確率は30-50%?:シードアクセラレーター4社発のスタートアップの次のラウンドの行方

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久々のファイナンスネタです。スタートアップはシードアクセラレーターからの資金調達の後、どのくらいの社数が次のラウンドに進み、どういう投資家から資金を得ているのか。この辺を知りたいという要望が読者からありました。本稿では主に公開情報を元に、「スタートアップのシードステージ後のラウンドの行方」に迫ります。

各シードアクセラレーターごとに次のラウンドに進んでいる事例を集めて紹介します。*各VCや投資家のリンクは、そのディールに関するニュースになっています。

意外にも?高い打率のサムライインキュベート

まずは圧倒的な投資社数で知られるサムライインキュベートです。今回対象となるのは1号ファンドと2号ファンドです。サムライインキュベートプレスリリースを元に作成しています。

■1号ファンド:出資9社、増資発表8社

・ノボット⇒ngiジャフコ&ニッセイmediaへEXIT(15億)
・情報プラネット⇒ngi(2,400万)⇒ニッセイ&SMBC(既存株主2社から買取)
・あたまソフト⇒三菱UFJ&三生(3,600万)
・アイアンドシー・クルーズ⇒環境エネルギー投資(2,750万)
・軒先⇒三井住友海上(5,010万)
・エニドア(コニャック)⇒ngi&スカイライト(3,200万)
・レイフロンティア⇒ネットプライス(資本提携&株式移動)
・Sassor⇒ユビキタス&デジガレ&ネットプライス

■2号ファンド:出資10社、増資発表3社

・ブクペ⇒ngi (2,000万)
・Whyteboard⇒インキュベイトファンド
・trippiece⇒Movida(500万)

■3号ファンド:出資8社

*おそらくプレスリリースが止まっており、出資社数はもっとある。

データを元にみると「サムライ⇒ngi」ラインのディールが4本ある。1号と2号で11/19社と過半数が次のラウンドに進んでいるのは中々悪くないのではないでしょうか。2号ファンドの残りと3号ファンドの成績に注目ですが、2号ファンド以降は次のラウンドのファイナンス額が下がっているのが気になるところだ。ノボット以降のExitでは情報プラネットがある意味Exitといえますが、次のホームランディールはどこになるかに注目です。

シードから共同出資を好むネットエイジ

4/17追記:ネットエイジ金澤氏から情報を頂き、一部追記しております。

ポートフォリオ
:10社、増資発表3社

Labit⇒個人投資家6名 (2,513万)
Oceans⇒ジャフコ&GMOVP (1億)
JX通信社⇒シードラウンドはCAVと同時 ⇒ ニューフロンティアパートナーズ (1,000万)
Nagisa⇒シードラウンドはもう1社と同時
getstage⇒シードラウンドは家入一真氏と同時
Nightlay⇒シードラウンドはアルトビジョンと同時
Everconnect⇒シードラウンドはVoyage&ネプチューンと同時

HP上から確認できるのはこれくらいですが、ネットエイジは300万で15%のシェアでファイナンスすると以前某イベントで話があった。傾向を見るとどこかのシードアクセラレーターと一緒にファイナンスする傾向があるようだ。調達側は他のVCをリードインベスターにしつつ、ネットエイジに声をかけるのもありかもしれない。

Y combinatorの出資を受ける企業も輩出するONL

ポートフォリオ:11社、増資発表4社

giftee⇒KDDI (1,000万)
Wondershake⇒ 個人投資家&サンブリッジ&CAV (360,000ドル)
Qlippy⇒ニッセイ&三生&プロジェクトオーシャン(4,100万)
FindJpn⇒デジガレ&個人投資家など (4,000万)

2010年4月にプログラムを開始と、サムライより開始時期は遅いが、それなりに次のラウンドへ進むスタートアップが出てきている。
Y combinatorの出資を受けるanyperkの前身であるmeepleもONL出身だ。海外との絡みに強い印象があり、特にシリコンバレーを狙う事業展開を考える場合はお勧めといえるだろう。ONLはプログラムであり、上記2社と比べて500万程度の出資ではない場合が多いと頭に入れておきたい。

億単位のディールへと繋ぐ可能性が高いCAベンチャーズ

ポートフォリオ:15社(スタートアップ支援)、増資発表2社

ワンオブゼム⇒GCP&IVP (3億)
マインドパレット(Snapeee)⇒ ITV&GREE(1億)

スタートアップ向けへの投資を本格化したのは、2011年7月のFrogAppsから。投資額が非公開である場合が多いが、CAV自体からは1,000万〜2,000万台後半のディールが主と思われる。サムライなどの300-500万のレンジと比較すると、シード資金が多いため、1年くらいCAVの投資のみでやりくりして次のラウンドに備える場合が多いと想像がつく。

HPに載っていないディールで、発掘すると下記のようなものもある。

garbs:CAVNVCC (6,000万)

他社と比べて、CAVの次のラウンドはそれなりに大きい額でのディールとなる傾向にあるようだ。上記の3社と異なるのは、GCPやIVPというビッグプレイヤーやCVCとして名高いITVへ繋いだ実績があるのは大きい。
確実に億単位のラウンドへ進む資本政策を検討するのであれば、CAVはお勧めの選択肢といえよう。アジアに支社が多いことから、アジア展開を狙う際にも良い選択肢といえるだろう。

また、スタートアップに限らずとも今年はIPO実績としてベクトルを輩出し、カヤックやパンカクなどもIPOが遠くないと噂されている。

スタートアップが次のラウンドに進む確率は50%?

今回はシードアクセラレーター4社の投資先約60社を対象に調査した。(他のシードアクセラレーターは10社前後の投資案件がネット上で確認できなかったので割愛した。ここも取り上げて欲しいというところがあれば、ぜひリクエスト頂きたい)

次のラウンドに進んでいるのは約20社と、確率は1/3である。(厳密にはサムライやCAVの直近の投資先もカウントされてしまっているため、次のラウンドに進めるスタートアップはもっと多いだろう)次のラウンドへの進出確率が50%くらいあれば、上出来といえるのではないだろうか。

資本政策は不可逆性が高いため、選択できる余裕があるのであれば、シードラウンド以降の資本政策の思惑に合致するところをリードインベスターとして招聘したい。各社支援体制は異なるであろうが、次のラウンドへ進んでいる実績値は客観的なファクトとして参考になるはずである。本稿がシードアクセラレーターからの投資を検討している人にとって有用な情報となれば幸いである。

気が向けば億単位のラウンドの投資家に関する考察も近々展開したい。



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