キュレーションマガジンのAntennaがマクロミルなどに時価総額約60億円で20億円の第三者割当を実施して資金調達したニュースが先週話題になりましたね。
グライダーアソシエイツが20億円の第三者割当増資を実施、堀江貴文氏をサービスアドバイザーに
マクロミル、キュレーションマガジン『Antenna』を運営するグライダーアソシエイツへ15億円を出資
ニュース/キュレーションアプリ市場は国内ではGunosyやSmartnewsを筆頭に2012年末くらいから熱い分野になってきています。この市場の現況とマーケットポテンシャルがどれくらいあるのか。インフラとなった後はどういう事業展開が想定されるかを本稿で予測しましょう。
Gunosy、SmartNews、Antenna、Flipboardの現況
まずは各サービスの現況を下記に整理。国内の3サービスにおいては著名個人投資家が多数絡んでいるのが興味深いです。
■1:Gunosy
リリース:2011年10月
ユーザー数:50万人
資金調達:シードで3,160万、2013/8/7に追加調達を発表
参加個人投資家:アトランティス木村氏
参考アクティブ率:DAU50%(2013年5月、ユーザー数約20万人時)
サービスロジック:twitter/FBログインによるパーソナルレコメンデーションで朝刊夕刊で25本ずつ配信【ソース】
Gunosy blog、ユーザーに最適なニュースを届けてくれる Gunosyが総額3,160万円を調達
Gunosyに見るスマホアプリ未来予想図
■2:SmartNews
リリース:2012年12月10日
ユーザー数:約160万人(iOS140万+Android22.7万)
資金調達:約3,500万
参加個人投資家:元DeNA川田氏、フリークアウト本田氏、ほか1名
サービスロジック:ヤフトピ形式(カテゴリ設定+1日3回程度の更新)によるニュース転載アグリゲーション(ツイートのリアルタイム解析を元に)
アライアンス:大手ニュース媒体から公式チャネルを提供【ソース】
日本語組版にもこだわったニュースリーダーアプリ「SmartNews」
xyo(ユーザー数算出)
株式会社ゴクロ、Twitterでつぶやかれる1日数百万件のURL解析に基づくiPhone用ニュースアプリ「SmartNews」を発表
■3:Antenna
リリース:2012年5月15日
ユーザー数:約60万人(アプリ50万DL+PC10万ユーザー?)
資金調達:約20億
時価総額:約60億円
サービスアドバイザー:堀江貴文氏
サービスロジック:正式契約する160メディアから毎日500本以上の記事を提供(カテゴリーはあるが、それ以上のキュレーションはなし)
■4:Flipboard
リリース:2010年12月(iPad版が先行で、iPhone版は2011年12月)
ユーザー数:全世界で約5,300万人(2013年4月時点)
資金調達:60.5M$(シリーズA10.5M$+ベンチャーラウンド50M$)
時価総額:200M$(ベンチャーラウンドは2011年4月に実施)
投資家:KPCB、Jack Dorseyなど
参考アクティブ率:DAU8-10%(ユーザー数2,000万時DAU150万)
サービスロジック:カテゴリーに元づいたキュレーション+ユーザーがマガジンを編集して発行する機能も追加された【ソース】
Flipboardの「パーソナライズドマガジン」2週間で50万本が作られる
Flipboard、マルチOSスマートフォン対応は大成功?! 利用者数2000万超で月間Flip数も30億超え
Crunch Base
Flipboardが5,300万ユーザーとは予想以上の伸びでしたね。
ニュースアプリはソシャゲの次の大波になる可能性が高い
本誌でこの分野にまともに言及するのははじめてだが、直近の講演ではニュースアプリ市場は有望市場として紹介することが多い。ニュースアプリに関しては下記のロジックより次の大波になる可能性が高いと予測する。
■1:ニュースは圧倒的なトラフィックを引ける
Yahoo!のヤフトピに代表されるようにプラットフォームサービスのほとんどが傘下にニュースメディアを持っているのは、ニュースがトラフィックを引けることを知っているから。
■2:ニュースはインフラだからトラフィックを引ける
圧倒的なトラフィックを引ける所以は、日々のインフラになるから。新聞市場の需要を考えてそれをリプレイスできれば市場はでかい。
今回の4サービスは大別すると「新聞」「雑誌」のリプレイスといえる。ポジショニングマップは下記。
どっちが善し悪しではなく、性質上の違いは上記となる。GunosyとSmartNewsに関しては私の定性調査によると、ネット業界ではかなり浸透してきている印象で、SmartNewsの方がネット業界以外のマスユーザーへの浸透率が高い印象だ。マスユーザーにはGunosyのロジックは最初はわけがわからないのかもしれない。どちらが良いというよりかは好みの問題であり、どちらかをヘビーユーズしているユーザーもいれば、両方毎日見るユーザーもいる。ちなみに私はGunosyを毎日見る派だ。
一方のAntennaとFlipboardだが正直私の周りではアクティブユーザーは見たことがない。特にAntennaはリリース時にけっこうプロモーションを掛けていたようで、認知はしたが特にアクティブにはならずすぐにアンインストールした。Flipboardも同様。Flipboardの日本で話題になった後にアクティブが続かなかった感覚は、Pinterestを思い起こさせた。
よって新聞に近しいGunosyやSmartNewsの方が「雑誌vs新聞」という性質の違いはあるが、DAUは上がりやすい構造にある。Gunosyなど使えば使うほどレコメンド精度が上がるので、DAUが落ちにくいのはユーザーとして利用していて肌感覚で理解できる。
収益モデルやValuation:メディアコマースの可能性も
■Gunosy、SmartNewsは莫大なトラフィックをベースとした広告が主
最後に気になる収益モデルについて。Gunosyはそのアルゴリズムや「微妙な広告」が話題になったり、SmartNewsは無断転載など両サービスとも波紋を呼んだが、スマホでインフラとなるトラフィックを押さえられれば後々広告を中心にスケールするでしょう。GoogleもYahoo!もFacebookも売上の多くは広告です。その辺と肩を並べるに近いインフラまで持っていければ広告で十分でしょう。
GunosyとSmartNewsが単独でIPOまでいけるのかは今のところは正直分からないのですが、トラフィックを持つメディアはM&Aのオファーはあるでしょうし、何らかの形で上手くExitできるかと思います。両サービスのValuationに関してはかなり議論が分かれていると水面下では聞きますが、Antennaがマクロミルの戦略的な投資だとしても時価総額60億になっているというマルチプルを背景に100億くらいついてもおかしくないでしょう。(ぶっちゃけAntennaのユーザー60万はオーガニック流入とは思えないですね…。これだけ周りで使われていないので)
スタートアップのValuation市場に妥当性など正直あまりないかと思うので(相場観を逸脱したValuationで投資するプレイヤーは同業他社に白い目で見られるでしょうが)Valuationが高くても入れておけば手堅く数倍にはなると思います。Gunosyはどこが出資したのか明らかになっていませんが、SmartNews含めてどこが投資するのかは見物です。
両サービスともThe Startupとしては確実に何かしら大きなリターンが出ると断言できる数少ないサービスです。投資家に会う際にはSmartNewsのValuationはいくらなら投資するか?という質問をぶつけてみると、様々な価値観が見れて面白いかもしれません。
■AntennaやFlipboardによるコマースのアップサイドは?
Flipboardに関してはTech Crunchによると広告収入が主とのこと。Antennaは今後の事業展開についてリリースに下記の記載がありました。
2)EC 機能の開発 『Antenna』の中で気になった商品を、ユーザーが直感的に購入することができる、 EC プラットフォームの開発をすすめていきます。
FlipboardはiPad版から始まってもいますし、雑誌的なコンテンツはタブレットと相性が良い。それなりの規模のトラフィックをベースに、コマースでアップサイドを取りにいくスキームは面白いです。メディアのトラフィックをベースにコマースを展開する事業モデルを「メディアコマース」と称して相当昔から僕は提唱してました。
メディアコマースモデルを解説すると①コマースにオウンドメディアを持たせてメディア化するパターン、②メディアのトラフィックをベースにコマース(アフィリエイト)に転換するパターンの2つが挙げられる。後者はiQonみたいなもので、Antennaもその路線を狙うのでしょう。ただキュレーションマガジンなので、トラフィクはメディアとして伸びやすい構造にあるのもしれない。
上述の通りAntennaとFlipboardはアクティブユーザーを周りで見かけず、僕自身も継続的に自分が利用するイメージが沸きません。リンク先は記事なのに画像中心のUIがどうも好きになれず、毎日見ようとは思えません。とはいえFlipboardは5,300万ユーザーです。この事業モデルは運営に人数は必要ないでしょうし、資金は広告に投下するくらいでしょう。2年前にValuation200M$で調達しているFlipboardはアクティブユーザー数がそれなりに伸びていれば次代の1B$スタートアップといえるのかもしれない。
という感じでニュース/キュレーションアプリ市場の最新動向と今後の予測でした。インフラサービスなので、ポテンシャルはでかいと思います。この分野に張っていらっしゃる投資家の方々は流石だなあと感じました。
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