マクロミル再上場。公募時時価総額791億円、海外企業買収で成長加速か

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☆目次
1:公募時時価総額791億、当期利益41億を予想
2:TOB前後比較。4年で売上2倍、営業利益1.8倍
3:ヘルスケア領域への参入と、MetrixLab買収シナジーで利益押し上げる
4:結論。時価総額1,000億突破は十分可能

本記事は全て東証のマクロミルの1の部の資料のデータを元に作成しております。

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1:公募時時価総額791億、当期利益41億を予想

☆IPO詳細

公開日発行済株式総数:38,622,100株
想定公募価格:2,050円
公募時時価総額:791億円
公募株式数:487,800株
発行体調達額:9.9億円
2017年6月期2Q当期利益:18.5億円
2017年6月期会社予想通期当期利益:41.4億円
2017年6月期会社予想通期適用PER:19倍
主幹事:三菱UFJ
監査法人:トーマツ

かなり大型のIPO。市場区分「未定」です。1部か2部かの問題なのか。

マクロミルはベインキャピタルのTOBを受けて2014年4月25日に上場廃止に。当時のTOB総額は513億と言われている。

TOBから約3年で公募時時価総額791億。ベインキャピタルの現在の持分は82%。公募で58%を売り出し、450億のキャピタルゲイン。まずはTOB時の分は取り戻そうかという感じ。残り24%を頃良いタイミングで売って、リターン確定させるのであろう。

PEのMBOからの再上場案件、あまり私自身は見てきていないので(国内のインターネット企業だとあまり事例がない)相場観をわかりかねるが、10年単位で見るとリターン12.3%という記事もあり、様々な金融商品の中で最も高いという話もある。

会社予想通期当期利益41億を見込み、適用PERは19倍。業績に対して、公募時点での割高感はない。初値では1,000億規模に乗ることも十分ありえるだろう。

2:TOB前後比較。4年で売上2倍、営業利益1.8倍

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通期の業績を見ると2016年6月期は営業利益57億も出ています。2015年6月期は詳細は後述しますが、海外子会社の減損43億(営業費用として計上)が響いて5億の赤字。

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2017年6月期の2Qまで見ても営業利益は約40億。通期予想営業利益は68億。かなりの利益体質です。

ちなみにTOB前の2013年6月期は連結売上171億、営業利益38億でした。TOB前後と比較すると、4年で売上2倍、営業利益1.8倍ほど。ご立派なグロース具合です。どうやってグロースしたのか、次の項でセグメント別に見ましょう。

3:ヘルスケア領域への参入と、MetrixLab買収シナジーで利益押し上げる

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続いてセグメント分析。MetrixLabは2014年10月に170億で買収した、日用消費財(FMCG)をメイン顧客とするオランダのマーケティングリサーチ会社。しかし、2015年6月に早速43億の減損。減損、早いなw この規模になるとどんぶり勘定M&Aが増えるのだろうか。

MetrixLab単体の営業利益率はさほど高くなく、連結で見るとまだ足を引っ張っているフェーズともいえますが、「コストダウンメリット」が定量的にいかほどだったのかわからず、一概にこのM&Aはイマイチだったとはまだいえない。

それよりも本業の営業利益率が2016年通期から2017年2Qで5%upの25%まで伸びてきている点が気になります。資料によると要因は主に4つ。

1:マクロミルケアネットの順調な成長が大きく寄与
2:電通マクロミルインサイトを中心とした既存子会社も堅調に推移
3:グローバル・キーアカウント(大型顧客)の売上が好調に推移
4:MetrixLab買収によるグローバルパネルの調達コスト抑制や外注費削減が実現

1のマクロミルケアネットとは、「ケアネット社」と合弁で2014年12月に設立した医者や薬剤師向けの調査サービス。2016年9月にマクロミルが自己株式取得の結果、所有割合が85.1%に。

今までのマクロミルの主戦場がFMCGとすると、医療系市場への新規参入ということで、それなりの規模感の売上と利益が比較的早期に実現できたのかもしれない。上手い横展開といえる。

2の電通マクロミルインサイトの業績は2016年6月期は売上58億経常利益8.3億。マクロミル全社の売上の15-20%が電通経由であり、存在感の高さが伺える。

3と4はMetrixLab買収のシナジーといえる。定量的にはいかほどかは読み取りにくいのだが。中国などに子会社があるとはいえ、資料にはリサーチパネルは日本国内120万人、グローバル1,000万人とあり、グローバルでのパネル獲得に同社が大きな貢献をしたのではないかということは予想に難くない。パネルユーザー規模が、多少割高と思えた買収価格を吊り上げたと予想する。

4:結論。上場1-2年後で時価総額1,000億突破は十分可能

セグメント別業績を鑑みた上で、今後のマクロミルの成長性をどう見るか。

マクロミル自体は本体の復調と子会社の躍進があり、成長を遂げている。MetrixLabは「価格競争が激化する中グローバルで受注案件数を拡大」と記載があるが、その割に2017年2Qの売上は2016年通期と比較するとさほどの伸びではない。

基本的にはマクロミルのようなリサーチ市場は広告市場に左右され、大枠で広告市場自体が縮小することはなさそうであり、リサーチ市場も簡易リサーチ(マクロミルもクエスタントを提供)により低価格化が一定は進むと想定されるが、大企業においてマクロミルのような事業者によるリサーチ市場が急に縮小するとは考えにくい。

ネットリサーチ市場のシェアを高めるには、リサーチパネルの規模とプロダクトの多様性や営業マンのコンサルテーション力の高さが肝と本誌では考える。

リサーチパネルの規模拡大はMetrixLabを通して打ち手を打ち、今後もM&Aの意向を示している。プロダクトの多様性ではヘルスケア領域へ横展開し拡充している。コンサルテーション力は、資料からのみではわからない。

ネットリサーチ市場は、規模の経済が効きやすく、今後も一定の成長は見込めると判断する。

会社予想当期利益適用PER19倍だが、当期利益が50億、60億に乗ってくるのは想像に難くなく、そうなると時価総額1,000億の維持は十分可能。その後のアップサイドは海外展開次第ではなかろうか。

リスク要因としては、ベインキャピタルの残り保有株式売却で需給バランスが崩れて株価が下がりうる点と、海外市場拡大のために新たなM&Aに取り組んで、大きく失敗する点くらいと思われる。

よって、マクロミルは中長期での時価総額の推移は手堅い。初値バブルがあるかは読めないが、上場後1-2年で実力値で時価総額1,000億突破が可能な銘柄であると本誌では判断する。

☆2017.2.21 18時追記

本稿を読んだ読者の方から「国内ではインテージが競合として強い」というご指摘をいただき、「国内に強い競合はいない」という点を修正いたしました。

インテージは2017年3月期売上214億営業利益14億、20170221時点時価総額444億の企業です。マクロミルに規模は及ばないものの、ある程度のシェアは確保しています。

尚、国内のマーケティング調査市場は約2,000億円であり、マーケティング調査市場全体でみると、マクロミルのシェアは12-15%ほど。インターネットリサーチに絞ると600-700億の市場規模。マクロミルはインターネットのみではなくオフラインリサーチもやっているでので、シェアは単純に出せないですが。

ちなみにご指摘いただいた調査関連事業の方曰く、調査市場はグローバルでは米国が強くシェアを半分近く持っており、中でもニールセンが強いとのこと。マクロミルも、グローバルでどこまでシェアを伸ばせるかが、今後の大きな成長のポイントではないかと思われます。

ご指摘、誠にありがとうございました。

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・ロコンドが上場。公募時時価総額は85億円。未上場最終ラウンドは63億円。プロダクトのポジショニングに疑問符:URL
・「ほぼ日」が上場。60万冊売れる「手帳」が売上の7割。公募時時価総額51.7億:URL
・シュフティのうるるが上場。クラウドソーシングだがBPO事業の伸びで急成長:URL
・クラウドERP・ZAC提供のオロが上場。実は買切りライセンス比率が高い?:URL

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