この本を読んで、少し霧が晴れて視界が良好になった気がした。
この本はMEDIA MAKERSと並び、日本のメディア人にとっては必読でしょう。普段はそれなりに本を吟味して買うのですが、表紙を見て3秒で買いました。リニューアル後に快進撃を続ける東洋経済オンライン編集長佐々木紀彦氏の新著、5年後、メディアは稼げるか――Monetize or Die?
私自身、現在こういった自分のメディアを運営する一方で他のオンラインメディアに寄稿したり、月刊事業構想のような紙雑誌に寄稿している身なので、読み進めていて肌感覚で共感できることが多かった。
いくつか興味深かったことを抜粋して、考えてみる。
5年後に食えるメディア人:自分は起業家ジャーナリスト?
後半の方に「5年後に食えるメディア人10パターン」というのがある。この職種を列挙してみると
・次世代エディター&次世代ライター
・オンラインプロデューサー(中川淳一郎氏)
・ウェブメディア編集のプロ&データジャーナリスト
・データサイエンティスト&デジタルマーケター
・メディア運営のプロ&起業家ジャーナリスト(津田大介氏)
・メディアメーカー(田端信太郎氏)
日本国内では直接面識のある方々事例として出てくるため、大変興味深い。今まではメディア人としての最大のベンチマークは田端さんに置くべきだろうと思っていたのですが、本書を読んでどちらかというと自分は起業家ジャーナリストタイプを目指した方が良いのだろうと思いました。一応、会社経営してますし、マネタイズはそれなりに得意なはずです。
起業家ジャーナリストの例として
・MyNewsJapan編集長渡邊正浩氏
・ディッシュ編集長アンドリューサリバン氏
・モノクル編集長タイラー・ブリュレ氏
特にMyNewsJapanが月額1,890円で1,949人の会員を抱えているのは驚きました。単純計算で月商400万円近いです。Umeki Salonはそろそろ会員180名で月額平均単価は1,200-300円くらいなので、18-20倍の収益性。
著者の佐々木氏はサロンというビジネスモデルをご存じなかったか、マイナーすぎるかで本書に言及はありませんでしたが、サロンモデルは新しいメディアのマネタイズモデルだと思いますけどね。特に僕のような個人には相性が良い。早くサロンがメディアの新たなマネタイズモデルと認められるよう、僕も頑張らないといけません。
起業家ジャーナリストは自らメディアを運営しながら新たなマネタイズを模索できるタイプといえるでしょう。僕はそこを目指せばいいんじゃないかと感じました。
福沢諭吉に見る「起業家ジャーナリスト」の生き様
一番最後の項だったのですが、これがまた面白い。一部抜粋して要約。
・福沢は「時事新報」を作った
・福沢は「広告の布教」に励み、「日本一の時事新報に広告するものは、日本一の商売上手である」とのコピーを掲げた
・福沢自らコピーライティングや広告原稿を手掛け、広告主に「こんな文章を書けば読まれるコピーになる」という講義までした
・慶應門下生には広告代理店の設立を促し、広告営業やコピーライターの育成にも力を入れた
「ペンは剣より強し」の我が母校ですが、こんな背景があったとは知りませんでした。入学時に「学問のすすめ」とか配らずに、こういう面白い話を現代訳したものを配ればいいのに。
そして時事新報が打ち出してきたメディアのビジネスモデルも現代に応用できるものが多いためメモ。
・イベントの充実:美人コンテストとか
・コミュニティの形成:交詢社との提携
・書き手の多様化
・コンテンツのエンタメ化:漫画
・デザインへの配慮:紙の色をピンクに
・先端的なテクノロジー:カラー印刷
・データ情報の充実:物価動向などをはじめて新聞に掲載
・コンテンツの二次利用:書籍として出版
・ジャーナリズムの独立:誇大広告の多い企業を批判して広告主失う
The Startupでも応用できることが多数ありますね。
webメディアの稼ぎ方:ブランドコンテンツとメーター課金
タイトルが「5年後稼げるか?」という本なだけあり、かなり詳細にメディアのマネタイズ手法が解説されています。中でも印象に残ったのがブランドコンテンツとメーター課金。
ブランドコンテンツはタイアップ広告と一見違いが分かりにくいですが、タイアップ広告はあくまで当該企業の広告でありPRを含む。ブランドコンテンツは極論すると出稿主のビジネスPRには全く触れず、分野の啓蒙活動とかに関するコンテンツを出す。ミシュランタイヤが料理ガイドのミシュランをやるのは本業に何も関係がない。しかしミシュランガイドを通してブランドの知名度が上がり、結果的にタイヤの販売にも大きく寄与した。という事例。
「広告を面白くする」という観点でコンテンツを創るのがブランドコンテンツ。The Startupでも一部そういう取り組みがありますが、このモデルはクリエイティビティさえあれば高い粗利を実現できるため、注力ポイントにすべきですね。ただのバナー広告じゃ時代遅れです。僕はブランドコンテンツプランナーしての能力も底上げすべく、広告クリエイティブを学ぶ必要があるでしょう。クライアントには中長期的な目で見てもらう必要があるため、日本でブランドコンテンツの意義を理解してもらうのは少し時間か借りそうですね。
もう一つは有料課金の一つとしてのメーター制。これは月に10本までなら無料で読めるが、それ以上読みたければ課金してね。というフリーミアムモデルで、海外ではわりと主流になっているらしい。国内ではメーター制は未だ見かけないですね。日経とかが続き読みたければ課金しろって言ってきますが、あれにイラッとして直帰するのが僕です。日経は有料課金ユーザーが30万人いるそうですね。
The Startupは今の規模ではまだまだメーター制は導入できませんが、記事クオリティ的には課金してもいいと思えるものもいくつかあると思うんですがね…。今は認知拡大のため、気前よく無償提供です。
広告企画営業とデータ分析が今後の課題
今後のメディアの生き残り方として大いに参考になった本書ですが、僕個人として直近の課題は広告企画営業(含むブランドコンテンツ)やデータ分析をメディア運営にどう活かすかですね。データ分析はPVや滞在時間くらいは見ていますが、分析に時間を費やしてもそこから出てくる打ち手のROIはあまり高くない気がしています。
メディア運営者同士で広告企画営業やデータ分析についてディスカッションしたいなあ。イケダさんでも誘ってランチでもしてみるか。
注:著者の佐々木さん、私に対する東洋経済への寄稿依頼、お待ちしております笑
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