絶好調なオンラインデーティング「Pairs」の細やかなUX施策

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オンラインデーティングの「Pairs」が好調という話を聞く。数千円単位の月額課金にも関わらず課金ユーザー数は伸び、具体的な数字は非公開だがかなりの売上となっているようだ。本誌では2014年7月に会員数100万人を超えた時点で取材記事を出しているが、2014年12月時点では会員数は180万人にまで伸びている。

オンラインデーティングサービスは2013年頃にも複数あったようだが、今では主力数社に絞られている。また、リクルートやエイチームといった上場企業の参入もあり、2015年も激戦が予想される。そんな中でPairsはなぜ頭一つ抜けて好調なのだろうか。エウレカ代表取締役赤坂優氏に恵比寿ハミングバードヒルズでハンバーグを食べながら話を聞いた。

広告をガンガン投下しても回収できる課金単価の高さ

スクリーンショット 2015-01-10 15.55.13Pairsではマッチング後メールを開封する際に男性ユーザーは課金しないと開封しメッセージをやり取りすることができない。単月課金であれば2,980円で、数ヶ月プランごとに割引が効くというスタイルだ。

価格設定ロジックはPairsが市場に参入した際に先行サービスが月額2,980円で展開しており、まずそれより低価格の1,980円で参入。先行サービスにある程度追いついたと判断したタイミングでほぼ同額に値上げ。有料会員数は微減したものの、値上げした分売上自体は上がったという。

ユーザー獲得においては一般で考えられる売上対広告出稿率より高い割合の額を広告出稿しており、Facebookで7割、アフィリエイトで3割だという。筆者もかなりの頻度でPairsのFacebook広告を見かけており、ターゲティングされているなと感じる。純粋な広告以外でもPairsのFacebookページには約800万のユーザーがおり、そこを経由してユーザーを獲得している。

単純な話ではあるが、特定のターゲットユーザーにかなりの露出頻度の広告を出すことで会員に転換していく。広告費をどこまで踏めるかという胆力はこの事業が成立する上で一つ重要な視点であり、3,000円程度の課金単価があるので売上のそれなりの割合を広告費に充てることができる。これが月額500円のサービスであれば、広告を投下しても赤字になり続けるだけということも十分あり得る。

しかも本当に良い出会いがあるのであれば、数千円くらい男性は容易に課金する。出会いは強力な顕在需要であり、マッチング精度が低い合コンで1万円払うくらいなら、Pairsで3,000円払って好みの相手を見つけたいというユーザー行動に経済合理性があるだろう。

「初月無料」より「ミニ課金」:月額ビジネスの工夫

高単価の月額サービスを成立させているPairs。月額課金というと初月無料などが施策としては想定されるが、Pairsでは初月無料はあまり機能しなかったという。具体的には2週間無料にしてその後課金するという仕組みとし、課金開始時に丁寧にユーザーにアナウンスしたところ、きっちり無料期間で退会されることが少なくなかったという。

その代わり最初に500円で試せるキャンペーンを展開したこともある。Pairsは男性側は課金すると一定数の「いいね!」ができるようになる。

注:Pairs内のルール

月額会員は無尽蔵に自分から「いいね!」できるわけではなく、相手から来た「いいね!」に「いいね!」し返す場合はポイントは消化されない。

「ポイント」を購入すると「いいね!」と交換できる。またポイントを使うと「いいね!」と共にメッセージを送ったり、「みてね」という優先上位表示機能もある。

うまくいけば500円課金でも少ない数の持ち「いいね!」数を使って、女性とマッチングし、メッセージ交換に至ることもある。一連のそういったユーザー体験を踏めば、従来の2,900円程度の課金に対する敷居は下がる。

この「ミニ課金」スキームはある程度機能したと赤坂氏はいう。無料⇒有料より、有料⇒有料の方が転換しやすいようだ。現に、上述の値上げもそれなりに成功している。

ただし、この「ミニ課金」は元の月額単価がある程度高いサービスであれば有効といえよう。月額300円のサービスを100円で利用できるといわれてもあまり有り難みはない。Umeki Salonも新規会員は月額4,000円なので、同様に「ミニ課金」は機能する可能性がありそうだ。

マッチング数最大化のための「いいね!」数を増やす仕組み

スクリーンショット 2015-01-10 16.37.32オンラインデーティングのユーザー体験サイクルは上記のようなものだ。Pairs上での最高のユーザー体験とは、好みの相手を見つけてデートをし、男女交際に至るというものである。そこの至るまでの成功体験を分解すると下記のようになる。

①:好みのユーザーを見つけるか
好みのユーザーから「いいね!」される
②:お互いが「いいね!」してマッチングする
③:メッセージで円滑なコミュニケーションが生まれる
④:オフラインで会う

事業者としてチューニングできるのは主に①であり、①の精度が上がった結果、②のマッチング数が増える。③と④はユーザーの実力次第であり、アポに至るまでにどういったメールのやり取りをすればいいかというコンサルティングサービスも想定はされるが、プラットフォームとしてまずやるべきことは①で一人でも多くのユーザーを「いいね!」してもらい、②でマッチングさせるかということであろう。

■「いいね!」する数(能動アクション)を増やす施策

Pairsでは男性にとって魅力的と思われる女性を裏側でスコアリングして上位表示させたり、良いタイミング(想像だが会員登録したばかりのユーザーなど、サービスにまだ定着するかわからない段階)でキラーコンテンツ(となる女性)を表示させることで、マッチング数の増加を促しているようだ。

月額課金とは別のプレミアム課金をすれば、「いいね!」数順でソートできるようになる。だが、プレミアム課金に至るユーザーの方が少ない。当然、無料会員では人気の女性ユーザーを検索して見つけることはできない。そういった男性ユーザーに対して、アルゴリズムを組んで人気女性ユーザーを表示していく。すると「おお、こんな可愛い子がいるのか!」ということで男性の課金への敷居が下がっていく。

■「いいね!」される数(受動アクション)を増やす施策

一方で「いいね!」される数が少なすぎても悲しい。平たくいうとモテていない。「いいね!」されるということは相手が自分に興味を持っているということで、自分さえ「いいね!」し返せばマッチングが成立するのだ。これも新規登録ユーザーを優先表示したりして、自然誘導を図っている。

自然淘汰であれば顔面偏差値や経済力が高いユーザーに「いいね!」が集中しやすい。そうではなく、モテないユーザーをモテるようにするアルゴリズムにより、Pairs内での露出頻度を増やして、より多くのユーザーが1度は「いいね!」されるような体験を得てもらうような設計をしているという。

■プロフィールLPOのコツ

いくらアルゴリズムを頑張ったところで、相手から魅力的だと思われなければ「いいね!」は稼げない。プロフィールをインターネット業界風にいうと「LPO」する必要がある。顔写真や自己紹介分の掲載はもちろんすべきだ。

赤坂氏に聞いた面白い傾向としては、宣材写真ではなく自然な写真。男性であればサッカーをしてる姿やカフェにいる姿の写真の方が人気があり、顔写真だけではなく、テキストより写真で伝えた方が良いであろう趣味の写真が載っているユーザーの方が人気があるようだ。女性ユーザーであれば、手料理やペットの写真が載っていることも少なくない。

ちなみに男性ユーザーは年収1,000万円くらいのサラリーマンが一番人気があるようだ。本誌の読者にとっては悲報だが、経営者は不人気のようだ。

スペック軸以外での魅力を訴求するためのコミュニティ機能

すごく機能しているわけではないが、という前置きを赤坂氏は置いたが、Pairsにはコミュニティというmixiにあったような機能がある。ただし、これはそのコミュニティに属している異性の一覧を見れるだけで、mixiのようにスレッドやオフ会機能があるわけではない。

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たとえば上記のようなコミュニティとなる。男性であれば年収や学歴、女性であればルックスが良いなど、スペックが高ければ人気が出る可能性は高い。一方でそういったスペック軸には表れない趣味が、どのコミュニティに入っているかで可視化され、マッチング精度を上げる一助となっているのではないかと想定される。

筆者であれば同じ母校の慶應出身者であれば話が合いそうだなと思うし、よく代官山蔦屋にいるので、代官山蔦屋が好きな人とはライフスタイルが近しく気が合いそうだと思う。一方で閲覧した女性プロフィールの中に「日本酒好き!」「ワイン大好き!」など酒がないと生きていけないんだろうなという感じの方だと、筆者はアルコールに弱いため、気が合わなそうだと判断する(ちなみに、よく酒に強そうと言われるけど、実はかなり弱い)。

たとえば「代官山蔦屋」コミュニティ内に100人くらいの女性が登録していれば、そのプロフィールを一覧で見ることができる。単純なスペック検索ではできない趣向別で好みの相手を見つけることが可能になるのだ。

Pairs好調の背景には、他サービスにはないユーザー体験サイクルに沿った細やかな施策の積み重ねがあったといえよう。今後本誌では好調なサービスのUXに沿った取材記事を増やしていきたいと考えている。

某VCもPairsに関する記事を出していますが、彼がちゃんとサービスを使ってグッときたのかは気になるところです。

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内容の参考:GCP、EXITへの圧力がキツい?

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今日も適当にツイート中。 @umekida

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