敢えて出しちゃいますが、コンテンツ論として参考までにと。
本誌では意図的にスタートアップ以外のネタで定期的に「燃やしに行こう」として出すコンテンツがあります。面白いくらいにこちらの罠に綺麗に引っかかってくる読者のなんと多いことか。コンテンツ論の実験として最近は楽しんでおりました。
最近のTheStartupのコンテンツポートフォリオをまず解説しましょう。
・IPO分析(真面目・即日か翌日には出し、かつSEO対策も施す)
・データを軸にしたファイナンス関連(ガチガチ定量データから、ファンドリターン予測などふわっとしたものまで)
・上場企業決算分析(これもファクト。真面目)
・未来予測や業界分析(個別企業フォーカスではなく全体感を把握)
・メディア論(PV取れないけどメディア関係者は読む)
・炎上工学(栽培マン論や結婚、キャリアに関することなど)
The Starupは8割型真面目なメディアなんですよ。IPO分析とか、一切ふざけないこともありますから。残りの2割でふざけて遊ぼうというスタンス。
本題である「炎上工学」ですが、すごく簡単な数式から成り立っています。
炎上工学=「多くの人が関心を持ちそうなテーマ」×「極論」
以上。
少し前にイケダさんが住宅35年ローンの記事を出していて、かなりフィーバーしていましたが、あれなど炎上工学の数式に綺麗に当てはまるわけです。炎上工学がワークするために重要なこととして、記事では「極論」を主張するわけですが、その「極論」にも一定数同意する人がいるということです。同意できる余地が一切なければ、議論にならないんですよね。
不動産投資やローンに関して、本誌ではテーマにしたことはありませんが、「キャリア論」は最近だと「栽培マン論」が定着しており、人気を博しています。聞くところによると、巷にはキャリアコンサルタントに「ぼく、栽培マンになりたくないんです・・!」とこぼしている人もいるとか。明らかに一般用語じゃないはずですよね、栽培マン。
あとは結婚関連とかですね。先日の駐妻ゴールの記事もNewsPicksで予想通りの反応という感じでした。駐妻ゴールはスタートアップと何も絡めていませんが、キャリア論や結婚などの「大多数の人が興味を持つネタ」でもThe Startupでは極力スタートアップやインターネット企業ネタとの掛け算をすることで、他のメディアにはないであろうコンテンツに仕上げることを狙っています。
オチとしては、この「大多数の人が興味を持ちそうなネタ」って唯一の絶対的な解が存在しないことがほとんど。しかし、極論を出すとそれを思っていても言えなかった人は共感するし、真逆の意見の人はその記事の意見を潰しにきます。自らのアイデンティティーを守るためにね。その「反射的な意見」は本音だから、見ていて面白い。
炎上工学では極論を書く書き手のリスクはもちろんあり、場合によって5% vs 95%くらいで負けることもあります。そういう出来事が本誌でも何度かあったことは否定しません。しかし、そのメディアの一本の記事から多様な意見を誘発することで、コンテンツの拡張性をもたらします。その記事一本で「ふーん」で完結するのではなく、twitterやらNewsPicksやらで筆者も想定外の意見が出てきて「なるほどねー」と思うのが面白い。
そういった様々な論点を引き出せた時は、「炎上工学がワークした」といえると思います。ナイス・炎上なわけです。
残念ながら日本においては(私が帰国子女とかなわけではなく海外比較は伝聞にすぎませんが)意見の否定=人格否定と捉えられることが多い。梅木のAという記事には賛成だが、Bという記事に反対だ。というスタンスの人は國光さんとか、数えるくらいしかいない気がします。あくまで例としてですが、「梅木の記事だから、内容が何であっても反対だ」、こういったスタンスの人の方が多いように思えます。
ピュアな意見だけを見れずに、発信者が誰かによって自らの意見が大いに引きづられます。NewsPicksで堀江さんの「いいね。」などの短文コメントに「いいね!」しちゃうような人が最たる例でしょう。堀江さんを否定するわけではなく、堀江さんのコメントなら全てが「いいね!」と思っている人を否定しています。思考停止な栽培イエスマンなんだろうなと。
後半はやや愚痴にもなりましたが、ネット上で起きているメディア起点の炎上にも種類があって、メディア側が単純に掲載情報を間違えて報じたというものもあれば、この手の炎上工学の数式に綺麗に当てはまるものもあります。藤沢所長の恋愛工学もtwitterでカジュアルに燃えていてそれがまた人気を高めていますが、多くの人が興味を持つ「恋愛」工学の存在自体が、一定のクラスタからすると「極論」に思え、反論する人があとを絶たない。
しかし、それがメディアの面白さだと思います。100%アグリーなストレートニュースは消耗している大手メディアに任せて、拡張性の高いアジェンダを提示し続けること。そのアジェンダに対する様々な意見によって、自らも読者も思考を深めることで、結果的にメディアの独自性を強められるというのが、現時点での私の見解です。この「炎上工学」は自らも叩かれるという危険も伴うことから、担い手は多くはありません。幾多もの炎をくぐり抜けてきた、イケダさんや私の最大の競争優位性とも言えるかもしれませんね。
住宅ローン問題とか、アジェンダ提示であそこまで多くの人に再考する機会を与えており、コンテンツとして大成功だと思いますよ。イケダさんの意見に賛成か否定かとかはどうでもくよくて、「コンテンツ論としてみると」大成功です。
<次号予告>NewsPicksのコメントの9割がゴミ