プレミアムという言葉を、何気なくわかった気になって容易に使っていることはないだろうか。
2007年発売のプレミアム戦略を久々に読み返した。僕は量をこなすタイプではなく上手いポジショニングを見つけてプレミアム路線で戦う方が得意なタイプということもあり、再読して下記に重要と思った点を引用し、その意味を咀嚼してみた。
プレミアム=機能的価値×情緒的価値
機能的価値=レベルの違う圧倒的上質感
情緒的価値=感情に訴えかける何か、見えない絆
機能的価値の構成要素として「尖り」が挙げられる。
作り手の独善とも言える強烈な思いや信念がこだわりとなり、「尖り」が生まれる。万人に対して価値があるものではない。ある特定の価値観を持つ人たちには強烈にアピールするが、他の人たちは関心がなかったり、時には嫌悪感さえ示すこともある。
自分の主観にこだわりつづけた結果生み出される尖りを持ったレベルの違う上質感は、間違いなく、ある特定の消費者を魅了する。
よく「尖っているね」と言われるので、この「尖り」はすごく共感する。特に時には嫌悪感さえ示されるという点に。笑。他人の意見を受け容れることも大事だが、受け容れたがゆえに尖りがなくなり無難な着地になることは往々としてある。尖れる人は言い換えると「圧倒的な個」といえるそうで、プレミアムを生み出すためにこの要素は欠かせないそうだ。
情緒的価値の構成要素に「ストーリーテリング」がある。
「本物を極めよう」「極上を作り出そう」とする作り手の強烈な意思、長年に渡る努力と研鑽、そしてその過程において起きたさまざまな失敗や挫折など人間臭いドラマやエピソードが存在する。消費者はそうした「ストーリー」や「伝説」「逸話」に共感し、作り手との一体感を感じる。
紡ぎ出されたストーリーに自分自身の人格を投影させ、これこそが自分のアイデンティティだと惚れ込むことこそが情緒的価値の醸成に繋がる。
人間臭いストーリーがある方が感情移入できるという点はわかるのだが、「ストーリーに自分自身の人格を投影させ、これこそが自分のアイデンティティだと惚れ込む」という点は咀嚼しないとなかなか理解できない。
ストーリーに自分自身の人格を投影するとはどういうことか。僕自身のユーザー行動を振り返るとそれは本田圭佑というブランドで説明できそうだ。
本田圭佑のマインドセットやビッグマウス、そして挫折などをメディアの記事を通して知る。彼の人生を想像しながら試合を見る。すると彼がゴールを決めると何かすごく嬉しい。僕はそういった感情を香川真司には感じず、本田圭佑に感じる。それは彼のブランドに自分自身の人格を投影しているからなのかもしれない。叩かれることも多いけど、結果が出るときもある。俺も一緒なのかもしれない。と投影する。
最後に触れるのは「カスタマーではなくファンを作る」ということ。
プレミアムの価値訴求は、作り手の主観を全面的に押し出すものであり、ある意味では「主観の押し付け」である。その主観に強烈に反応し、支持してくれる人たちこそがファンであり、作り手の主観に対する「共感者」である。
強烈なファンがいるという事実がやがて「本物に対する憧憬感」を醸成し、それが第2第3のファンを作っていく。そんな第2第3のファンこそがプレミアムにおけるカスタマーであるともいえる。
ファンかカスタマーか。受け手側が感じる情緒的な度数の高低によるのだろう。たとえばThe Startupの更新を楽しみにして読んでくれる人。それはファンであり、「記事の情報が利便性が高いから」という機能的価値だけに惹かれて読みに来てくださる読者ではないと思う。機能的価値のみに惹かれて記事を読む読者はソーシャルで話題になった時にたまに流入してくる程度であり、それをカスタマーと呼ぶのかもしれない。
最後に今一度整理しよう。
プレミアム=機能的価値(上質な尖り)×情緒的価値(ストーリー)
2015年は9割から嫌悪感をもたれようが、今までより少しでも多くの圧倒的なファンが付くメディアとなれるよう精進したいと思う。
プレミアム戦略を取る事業者の方は再読をお勧めします。特に月額課金サービスはフリーミアムで課金ユーザーを「プレミアム会員」とか呼んだりしますからね。情緒的価値を提供できればより課金ユーザーが増えるとかあり得そうです。
New!Umeki Salonの神8名の人生を変えた書籍8冊。
New!広告出稿をご検討の方はこちらをご確認下さい。
Umeki Salonもプレミアム戦略を取っています。
内容の参考:GCP、EXITへの圧力がキツい?
梅木雄平が選ぶ珠玉の書籍40冊。
今日も適当にツイート中。 @umekida