これからのシェア(株の%)とValuation(企業価値)の話をしよう

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スタートアップ界隈では避けて通れないのがこの種の議論です。起業家と会えば、シェアを取りすぎる投資家の評判を聞くし投資家と会えば、Valuationで折り合わないディールが少なくないと嘆く。

このシェアとValuationに関して、気になっているので私なりに今一度整理して書いてみようと思います。*ただし私はFinanceの専門家ではないのでその辺はご容赦いただきたい。突っ込み歓迎です。

■定義

この種の記事を書いた際に「シリーズAとシードシリーズは違う」など
指摘をいただいた気がしたので、今回はわかりやすくこうしたい。

1st:1回目の増資(300-500万程度)=いわゆるシードステージ
2nd:2回目の増資(1,000-3,000万程度)=いわゆるシリーズAレベル
3rd:3回目の増資(5,000万以上程度)=いわゆるシリーズBレベル

*また、最初から億単位、3,000万単位などもあるため、あくまで各ラウンドでの調達額は目安に過ぎず、例外も多分にあります。

1stラウンド:外部シェアを低く抑える

Y combinatorの「150万の出資で6-7%」というのを受けてか、日本でも「300-450万の出資で10-15%」というのが一般化しつつある気がします。
Valuationにして3,000万前後です。

このステージだけの増資でサービスが長く継続することは考えにくく、この程度の増資である程度キャッシュインできるモデルを構築できることは稀でほとんどの場合は次のラウンドでの増資を長くても半年後には視野に入れています。

出資される側の1stラウンドのポイントは「経営陣がある程度のシェアを維持すること」ではないかと。2ndラウンドでも一定のシェアを失うわけですからできるだけ10%程度に抑えておくのが無難かと思います。15%ではなく。

2ndラウンド:Post-Value 1-2億レンジを狙いつつシェアは低く抑える

「1,000万-3,000万くらいの出資で10-20%くらい」が妥当かと思います。
1,000万なら10%でPost-Valuation 1億かもしれないし、3,000万なら15%でPost-Valuation 1.5億かもしれない。

ベストケースは1stで外部株主が10%くらいで、2ndでも10%くらい。ワーストケースは1stで外部40%くらいで2ndで入れる投資家がシェアを余り持てない。Valuation 1億で1stの投資家40%で2ndで3,000万投資を受けて30%、経営陣30%。

2ndで痛い目に遭うので、1stで40%とか取られないというのは、当然だと思うのですが、資本政策上すごく大切です。

3rdラウンド:「1/3のシェア」を受け容れるか否か

「5,000万-1億(稀に日本では3-5億、ごく稀に10億)」この「数億」での投資は3rdではなく1stでいきなり実行されることもあります。

シェアに関しては本当にケースバイケースなので一概にいえないかと。ただ一ついえることは、数億単位の投資を受けると次のラウンドは日本ではほぼないケースが多い気がします。

なので「シェアを1/3特定の1社の外部株主に渡すか否か」「1社あたりのシェアは1/3に満たなくても、合計では1/3以上のシェアを割当てるか」
をシェアの1つの軸にしつつも、
拘りすぎずにできるだけ多く調達するのがいいのではないかと。いずれにしろ3rdラウンドのキーワードは「シェア1/3」ではないかと。 

最大のポイントは初期のシェアと1億円以上の出資

そのスタートアップのゴールが何かIPOなのかM&AでExitか未上場でのGoing Concernかによりますがおそらく1st,2nd,3rdの中で2〜3回資金調達を検討する機会があるかと思います。

ここでポイントになるのが2点。初期のラウンドではできるだけシェアを取れない。後のラウンドで不利になるから。1億以上調達できそうなラウンドではシェアをあまり気にしない。できるだけ多く調達し、そのラウンドを最後にゴールに向かって走り切る。1億以上入るラウンドが複数回あるところもあると思いますがそういうところは稀だと思います。

ぶっちゃけ、ベンチャーのValuationなんて適当

ここまで言っといてオチがこれかよって感じですがw 私がVC時代にとある人(一緒に仕事をしていたチームの人ではないですが)から聞いたのは
「ベンチャーの株価なんて適当だ」ということでした。

今でこそ1stラウンドではある程度の相場観が形成されているように見えますが、基本的にはラウンドを重ねるたびに株価は自動的に上がっていくのが慣例でありよほどのこと(売上や会員数が下がっている)がない限り、ダウンラウンドにはならないかと。

株価5万円なのか10万円なのかなんてなんとなくのノリで決めていることが多く、起業家が「いくら調達したいから」と予算のレンジを決めてそれに沿ってシェアやValuationなどの複合的な要素から投資金額を決めている感じです。

例外として参考にしたいライフネットとリブセンス

ライフネットは132億を集めた資本政策で有名でありHPに投資家のシェアも開示しています。スケールの大きいビジネスであり、来年上半期に向けた上場申請をしているというニュースもあります。経営陣はおそらくSOPだけなのでしょうが、上場時にはそれなりの規模になっていると思いますのでSOPで十分と最初に判断したのではないでしょうか。

リブセンスは12月にマザーズへ上場することを発表しましたが、ここは外部株主がゼロで、自己資本のみの方針を取ってきたことが伺えます。自己資本のみで第三者株主を入れないところは珍しくないですが自己資本のみで上場まで持っていくところは最近あまり見かけません。投資家から出資を受けるということは資金面で助かる反面、経営の独立性を失うこともあります。

多くのスタートアップにライフネットとリブセンスの資本政策は当てはまらないと思いますが、メインの項で紹介したような各ラウンドで出資を受けることが前提条件になっているようなスタートアップには、ベンチマークとしてこうした資本政策も参考までに考えてみた方がいいと思います。
特に学生起業家の場合は無理に外部株主を入れず、いけるところまで自己資本で行くというのも選択肢として大いにありかと。

100%外部株主、100%内部株主という例をみるとシェアやValuationの議論なんてどうでもよく見えてきたりしますが。あくまで超人たちの選択肢なのでご参考までに。

本稿を元にこれからのシェアやValuationを考えよう

以上、いろいろな資本政策を見て、シェアやValuationに執着しすぎず
投資を受けるベンチャーは「上記のポイント」を参考にしつつ、投資家は議決権のある1/3に固執しないのであれば、多少のシェアやValuationには目を瞑る。というフレキシブルな姿勢が 求められるのではないでしょうか。適当な市場ですからねw

現状の事例や選択肢をいろいろと見て、これからの資金調達および投資を考えてみてはいかがでしょうか。

あくまで各ラウンドでのケースは起業家サイドに立った私見ですが、投資家サイドからしても次のラウンドに進めないと投資回収できないので
Valuation 1億以下のシードやアーリーステージの 外部株主のシェアは抑えめにした方がお互いのためかと思います。 

ツッコミどころはあるでしょうが「シェア」「Valuation」を巡る話は気になる方が多いと思うので問題提起も兼ねて記事にしてみました。



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