加熱するビッグデータ銘柄：サイジニアをマルチプルにアルベルトが爆発？

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DMPサービスなどを運営するアルベルトの上場承認が降りました。ビッグデータ銘柄といえるでしょう。アドテク×ビッグデータ銘柄は2014年12月に上場したサイジニアも含め、株式市場ではかなり加熱している模様です。アルベルトとサイジニアの比較、および両社の成長ドライバーであるDMP領域の競合としてフリークアウトも挙げつつ、この市場を見てみましょう。

両者をざっくり比較するとこうなります。

パーソナルレコメンド市場の天井は低く、広告事業に進出

両社のセグメント別売上を上記に。パーソナルレコメンドサービスから両社ともスタートしています。

■パーソナルレコメンド：顧客に合った提案で売上を伸ばすシステム

パーソナルレコメンドサービスとは何かというと、楽天みたいなECで顧客データを分析してその顧客に最適な提案ができるようなレコメンドエンジンを売っている。という認識で良いかと思います。よってクライアントはECを中心に不動産サイトなどで、初期費用＋PVに応じた従量課金や成果報酬課金というビジネスモデルです。

アルベルトのLogrecoというサービスの導入企業（サイト？）数が300という数字が出ており、このセグメントの売上1.5億円で割ると1社あたりから年間500万円ほどの売上、月額換算で40万円程度となります。ECからするとパーソナルレコメンドの導入でCVR向上などが見込めます。

サイジニアの成長可能性に関する説明資料から抜粋すると下記な感じ。

導入すれば売上が12%上がる。年間500万円かけて売上が12%アップすると仮定すると、最低年商5,000万円は欲しい。5,000万円の年商のECが500万円のシステムを導入しないと思うので、最低でも年商2-3億くらいのECが導入企業の対象となるはずです。

導入企業側はどちらかのレコメンドエンジンを入れればよく、アルベルトのLogreco、サイジニアのデクワスRECOはこの市場で明確に競合する。この市場自体、年商数億円以上のECの数は国内で限られているでしょうし、アルベルトの一の部には「競争環境も厳しく解約もある」と記載されていることから、Logrecoの導入企業数が3倍の1,000社になったところで、さほど大きな売上にはなりません。10億に届かない感じでしょうか。

サイジニアのデクワスRECOは主要取引先の状況を見ると楽天やリクルートのSUUMO、ニッセンといったところが並びます。ですが、このパーソナルレコメンド市場自体がやはり小さい。ゆえに両社はこの市場だけではスケールしないと判断し、広告市場へ進出していったと思われます。

DSPよりDMP構築ソリューションの方が利益率高い

それでは両社の成長ドライバーとなった広告領域の話を。

アルベルトではsmartica!DMPというプライベートDMP構築ソリューションを今後柱にしたいという。上記のセグメント別売上でみると2013通期売上は1.1億ほどですが、2014通期でそれなり伸ばしてくると予想されます。

■DMPとは？オープンDMPとプライベートDMP

DMPに関してはDigital Marketing Labの説明が分かりやすい。下記引用。

【DMP】

インターネット上の様々なサーバーに蓄積されるビッグデータや自社サイトのログデータなどを一元管理、分析し、最終的に広告配信などのアクションプランの最適化を実現するためのプラットフォーム。

【オープンDMP】

Webサイト訪問ユーザーのデモグラ情報や、興味関心・嗜好性等などの外部のオーディエンスデータとデータエクスチェンジさせることができるクラウド型のデータプラットフォーム（様々なWebサイトのオーディエンスデータを集約して整理するデータ格納庫のようなもの）。

【プライベートDMP】

オープンDMPの領域に加え、企業独自ののマーケティングデータ（購買情報、ユーザープロファイル、各種プロモーションの結果等）を集約し、それを外部のオーディエンス情報とシンクさせ構築するプラットフォームです。CRMデータに、従来では取得することが難しかった外部データを組み合わせたものだと理解しやすいと思います。データ格納先が企業側にあるというところがポイント。

上記の定義を元に考えると、大手サイトほどオープンDMPのみではなくプライベートDMPも駆使して売上を伸ばしたいと考える企業が多そうです。ゆえに大企業でのニーズが強いのかなと。

構築ソリューションサービスなのでSaaSということができ、一般的に高粗利を確保しやすいと思われます。本稿での詳細な記載は省きますが、アルベルトの売上原価率は2012年通期53%⇒2013年通期41%と低下しており、SaaS事業の伸びにより原価率が低下している、と本誌では想定しました。

ただ、プライベートDMPを導入するようなサイト数は国内にそこまでないのではないでしょうか。ゆえにアルベルトはLogreco導入クライアントに対してsmartica!DMPのアップセルを頑張っていき、数百社への導入を目指すといったところでしょう。クライアントにはHOME’Sとかがいるようです。

データ分析からのマーケティング支援という観点ではパーソナルレコメンドから進化したという考え方ができ、パーソナルレコメンド導入より売上が上がる可能性があり、その分アルベルトの売上が伸びる余地もありそうです。

■DMPとDSPの事業モデルの構造上の違い

アルベルトも「広告最適化ソリューション」という名目で行動ターゲティング広告事業もありその中の一部にDSPがあります。一方でサイジニアはデクワスADやデクワスDSPといったパーソナライズアドの売上が伸びている。

DSPはRTBでのマッチングによる手数料モデルであり、高利益率が見込みにくい。DSP大手のフリークアウトの2015年通期予測は売上40億に対して営業利益4億で営業利益率10%の予測となっており（新規事業への先行投資を含んでいるので利益率下がっているのでしょうが）決してDSP単体で営業利益率20-30%を確保できるモデルではないかと思います。

ゆえに傍目にはアルベルトもサイジニアも同じ10億程度の売上なのですが、今後注力するのがDMPによるSaaS事業（月額取りやすい＋従量課金でアップセル）とDSPによるマッチング事業であるという構造上の違いにより、アルベルトの方が高粗利を確保しやすいと判断します。本誌予測ではアルベルトの2014年通期営業利益を約2.5億円と見込みます。

アルベルトは上場後1-2ヶ月は沸騰する可能性アリ

最後に株価です。マルチプルとなる2社をまず見ましょう。2015.1.16時点。

■サイジニア

時価総額：226億
PER：244倍

■フリークアウト

時価総額：170億
PER：77倍

サイジニアの評価の高さは異常かと。高利益率も見込みにくいですし、この水準なら売り推奨です。

フリークアウトは初値でかなり跳ねましたが、昨今ではこれくらいまで落ちています。初値〜2,3ヶ月はバブった水準で推移して、上場後3ヶ月〜1年で本来の実力値に収斂していく動きをする銘柄がIPO銘柄が最近覆い気がします。IPOってそんなものなんでしょうが。

よって2014年12月上場のサイジニアは2015年1月現在は実力値から大幅に乖離しているだけであり、ファンダメンタルで見るとフリークアウトの方が売上も営業利益も高い。ただし、それなりに落ち着いた株価となっているフリークアウトでもまだPERは77倍。

アルベルトにとっては、フリークアウトDMP、サイジニアはビッグデータのマルチプルといえます。想定発行価格の記載は見かけませんが、上場から1-2ヶ月はサイジニア並の水準に跳ねることも想定されます。サイジニアの現在の時価総額が226億円なので、サイジニアより利益が出ているアルベルトは300億まで跳ねる可能性もあります。ただし、3ヶ月後以降はゆるやかに100-200億台に収斂して推移していくと本誌では予想します。

ちなみにアルベルトの外部筆頭株主はDACの15%、VCで筆頭株主は本誌の読者であればみんな大好きIVPの4.23%となっています。IVPは初の国内IPO銘柄でしょうか。持分全て売り出すようです。ちょっともったいない気もしますけどね。IVP FundではなくIVP incubatorですね。2007年頃の出資なのでファンドレイズ前の案件でしょうか。本誌の読者の皆さんも、ぜひ心の中でIVPに拍手しましょう。

ということで、アルベルトは上場後にかなり沸騰するポテンシャルのありそうな銘柄であるというのが本誌の判断となります。一定期間沸騰したあとは、緩やかに冷却へ向かいますがね。