以前本誌では米国のGrubHubに関する記事を出している。スマホ時代のコマースの潮流の目玉としてオンデマンド(ファストデリバリー)が挙げられるだろう。この分野のサービスであるbento.jp代表取締役小林篤昌氏にB Dash Campで接触する機会があり、別途取材を敢行した。
bento.jpは本誌読者であれば知っていると思うので詳細な説明は省くが、スマホでワンタップで弁当を注文できるサービス。平日のランチ帯に1種類だけ20分以内のデリバリー現在は渋谷のみで提供。2014年4月から開始し、開始当初は開設していたが、人気すぎて配送が追いつかずに一旦閉じた六本木エリアでのデリバリーを近日中に再開するようだ。
最短2分で来る?実際の発注時は12分。その早さの秘密
20分以内のデリバリーとするbento.jpだが、小林氏の取材時に実際にbentoを発注したところ、12分で来た。たしかにこれは便利だ!最短では2分で来ることもあるそうだ。(2分で来た!という記事)渋谷エリアに限定しているとはいえ、なぜこんなに早いのか。オペレーションにはこんな秘密があるようだ。
配達は11:30からですが、10:30頃に下記の図のように渋谷のいくつかのエリアで配達員が待機します。いくつかのエリアに細分化して人を配置することで、より早いデリバリーが可能となります。
小回りが利く自転車で、地図のような配置をしていれば、たしかに20分以内のデリバリーが可能となりそうである。
我々はオンデマンドではなくファストデリバリーと呼んでいますが、この分野は確実に需要があると手応えを感じています。今までランチは価格軸と味軸しか選択肢がありませんでした。「今日もまたbento.jp頼んじゃったよ」と本意ではないようなユーザーのツイートを見かけることもあります。
利便性という新たな軸を提供した結果、ついbento.jpを使ってしまうユーザーも出てきているという証拠かと思います。ランチは毎日覚えているような特別なものではないがゆえ、利便性を追求するのは自明です。
オペレーションコストに関しては弁当は一括仕入れ、配達員は11:30から14:30の3時間の間、10人-15人ほどで稼働しているとのこと。アルバイトで大学生などで回していることから時給1,000円程度と仮定し、10人だと1日3万円。そう考えるとさほど高くもないのかもしれない。
社食比率を上げるのがスケールの鍵か?
圧倒的なスピードで届くbento.jp。斬新なコンセプトでローンチ時に話題になったが、スケーラビリティには疑問が残る。
社食としての発注が増えています。社内で誰かが頼むと「bento.jpでーす」と配達員が来るので、周りで働いている人たちの耳にも入り、気になってしまう。
社内で誰か一人が頼むと「じゃあ僕も」という感じで連鎖的に発注が入ることが多いです。
社食にすると会社負担も入るため通常より安い価格での購入が可能です。
社食では週に一度はリピートする人が多く、毎日に近いくらい発注する方もいます。
スタートアップだとBASEさんとかにかなり発注いただいています。
個人からの発注の集積よりも、法人単位でのまとめでの発注の方がスケールが見える。この点はごちクルと同じかもしれない。ただ、ごちクルは2日前以前の注文を受け付ける。当日発注というニーズは強いと、小林氏はbento.jpの運営を通じて感じたそうだ。
スイーツやコーヒーなど、膨らむ弁当以外の展開
bento.jpの特徴は最短2分で届くファストデリバリーの仕組みにある。そう考えれば弁当だけではなく他の商材の展開も考えられる。
まずは弁当をランチ以外の時間帯も提供すること。次にコーヒーやスイーツなどの展開も考えています。
だが、弁当の提供品種を増やすことは考えておらず、1日1種の提供にこだわっていきたいという。
モール型のコマースよりもニッチに特化した方がより質が高いユーザー体験が提供できるのではないかと考えました。1種類に限定していることでオペレーションが簡略化でき、結果最速2分でのデリバリーが可能になる。その早さにユーザーは驚き、時に感動する。そういったユーザー体験をデザインしていきたい。
海外ではオンデマンドコマースと言われているが、SpoonRocketやSprigというサービスがbento.jpと類似のサービスといえそうだ。
僕はスマホ時代のコマースでは「アスクル」では遅すぎて「イマクル」くらいじゃないとユーザーを満足させられないと思っている。コマースは品揃えのユニークさやジャンル特化のバーティカルコマースではなく、オペレーション面(今回のようにスピードなど)の改善の方がインパクトがあり、価値があると思います。今後のbento.jpの商材や販路の拡がりに期待します。
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