「読者との特別な関係」にニッチメディアの未来がある

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ウェブメディア運営者は、PVを見る。何万PVだった!と一喜一憂する。だがいかなるメディアにおいても、読者は数字ではない。生身の人間である。

Googleアナリティクスでは「初回訪問のユーザー数が10,000で200回以上訪問のユーザーが500で」みたいなデータは出てくるが、そのメディアをよく見ているユーザーに対して、何か有用な施策を打てているだろうか。

「一見さんとお得意さん」でサービスを変えるのは飲食店ではありそうだが、ウェブメディアにおいても、もっと適用されていいのではないか。雑な図で示すと下記な感じ。

スクリーンショット 2015-05-12 11.09.45The Startupに適用すると、Umeki Salonのユーザーがヘビーな読者である確率が高いと思われる。逆に、The Starupを読んだことがない人はサロンメンバーにはほぼいないはず。

ヘビーな読者がPVの8割を構成しているとはさすがにいいませんが(むしろウェブメディアにおいては「お得意さん:一見さん=2:8」くらいな気がする)特にニッチなメディアにおいては、一部の熱狂的でコアな読者がそのメディアを構成する要素として欠かせないのではないないかと思います。メディアは読み手がいてくれてこそ、はじめて成り立つのです。

「一定のユーザー層に対して、一定以上の接触頻度があり、かつユーザーから必要とされるもの」を僕はメディアと定義したいと思います。ゆえに個人ブログでも十分誰かにとっての「メディア」として成り立つわけです。記事が一発バズっただけではなく、「一定以上の接触頻度がある(がゆえにユーザーに必要とされている)」という点が肝です。

本稿で考えたいのは、いわゆるマスメディアではなく、ニッチメディアであれば運営者側が読者階層を明確に認識して、階層別の施策を打つことで、コンテンツもマネタイズも拡張できるという視点です。今までサロンでやってきたことの言い換えともいえますが、「メディアは読者と特別な関係を築くこと」をもっと意識すれば、もっと面白いことが生まれそう。そこにはまだ深堀りできる余地が十二分にあり、金脈なのではないかと思っています。

「特別な関係」を具体化すると?

読者の中には「単なる読者」と「そのメディアのコンテンツの一部になる読者」がいます。The Startupにおいて後者は取材したりサービスを取り上げたりして、読者は「掲載されたことがある」という関係となります。「コンテンツとなった読者」はメディア側にとっても重要で、ある意味「特別な関係」といえます。「コンテンツとなった読者」は好意的に取り上げられれば、ビジネス上のメリットが生まれることもあり、「特別な関係」はお互いにとってWin-Winなわけです。

■メディアの中の人が読者と「個人的な」コミュニケーションを取ること

前者の「単なる読者」でも、接触頻度が高く、かつ好意を持ってくれている、いわばファンとも言い換えられる読者もいる。こうした読者と「特別な関係」を築くことにニッチメディアの未来があると思う。

たとえば、僕がGQの読者だと仮定して、何かしらかの機会でGQの編集長と話す機会があり、かつそれがマスに対してではなく、僕個人に向けた話であれば、いち読者として嬉しく思うであろう。ただ単にオフラインでイベントをやって読者を集めとけばいいだろ。ではなく、コアな読者はメディアにとって重要な存在であると思わせるコミュニケーションであったり、コンテンツがあると、コアな読者のエンゲージメントは更に上がるのではないか。

コアな読者は時にインフルエンサーやアンバサダーとなるため、メディアの影響力の最大化を考えると、コアな読者のエンゲージメントを上げる=熱狂的な読者を作る=「お前、The Starup読んでないの?やばくね?」と勝手に口コミしてくれる、とROIは高いはずです。

些細なことですが、こういうことも読者にとっては「特別な関係」の一つだと思います。僕は今年に入ってから、Umeki Salonの新規入会者には全員直接メッセージを送っています。これはマーケティング調査と審査を兼ねているのですが、僕が入会する側であれば、オーナーから直接メッセージがきて最初にご挨拶があるというのは、なんか歓迎されている気がして良いと思ったのです。これをテンプレでやるのと、オーナーが直接やるのでは受け手の印象は全く異なるでしょう。

僕が読者側の視点で考えると、たとえば「ブルータスサロン」に入会したとして、西田編集長から「梅木さんこんにちは。The Startup知ってますよ」とかきたらテンション上がります。

■コミュニティ化がワークすればPV規模以上の価値を生み出せる

ニッチメディアはコアな読者をコミュニティ化することで、PVに表れない影響力を強めることができると思います(結果的にマネタイズでいうと、広告だけではなく課金が回るようになる)。The Startupは記事を全然更新しないし、PVも大したことがないわりに、それなりの影響力があると感じていただいている読者が多い背景には、サロンによる「コアな読者のコミュニティ化」の仕組みがワークしていることが理由であると思われます。

読者(の声)をどうメディアに転換するか

「特別な関係」になり得る読者をメディア運営者側はどう見極めるか。いいことも悪いことも継続的に口うるさく言う読者は、ある意味ちゃんと記事を読んでいるので、コミュニケーション次第では「特別な関係」になり得る。ただ、悪口ばかり言ってくる読者と「特別な関係」になりたいかは、メディア運営者にも選択の自由がある。

■コミュニケーションの延長にコンテンツを置く

読者は自分の意見がメディアに反映されると、ちょっと嬉しいというか、「自分が(少しでも)関わった」感が出て、エンゲージメントが上がると思うのです。ある程度読者がいる中で、「このコンテンツはあなた向けですよ!」と言ってしまう。本誌でいえば田端さんに呼びかけてみたり(半分くらいはスルーされますが)。「これは、自分に関することなんじゃないか。いや、自分向けなんじゃないか」というコンテンツに読者はこちらの想像以上に鋭く反応します。

この感覚は「マイコンテンツ感」という表現で、この記事で紹介しました。

自分ごとに読者は反応するのです。読者に「いかに自分ごととして感じさせるか」が大事で、それはコンテンツだけでは限界があり、コミュニケーションによって拡張できるかも。オフラインでもオンラインでもよい。コミュニケーションの延長にコンテンツを置ければ、エンゲージメントは上がる。

ということで、上手くオチがまとまらないが、「単発的にイベントをやって、表面的に読者とコミュニケーションを取った気になる」ではなく、継続的なコミュニケーションを取り、それをコミュニティ化することで、読者の階層別にメディア運営者の読者への扱いが変わり、コアな読者と「特別な関係」を築けるようになると思います。一般的にはコアな読者は「課金ユーザー」や「会員登録ユーザー」だったりするのかもしれませんね。

「読者の声を聞く」こと。「特別な関係になり得る読者を顕在化させる」こと。この二つを掘り下げていきたいと思います。

ようやく次の展開がおぼろげながら見えた気がします。



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