2014年-2015年ネットIPO銘柄24社の公募→初値騰落率比較

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2014年-2015年8月時点での主要なネットIPO銘柄を分析(GMO子会社など主要と思われないものは割愛)。公募価格と初値の騰落率から傾向を見出します。

IPO

騰落率1位はアイリッジの567%、2位はイグニスの滝

主幹事 企業名 公募 初値 騰落率
野村 アイリッジ 32 183 567%
野村 イグニス 111 492 442%
野村 ロックオン 39 152 385%
野村 フリークアウト 120 421 350%
大和 カヤック 42 135 322%
野村 弁護士ドットコム 86 274 315%
大和 レアジョブ 22 59 270%
野村 メドピア 65 150 231%
大和 アドベンチャー 54 123 227%
みずほ 富士山マガジン 41 95 226%
SMBC日興 サイジニア 50 113 226%
SBI アルベルト 56 122 216%
SBI モバイルファクトリ 32 64 199%
大和 リアルワールド 68 121 178%
大和 クラウドワークス 95 165 173%
大和 データセクション 48 84 173%
SBI セレス 84 131 155%
野村 イード 67 98 146%
野村 Voyage 265 371 140%
野村 みんなのウェディン 205 261 127%
野村 エイミング 293 329 112%
SMBC日興 イトクロ 218 227 104%
野村 グノシー 332 332 100%
野村 gumi 945 945 100%

<注記>
・騰落率は±0で100%とし、2倍だと200%と表記
・「公募」「初値」記載数字はいずれも時価総額で単位は「億円」

まずは騰落率から。24社の中で公募価格割れは1社もなし。全体傾向としては、小粒案件(公募時時価総額100億以下)ほど初値が跳ねやすい。Voyage以下の下位6件はいずれも公募時点で200億規模です。騰落率が高かった公募時で100億以上の銘柄はイグニスとフリークアウトという佐藤祐介銘柄となりました。

ちなみに公募→初値の騰落率が高い銘柄は、俗に言う「イグニスの滝」となり、その後株価は大抵暴落します。初値が上場来最高値に。そんな中で、騰落率322%のカヤックは2015年8月18日現在の株価は初値より高く、時価総額は157億となっています。

ちなみに、初値が高くてその後株価が二度と初値の水準に戻らないこともIPO銘柄ではありえますが、これは必ずしも悪いことであるとは言えない気がします。初値が需給バランスが崩れて無駄に跳ねすぎただけであり、跳ねすぎたは常による時価総額がその企業の実力値を反映してはいません。数ヶ月から1年かけて、実力値に収斂していくはずです。

公募価格と初値の乖離をどう読むか?

まずIPO銘柄を購入した投資家側から見ましょう。たとえばアイリッジ株を公募で買った投資家は、初値で売れば5.6倍でかなり儲かるわけです。機関投資家は小さい株は買わないので、小粒IPO銘柄を買うのは主に個人投資家。傾向からすると50億前後の公募時価総額のIPOの場合は最低でも2倍に跳ねているので、個人投資家は初値で売り抜けるのであれば、そこを狙うのがポイント。

次に発行体の視点。発行体は公募価格と売出し株数の掛け算で資金調達額が決まります。ゆえに、初値が上がろうが下がろうが、自社の資金調達にか関係ない。よって、最大限資金調達をするためにより高い公募価格を付けるために、主幹事証券会社に頑張らせるのが肝です。その点、騰落率が低い企業は希望する公募価格を付けることができた結果、資金調達をしっかりできたと見ることができ、騰落率が高い企業は公募価格を主幹事証券会社に押さえ込まれたと見ることもできます。

上記の表に公募での資金調達額はレアジョブや富士山マガジンサービスは1億円代前半です。IPOして1億しか調達できないとか、切なすぎじゃないでしょうか。VCのEXIT圧力があったことを推測せざるを得ません。ちなみに公募での資金調達額の1位はグノシーで53億、2位はgumiの47億でした。

小粒IPOの騰落率はギャンブル的側面があります。騰落率が低い企業の方が、様々な賛否両論はあるでしょうが、資金調達力が高いといえるのかもしれません。

半分以上が公募時PER40倍以上、初値PER40倍以上は20社

企業名 当期利益 適用PER 公募PER 初値PER 下方修正
クラウドワークス 赤字 NA NA NA
gumi 8.08 申請期(2015/4) 117 117 1.91億
弁護士ドットコム 1.02 申請期(2015/3) 85 269
データセクション 0.7 申請期(2015/3) 69 120
みんなのウェディング 3.05 申請期(2014/9) 67 86 2.16億
サイジニア 0.8 申請期(2015/6) 63 142
リアルワールド 1.1 申請期(2014/9) 62 111
フリークアウト 2.06 申請翌期(2015/9) 58 205 0.9億
メドピア 1.27 申請期(2014/9) 51 119
アイリッジ 0.69 申請期(2015/7) 47 266
イトクロ 5.13 申請期(2015/10) 43 44
アドベンチャー 1.3 申請期(2015/6) 42 95
カヤック 1.1 申請期(2014/12) 38 123
イグニス 2.98 申請期(2014/9) 37 165
アルベルト 1.67 申請期(2014/12) 34 73
グノシー 10.01 申請翌期(2016/5) 33 33
セレス 2.57 申請期(2014/12) 33 51
ロックオン 1.37 申請期(2014/9) 29 112
富士山マガジンサービス 1,59 申請期(2015/12) 26 60
Voyage 11.1 申請期(2014/9) 24 33
レアジョブ 1.00 申請期(2015/3) 22 60
モバイルファクトリー 1.47 申請期(2015/12) 22 44
イード 3.21 申請期(2015/6) 21 31
エイミング 18.7 申請期(2015/12) 16 18

<注記>
・当期利益の単位は「億円」

続いては公募PER順です。クラウドワークスは申請期も申請翌期も赤字のためNAで。赤字のところに注目ください。実際のvaluationロジックはわかりかねますが、「申請翌期で算出した」と噂されるのはフリークアウトとグノシー。申請時の申請期予測の数字から結果が下方修正となったのは、gumi、みんなのウェディング、フリークアウトです。

公募時のPERが高ければ高いほど、発行体は有利な条件で(より大きな額の)資金調達ができます。インターネット企業のPERについては、時価総額1,000億以上だと20倍前後が多く(40倍付いているとバブるな印象)、200-1,000億の時価総額レンジだと、調子の良い企業で50-60倍付いていることはあるという印象で、「40倍前後」が多そう。

IPO銘柄に関しても40倍は一つの目安ラインな気がします。24社中、40倍を超えているのは11社。グノシーは申請翌期と仮定したので、申請期カウントすると40倍を遥かに超えます。30倍を切ってくると、事業領域ゆえ(富士山マガジンのECなど)期待値が低いセクターのためPERが低いか、成長性が期待できず低いか、という場合が多そうです。

振り返るとVoyageのPERが低すぎな気がするのと、gumiショックの煽りで確実にエイミングの公募時PERが下がったに違いないと読み取れます。

やっちまったなというのがフリークアウトで、申請翌期を適用してもPER58倍なのに下方修正したので、下方修正後のPERは132倍となってしまい、上場前に申請翌期でvaluation算出するリスクが高かったことを証明した結果となってしまいました。

大抵初値ではPER40倍以上に跳ねていますが、4社だけが初値PER40倍以下。申請翌期適用と思われるグノシーは申請翌期適用をすると40倍は超えず。初値PER31倍のイード、初値PER18倍のエイミングは2015年3月上場でgumiショックの直後で低かったと思われます。となるとVoyageの初値PER33倍のみが、イベントなしで初値で評価されにくかった銘柄といえる。

ざっくりですが、ネットIPO24社の傾向はこんな感じでした。PERについては下記の記事もご参考までに。

参考記事:インターネット企業の妥当なPER水準(TheStartup)

IPOの公募価格決定には発行企業と証券会社の力関係が見え隠れしており、味わい深いですね。



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