先日TheStartupで主催してきたネイティブアドサミットのレポートを。
各媒体の事例はオンラインで公開できないものもあったので、あしからず。
<パネラー>
長村禎庸(左:DeNA広告ビジネス部長:MERY)
荒川徹(右:グライダーアソシエイツCOO:Antenna)
白川 賢(真ん中:VASILY広告事業部長:iQON)
3つとも社名と媒体名が全く同じじゃなくて表記が辛い
<モデレーター>
梅木雄平(TheStartup)
私は東カレWEBのプロデューサーでもあるので、東カレWEBの拡販もちょいちょい話題に入れていきました。
ワンナイトラブではなく、継続出稿を引き出すコツとは
ネイティブアド=バナーではない媒体に馴染んだ広告、記事であったり、インフィードのような関連記事に埋め込む型であったり、トップに自然に入る動画であったり、という感じなのはみなさん把握しているかなと。
各媒体、若干特性が異なるので、中心となる商品設計も異なる。
MERY(キュレーションメディア):記事広告
Antenna(キュレーションアプリ):動画やO2O、記事ブースト
iQON(CGM):投稿型タイアップ
各媒体を一つずつ見ていくが、3媒体ともに共通するキーワードとしては「立体的」という言葉があった。噛み砕くと、単発の広告ではなく、自社の枠や記事という媒体の資産と、広告主側の資産を組み合わせることで、効果を最大化するためにレバレッジを掛ける。そういうプランニングのことを指すのではないかと感じた。
冒頭からいきなり下世話な話ではあるが、媒体側にとってはワンナイトラブ的な広告主の刈り取りではなく(焼畑とも言い換えられる)、継続的に大きな出稿額をいただくためには、立体的な取り組みで効果を上げつつ、営業的観点では出稿額を最大化していくという施策が重要であろう。
私も現在絶賛東カレWEBの広告営業中だが、ワンナイトラブ的なワンショットな売り方はROIが悪く旨みがないので、そういう売り方はしていない。広告主側は小さい予算から始めたがるが、小さい予算で中途半端に実施されるよりも、それなりの予算をいただいた方が、高いROIを出しやすい場合は構造的に多々有り得る。営業観点では「立体的な提案」というのは、今後明確なトレンドになるであろう。
だが、立体的な提案をするには企画力がいる。そして、それは代理店はほぼ有していない知見であり、媒体側が知恵を絞って直接広告主に提案していく流れはトレンドとして避けられないであろう。媒体とタッグを組んで広告主に企画を提案できる能力のない代理店は淘汰されていくと予測する。
MERY:自社媒体での完結ではなく、広告主の資産を活用
MERYは下記の記事でも紹介されている、サンスターのオーラルケアブランド「Ora2」の事例を説明されました。
参考:MERYとサンスターオーラツーがコラボ、「ネイティブアド」から「O2O施策」まで キャンペーン成功の舞台裏(アドタイ)
記事広告3本で25万PV。記事を出すだけではなく、店頭ボードでQRコードや商品シールなどを駆使し、記事から商品を認知するのみならず、店舗から記事を認知するというO2O施策が機能して、高い効果を出したようです。MERYの記事広告は1本180万円で想定PV4.5万なので、25万PVは大幅に上振れしており、広告主も満足いく出来だったのでしょう。
他の事例としては2015年10月にリリースしたばかりですが、パルコとのタイアップ。MERY内の対象アイテムに「LOVEボタン」を押すと、全国のPARCOで利⽤可能の商品券が抽選で100名様に当たるプレゼントキャンペーンのようです。
参考:⼥性向けキュレーションプラットフォーム「MERY」 パルコと、MERY 初の商業施設連動型「LOVE IT キャンペーン」を実施
2つともO2Oが絡んだ事例。ここからは私の雑感ですが、CPA指標の広告主はオンライン完結のECとかが多い傾向にある一方、ブランド認知指標の広告主はTVCMに出稿する企業群を見ても消費財や百貨店などリアル店舗を有する企業が多い。
ネットに限らず広告費全体で見ると、オンライン完結型ではない広告主の比率の方が高いわけで、ブランド認知指標がKPIとなる広告主は、広告主側の資産も活用した施策を考えることで、効果を上げることができるのではないか。MERYのこの事例は自社で完結するのではなく、広告主の資産を上手く活用した方が、双方にとって良い効果をもたらしそうなことを証明してくれている(もしくはくれそう)と感じました。
Antenna:レクサスとの年間契約で最低5,000万の出稿か
Antennaはレクサスとの取り組みがかなり大きくなってきているようでした。レクサスのプロモーションの戦略媒体に選定されている印象で、他のスマホ媒体と比べてもレクサスのAntennaへの力の入れっぷりは異常です。Antenna内にレクサスアカウントがあり、動画を定期的に流していますね。
2015年4月から記事と動画が月間3〜4本程度投下されており、レクサスの動画はけっこう露出回数を確保すべく、トップなどの露出枠で積極的に露出させている印象。おそらく、年間契約かと思いますので、月間3〜4本の露出と考えると月間のレクサスからのグロス売上最低500万、アップサイドでは1,000万くらいあるのではないかと本誌では推測します。よってレクサスは年間最低5,000万はAntennaに出稿しているのではないか。
Antennaのメニューは、トップ枠を販売しての記事ブーストや動画のみならず、WIREDカフェを絡めたO2Oもあり、選択肢の幅が拡がっているのも魅力です。MERYに引き続き「O2O」というキーワードを荒川氏は説明していました。
私の雑感としては、レクサスとAntennaのように、広告主は戦略的にこの媒体に長期出稿するというのを決めた方が、様々なメディアに広告をばら撒くより、最終的なROIは良いと思います。レクサスはAntennaにいるような感度の高いユーザーを自社の潜在顧客と位置づけ、そこでの接触頻度をあげようという目論見なのでしょう。
広告主側にとっては、どの媒体であれば自社の商品の相性が良いのか。相性が良い媒体と年間を通して二人三脚で取り組み、効果を最大化するにはどうすれば良いか、ということを考えると良いと思います。東カレWEBでもそういった広告主をお待ちしておりますので、ぜひ私までご一報を。
iQON:ユーザー投稿型キャンペーンで好意的な評価
iQONはコーディネートを投稿するCGMサービスで、サービスが登場した2011年から本誌でも時々話題に挙げることがあったが、THE BRIDGEの取材ばかり受けているので、おそらく本誌では取材することはないだろう。
コスメのクリニークの事例を紹介いただきました。クリニークのカラフルなアイメイクを用いたコーディネートを投稿のキャンペーン。投稿件数は1,000件以上集まり、ブランドリフト調査でも好意的な評価を得ていたようです。特に若年層へアプローチしたい目論見があり、広告主はそこに手応えを感じたとか。
前述のMERYやAntennaと異なり、iQONはCGMサービスなので、ユーザー投稿と絡めることで、ユーザーがその商品を身近に感じやすい。iQONでのクリニーク体験を通した結果、実際に使ってみようとなり、店頭で買ってみるとか、そういう副次的効果が見込めそう。
ユーザー投稿型キャンペーンはInstagramがすごく相性が良さそうで、分散型メディアの概念でいうと、各媒体に載せるではなく、各媒体のInstagramのフォロワー数がかなり多く、リアクション率も高ければ、各媒体(というかブランド)のInstagramを広告商品化できるわけです。この辺はMERYは流石にわかっていて、綾太郎先生がいち早く仕込んだのか、既に36.9Kのフォロワー数。
iQONの項ですが、MERYの説明になってしまった。ちなみに私は「スケジュールが合わない」ということで綾太郎先生に取材拒否されたことを忘れません。
話を戻すと、Instagram対策はメディアにとって超重要で、来年は各メディアはブランド力をしっかり築けていれば、Instagramがキャッシュカウになると読んでいます。
CPAではなくブランドリフト指標の定着を
ネイティブアド市場は黎明期であり、各社試行錯誤しながら立ち上げている印象を受けつつ、長年のバナー広告ではない、その媒体のコンテンツとしてユーザーに馴染むフォーマット、動画であるとか記事広告、関連記事枠に関連記事を出すとか、そういったメニューの売れ行きが上がってきているなと肌で感じられたイベントでした。無料イベントのため、来ないというけしからん客も大勢いたものの、イベント申し込み自体は250名と、ネイティブアド領域への関心の高さも伺えました。
やはり効果指標はCPAではなくブランドリフトが主流となりそうでしたが、会場にはまだ「CPA!」という広告主が少なからずいたので、一生でCPAで消耗しやがれ!と本心では思っていますが、インフィード広告でぜひ出稿をお願いいたします。
ブランドリフトに関しては下記記事を今一度ご覧下さい。
・Antenna、動画広告は全体売上の2割程度。月商は1億を突破か?
CPAで消耗したい人はどうぞ消耗し続けてください。誰がなんと言おうが「CPAだけでROIを判断する広告主がはアホ」というのが私の主張です。副次効果を見るべきで、CPAのみしか見ないマーケターは怠慢ですよ。
グループディスカッションでは1,000万以上の取引が成立?
このような感じで、2部はグループディスカッションを。広告主、代理店、媒体を1人ずつ3人のチームを36チーム組んで、具体的なネイティブアドをその場で考えていただき、提案いただきました。大盛況っぽい絵です。
私の記憶に残っているところですと、たしかGMOペパボのminneさんがmeryに300万発注したりですとか、東カレWEBにサンマリエさんが出稿検討するとか。
これが「出稿するんですよね?はい、決まりです!」というモデレーターがオラオラと営業する絵です。この相当に強引な進行により、その場で「受注!」とか「取引成立の握手を!」とかさせていましたが、その後ちゃんと取引に結びついていることを祈っております。というか、東カレWEBの場合は受注できるよう私が頑張りますけどね。サンマリエさん、お楽しみに。
シンガポールから村マリさんが「パレットの旗を記事に映せ!」と圧力をかけてこられたので、DeNA社の水で本稿を締めたいと思います。企業のパッケージの水がこんなに良いオチで使われることなんてほとんどないと思いますけどね。
ご来場いただいた方々、並びにご登壇いただいた方々、会場提供いただいたDeNAのみなさま、ありがとうございました。全ては実は東カレWEBの広告を売るためだったんですよ。
ということで、私の最近の業務の一つに「東カレWEBの広告事業立ち上げ」があるのですが、私の仕事を引き継いでくれるというか、東カレWEBの広告をガンガン売ってくれる方を募集していますので、ご興味ある方はぜひ下記をご覧下さい。
私としては、ご登壇いただいたお三方のような人材がまさに欲しいんですよね!各媒体の営業に消耗したら。ではなく、軌道に乗ってまたゼロイチやりたいなとかあれば、ぜひお三方のご応募をお待ちしております。我ながらひどいオチですね。もちろん、ほかの方でもネット広告営業経験者で東カレ読者の方でしたら歓迎ですので、ご応募ください。そして私を助けてください。
・PVの伸びに営業立ち上げが追いつかない東カレWEB、営業部長候補を急募!
記事広告を単発で売るとかそういったものを仮にネイティブアド1.0とするのであれば、次のフェーズは本稿で挙げた「立体的」「O2O」「ユーザー投稿」など様々なものを駆使した提案がネイティブアド2.0となっていくのではないかという兆しを感じました。
注記:本稿は東カレWEBのネイティブアドではございません。私の通常業務の一環です。