の名作は、中毒性の高さや「もう一度読ませてしまう何か」を持っていることが少なくないと思う。
③と④は少し連動しています。③は一度読んだり見たりすればその話を大枠は覚えることができ、その結果人に伝達しやすい。ただのニュースであればどのメディアが報じても同じ。「ママリがKDDIに買収されたってよ!」と伝える時に、TechCrnchで見たかTheBridgeで見たかなど読者はあまり覚えていないでしょう。一方で「ママリが買収されることをTheStartupは2015年中に予測していた」という話の方が、覚えてもらいやすいのではないか。
「あのメディア」では「こんなこと」を言っていたというのが、ワンセットで伝わるのが理想だと思います。コンテンツだけではなく、メディアも一緒に覚えてもらいやすいから。
最後に④のコミュニケーションの起点となるコンテンツか否か。これは我々世代(84年)にとってわかりやすい事例としては、中高時代に「昨日、あのドラマ見た?」的な会話を学校でするという話。強いコンテンツは、一人で咀嚼するのみならず、つい誰かと共有したい。
その心理が現代ではFacebookやtwitterでシェアするという行動で顕在化していますが、一方で「SNSではシェアできないけど、共有したい」というコンテンツもあるようで、それはLINEで友達同士で送り合うとか、直接会話している中で「あの記事見た?」と会話のネタにされるようです。
SNSでの記事の拡散は「こういう記事を読んでいると思われたい」というセルフ・ブランディング心理も僅かながら働きますから、そこよりも実際の会話の中でネタになるコンテンツ、オフラインでのバイラル性が高いコンテンツの方が、コンテンツとしての強度は高いのかなと思います。
最近、本当に毒にも薬にもならないコンテンツが粗製乱造されていると感じます。毒か薬のどちらかにならないと、全く意味がないと思う。会話のネタにされるようなコンテンツの含有率が高いメディアが、長く生き残るのだと思います。
コンテンツ量だけ莫大に増えていく現代において、確実に競争は激化しています。その中で勝つには、どれだけ強度が高く、読者の印象に残るコンテンツを作れるか。量で戦うのではなく。良質なコンテンツといっても、印象に残らなければ意味がなく、それは結果として良質とは言わないでしょう。
この記事を読んだ、メディアやコンテンツの作り手の方へ。
あの記事読んだ?読んだ方がいいよ!と思われる記事を作れていないのだとしたら、あなたはもうこれ以上記事を作らない方が良いのではないか。印象的なコンテンツを生み出せないのであれば、コンテンツ・パブリッシャーとしての才能はありません。早急な撤退をオススメいたします。