「Hooked ハマるしかけ」が「グロースハック」より全然良書だった件

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今更ですがHooked ハマるしかけを読みました。本書はグロースハック本ですが、海外の第一人者の方の翻訳本なだけあり、拙著「グロースハック」より全然内容が良いです。これはあっさり負けを認めます。グロースハック作ったの、けっこうしんどかったですがね…

本誌読者のサービスプロデューサーの皆様へ「必読本」として推奨しますので、要点を整理してご紹介。「グロースハック」は読まなくていいんで、こちらを舐め回すように読んでください。自著をdisるという新たな芸風ですね。

①きっかけ⇒②行動⇒③報酬⇒④投資というループでプロダクトを習慣化させる「フックモデル」の紹介が本書の核です。

ハマる

1:内的トリガーの設計に注力しよう

まずはきっかけ。外的トリガーと内的トリガーの2種類ある。

■外的トリガー

1:有償(リスティング広告など)
2:名声(メディア露出)
3:口コミ
4:自己/Owned(アプリのホーム画面など)

こうした外からのきっかけで、ユーザーはまずプロダクトとの接触を持つ。

その後内的トリガーによってユーザーはプロダクトを継続的に利用するようになる。とりわけネガティブな感情は強い内的トリガーをなることがある。
本書の例のインスタグラムでは「周囲の友人から取り残されるのが嫌だ」という心理で習慣化しているユーザーもいるいう仮説があった。

もちろんポジティブな理由が内的トリガーになることもある。退屈な時に刺激を求めるために、ニュースアプリを開いたりPinterestの美しい画像に癒されたり、孤独を感じた時に「ぼっちなう」とツイートして、twitterで誰かに励ましてもらいたいという内的トリガーもあるという。

ただし内的トリガーは一晩で築けるようなものではなく、ある程度継続的な利用を経て、再訪せずにはいられない心理を引き起こされるようになる。

僕が思うに外的トリガーを作り出して一時的にユーザーの注目集めることは比較的簡単。しかし、ユーザーの心の中に内的トリガーを生み出して、継続利用させることは非常に難易度が高く、多くのスタートアップはそこでつまずいている。そのサービスにおいてどのような体験を積み上げるとユーザーは内的トリガーを引き起こされ、定着するのか。そこの設計にもっと注力すべきであろう。

2:行動へ至る障壁の簡素化や、行動させるための心理学

「トリガー」が行動するきっかけとなる。行動の敷居を下げるためにはこんな6つの簡素化の要素があるという。

■6つの簡素化

1:時間(行動を完了するまでにどれくらいかかるか)
2:お金(行動を起こすためにかかる財政的費用)
3:身体的な努力(行動を起こすために必要な労力の量)
4:ブレインサイクル(行動を起こすためにメンタル面で行わなくてはならない努力と集中のレベル)
5:社会的な逸脱(その行動がどれくらい他人に受け容れられているか)
6:非日常性(行動がどのくらい日常の行動に合うか、あるいは妨害するか)

自分のプロダクトであるUmeki Salonに当てはめてみましょう。

■Umeki Salonコンバージョンへの6つの簡素化

1:時間(PayPalなどでの決済)
2:お金(初月無料で敷居を下げる)
3:身体的な努力(シナプス上で決済しなければならない)
4:ブレインサイクル(あの中でどんなことが語り合われているんだ…)
5:社会的な逸脱(え?みんな入ってるの?俺も入ろうかな…)
6:非日常性(周りで話題だし、Facebookグループなら見やすいし)

この中の4と5が最近バイラルしているので急成長に繋がったと考えられますが、2で敷居を下げています。6が肝だと思っていて、Facebookグループなので、ユーザーは日常的に接するプラットフォーム内でサービスを受けられる。これが全く別のアプリを起動しなければならないとなると、機能しなかったと考えられます。実際にサロン黎明期にあったシナプスの競合のgrowはFacebook外にプラットフォームを置いていました。最近見かけませんが、終了したんでしたっけ。

これ以外にも「希少性」「フレーミング効果」「アンカー効果」「エンダウト・プログレス効果(完成までのステップを視覚化する)」などの基礎的な心理学の話もありました。

Umeki Salonも本書執筆中は490名となり、実際に500名になった後はしばらく新規会員は募集しません。これは実際事実なのですが、こういわれるとそのうち入ろうかなと思っていたものの、あと10人か。やばいな。などの希少性により入会という行動を後押しする心理を引き起こすことができます。僕はそれをわかっていて、今まではわざと希少性を演出してきました。

3:非金銭的で予測不能な報酬がユーザーを魅了する

続いては報酬(リワード)。予測不能な報酬の3タイプが紹介されています。

■予測不能な報酬の3タイプ

1:トライブ(集団=社会的な繋がり)
2:ハント(狩猟=情報収集など?)
3:セルフ(自己=能力の向上の実感など?)

トライブを具体的にいうと「自分自身が受け入れられている」「魅力的である」「重要である」と思われていることを指す。この報酬を求めてユーザーは行動する。CGMを例にすると、投稿に対するリアクションを求め、自分自身が受け入れられている。重要だと思われている。と実感できることもあるだろう。

ハントは予測できない魅力的な情報をtwitterやPinterestのタイムラインで発見すると、それが報酬となる。セルフではゲームや学習を通して達成感を得る報酬のことを指す。Codeacademyの話が例に挙げられていた。

これらの予測不能な報酬は金銭的報酬と比べて、自主的にユーザーがサービスに関わろうとする意思を維持するのに有益だという指摘もあった。

「それはあなたの自由だ」というのが相手を動かしたい際の魔法の言葉であるというもの話もあった。これは心理的リアクタンスを逆さに取った考え方で、人は自主性を奪おうとするものには反発するが、自主性を与えられると逆に従順になる。という仮説。

「無限の予測不能性」「有言の予測不能性」という論点もありました。有限の場合は先が読めてしまうので、興味を失いやすいと。

4:時間をサービスへ投資することで、ハマるサイクル完成

フックモデルを完成させ、ユーザーを「ハマらせる」には最後のピースは「投資」になるらしい。

イケア効果という話が面白く、自分で組み立てたイケアの家具に愛着が湧くように、労力をかけたものにユーザーは価値を感じやすい。

他にも人は過去の行動との一貫性を求めたり、認知的不協和を避ける。過去に何かに労力を注ぎ込めば注ぎ込むほど、それを高く評価するようになる。こうして自らの行動を正当化する。サンクコストバイアスとも似た話。

ユーザーはそのサービスに対して「コンテンツを投稿」して「フォロワーを獲得」し「他のユーザーを評価する」などといった(時間や労力をサービスに対して投資する)行動を通して、他者からリアクション(外的トリガー)を受け、さらにハマる。ユーザーアクションが次のユーザー行動を生む。

ユーザーが習慣的に使うサービスは競争力が非常に強い

チャプター1が習慣に関する話だったのですが、記事を書く上では最後に持ってきた方がしっくりくるので最後に。

■習慣化のメリット

1:LTVの向上
2:価格設定の自由度の高さ
3:急激な成長をもたらす
(口コミやプロダクト自体の外部ネットワーク性)
4:スイッチングコスト向上による高い競争力

わかりやすくFacebookで考えてみると良い。僕は毎日かなりの時間Facebookを開いており、特にスマホで見る際は広告や「この人知り合いかも」が頻繁に表示されてウザいなと思っています。

しかし、Facebookを見るのは習慣になっているので、ライフタイムは相当に長い。うざい表示がなくなるのであれば月額課金してもいい。いや、むしろ課金するから「知り合いかも」の表示をなくしてほしいと心の中で強く要望しています。これが1のLTV向上と2の価格設定の自由度に関連する話。

3はユーザーの接触頻度が高く、習慣化されればされるほどオフラインでそのサービスに言及される機会も増える。「Facebookで見たんだけどさ」という話は日常茶飯事です。習慣化されてしまうと他の類似サービス、いまさらFacebookからmixiへスイッチしようとは全く思わなくなる。これが4。

習慣とはその行為をしないと多少なりとも痛みを伴う

という一文もあり、これは日々の自らのユーザー体験からすごく納得。スマホを見ずにはいられないし、飲み会や会議で数時間Facebook見ないと苦痛を覚えたりする。Facebookは僕にとってはビジネス用途でもあり飯の種なので致し方ない点もありますが、Facebookが気になるという習慣による悪影響も多大にあるなと思っています。

以上です。プロデューサーは必読です。僕もサロンをグロースハックする上で、本書は学びが多かったです。

注:「グロースハッカー」の著者である僕は自らのプロダクトであるUmeki Salonの会員数を半年で倍に伸ばしました。僕自身がグロースハッカーと名乗ることはありませんが、執筆を通してグロースハック的マインドは養われたと思っています。

内容は完全に僕のグロースハックより上なのですが、本書の残念な点はタイトルですね。「Hooked」じゃ検索されないし、なんかサブタイトルも長いし。タイトルが良ければもっと売れている本だろうと思います。ちなみに書店では「グロースハッカー」「グロースハック」「Hooked」が仲良く隣に置かれているのをよく見かけます。

Umekisalonバナー プロフ写真入り(小)

New!500名の定員までついにあと8名のUmeki Salon、今後サロン内シナジーを強化。内容の参考:国光氏降臨とANRIポートフォリオ調査

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著書、グロースハック本の要約サイトflierで要約を紹介。

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今日も適当にツイート中。 @umekida

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