公募売出比率と公募時時価総額と初値騰落率の関係

Pocket


最近、ラクスルの上場承認が降り、私もウメキワークスで軽い分析記事をご紹介しましたが、公募時の売り出し比率の高さに注目が集まっている気がしました。

そこで、2014年以降の国内インターネット銘柄約71社(子会社上場などは除く)を対象に、発行済株式総数に対する公募と売り出し株式数の比率(上場時に市場に株式が出回る比率、流動性比率ともいえます)と公募→初値騰落率の関係を調べてみました。

PEファンドが入っているなど、外部株主比率が異様に高い場合もあるでしょうが、公募売り出し比率(=上場時の株式供給量が)高いと、新規投資家の需要を持て余してしまい、初値は高騰しづらいだろうというのが、調査前の仮説です。

結論としては、公募売出比率と公募時時価総額の二つの変数で見ると、初値騰落率の傾向が掴めるという感じでした。

公募売出比率 公募時価総額 初値騰落率 N数
高め(30%以上) 1,000億前後 公募割れ 2
高め(30%以上) 100億〜500億 1〜1.4倍 3
高め(30%以上) 100億以下 1.2〜4.3倍 5
普通(20%〜30%) 1,000億前後 0
普通(20%〜30%) 100億〜500億 公募割れ〜4.4倍 9
普通(20%〜30%) 100億以下 1.3~5.1倍 25
低め(20%以下) 1,000億前後 1.5倍 1
低め(20%以下) 100億〜500億 1.5〜10.8倍 10
低め(20%以下) 100億以下 1.5〜5.6倍 16

☆注記
売出比率普通&100億以下は初値2倍以上が16社(比率64%)
売出比率低め&100億〜500億は初値2倍以上が5社(比率50%)
売出比率低め&100億以下は初値2倍以上が13社(比率81%)

IPO市場ではよく知られていることではありますが、「公募売出比率が低く(発行済株式総数の20%以下)」「公募時時価総額が低ければ低いほど」「初値騰落率が高い」ということが、データからわかります。

こういった傾向はあるだろうくらいなことは、リテラシーの高い読者の方であればご存知なことでしょうが、実際に生データに当たってみた結果として、やはりそうであった。というのが、本稿でのご紹介の意義です。

どの組み合わせが公募に対する勝率(公募割れしない)が高いのか、その勝率はどれくらいなのか、何倍くらいになる場合が多いのか。というのが、多少なりとも意義あるデータかなと感じました。

shutterstock_396286045

公募売出比率30%以上の銘柄:10社

社名 流動性 公募時価総額 騰落率
ビーグリー 88.8% 11,052,896,000 100%
マクロミル 66.9% 78,175,315,000 91%
gumi 47.6% 94,592,850,000 100%
モバイルファクトリー 47.4% 3,217,972,500 199%
うるる 41.8% 8,661,432,000 117%
Voyage 39.5% 26,541,840,000 140%
はてな 32.7% 1,856,400,000 432%
グノシー 31.1% 33,254,560,000 100%
マイネット 30.7% 5,382,552,000 119%
ロコンド 30.5% 8,582,797,600 158%

上記のデータを以後引用していきますが、見やすいようにシンプルに本稿に関連する箇所のみ抜粋して紹介しています。時価総額の単位は円、騰落率は100%=公募と同じ、という見方です。

10社が公募売出比率30%超えですが、そのうちの3社がPEファンド案件です。

社名:筆頭株主名(公募時の持ち分比率)

ビーグリー:リサ(76%)
マクロミル:ベインキャピタル(82%)
Voyage:ポラリス(46%)

これだけ持っていれば、それなりに売り出しに応じる必要はありそうです。

これは要議論な論点なのですが、公募売出比率が高いと、初値騰落率が低く、上場直後の株価形成に悪影響を及ぼす場合があります。

もちろん、初値騰落率が高すぎるのが良いというわけではないですが、上場時に公募価格を割ってしまうと、その後個人投資家を呼び込みにくいと思われます。

現に、このセグメントの10社の株価チャートを見ると、ボラティリティが激しく(局所的に高値になることもある)、綺麗に右肩上がりの株価になっている企業は少なく、上場直後は言わずもがな、中長期的な株価形成においても有用とは言い難い結果となっている気がします。

公募売出比率が高い企業は、外部株主の保有比率が高い企業がほとんどです。売出比率が高い場合の言い分としては、上場後も特定の外部株主(主にVC)の持ち分が多いと、潜在的な売り圧力があり、株価が下がる懸念から、買われにくいのではないか。という主張があります。

それも一理あるとは思うのですが、結果的にこのセグメントの10社の株価形成は、比較的右肩上がりに綺麗になっていたのはマクロミルとグノシー(最近S安でしたが…)くらいです。

このセグメントの企業が、仮に公募売出比率がもっと低かった場合、中長期で株価が安定的に上がっていったかどうかは、結果論的にはわかりかねますが、少なくとも公募売出比率が高いことは、中長期的な株価形成においてもあまり良い結果を及ぼしていないという傾向が、少ないデータではありますが、読み取れるかと思います。

公募売出比率10%以下の銘柄:4社

社名 流動性 公募時価総額 騰落率
UUUM 9.9% 12,304,100,000 327%
レノバ 6.6% 13,651,200,000 150%
HEROZ 5.9% 15,002,275,500 1089%
Wantedly 3.3% 4,572,700,000 501%

レノバってネットじゃなくね?というツッコミは無視してですね(おまけ的に入れました)

公募売出が10%以下という企業は、今回調査対象の71社中4社でした。

上場=外部株主や創業者の利確である側面はありますが、上場後の方がロックアップ解除され公募価格より高値で売却できるため、特に時価総額が公募で低い場合は、既存株主は公募価格で売らず、タイミング次第ではありますが、上場後に売った方が高いリターンを確保しやすいです。

レノバ以外の3社は元々外部株主比率がさほど高くなく、3〜10倍程度の初値騰落率となっています。

特にHEROZの初値騰落率10.8倍は日本のIPOの歴史上、最高倍率だったようです。

騰落率が高ければ良いというわけでもなく、流動性が低すぎたことにより、需要に供給が追いつかず、ミスプライシングになったしまったともいえます。案の定、HEROZは初値から上場5日後にはほぼ半値に下がっています。

とはいえ、初値から半値くらいになるのは、短期的にはさほど珍しいケースではない気がしますが。

このセグメントの上場後の株価形成ですが、N数が少ないので傾向をコメントするのはやや難しい気がしますが、流動性が低すぎるため出来高が伸びにくそうです。

あと、一部に鞍替えする際に、創業者の一定量の売り出しがあるはずで、一部上場後は流動性が極端に上がり、需給が安定せず、鞍替え後に株価が下がりやすくなるリスクはありそうです。

公募売出比率30%以上と10%以下という異常値のみ抜粋して紹介しましたが、その中間の大部分の企業(調査対象71社中57社)は概ね記事の冒頭に記載したような傾向と把握すれば良いかと思います。

本誌は株式投資メディアではないですが、一定の傾向を掴んでおいて損はないであろうということと、公募売出比率とその後の株価形成の論点は、上場を意識している多くのスタートアップ経営者にとって有用な論点であると感じました。

事業内容によって、多額の資金調達を要するものとそうでないものがあるでしょうが、さほど希薄化せずに創業者の持ち分が高いまま上場し、公募での売出比率も抑え、徐々に市場で売っていくというのが、株価が安定しやすそうです。

需給を鑑みると、業績が右肩上がりであることはもちろんですが、株価チャートも右肩上がりの設計をしやすく、そういった銘柄の方が短期トレード目的ではなく長期保有目的の投資家を誘引しやすいのではないでしょうか。

以上です。

外部株主比率が高い企業が上場する際、公募売出比率は何割くらいに設計するのが中長期的な株価形成に好ましいのか、色々な意見を聞いてみたいですね。

IPO分析記事は、ウメキワークスで今後も販売していくので、個別銘柄にご関心のある方は是非。



Pocket

コメントを投稿する

「公募売出比率と公募時時価総額と初値騰落率の関係」に対してのコメントをどうぞ!