マニアックな読者に喜ばれるファイナンスネタですが、今回はFacebookなどへの投資で知られるDigital Sky Technologies（以下DST）について迫ります。DSTの名前を聞いたことがない人はスタートアップでは潜りといわれても致し方ないほど有名なファンドです。

日本国内でDSTに関するまとまった記事はあまり見当たらず、CNETの記事が一番参考になりました。DSTが何者でどういう投資戦略を持ち、どういったポートフォリオ構成なのかはマニアックな読者にとっては知りたい情報かと思います。ちなみにDSTのHPには全く情報がありません。

Goldman Sachs出身者が多数を占める投資ファンド

DSTに関するWilipediaを見ればかなりまとまった情報が載っています。
2005年創業の新興投資ファンドで、GSの出身者が多数を占めているようです。モスクワ出身のファウンダーのYuri Milner氏のキャリアはウォートンMBAを卒業後、世界銀行から投資ファンドを経て、メアリーミーカーのレポートを読んだことがきっかけでインターネットセクターに興味を持ち、インターネット企業であるNetbridgeを2000年に創業。2000年前後のシリコンバレーで勃興したビジネスモデルをロシアでタイムマシン経営的に立ち上げ、成功を収めているようです。

その後インターネットへの投資ファンドDSTを2005年に創業。その後2010年にMail.ru Groupと名前を変え、ロンドンで上場。当時＄5.6Bの時価総額を付けています。その後DST globalという別会社ができ、ポートフォリオはMail.ru GroupからDST globalへ移しているとのこと。業界では未だに最初の名前であるDigital Sky Technologiesの名で通っており、DST globalとなった今でもそう呼ばれることもあるとか。ちなみにYuri Milner氏は投資先に取締役で加わることはほぼないようだ。

IPO確実な銘柄狙いの投資戦略と華々しいポートフォリオ

上記のCNETの記事にもありますが、IPO間近と思われる銘柄への投資が多い模様。ポートフォリオを具体的に見てみましょう。
出典：各社名のリンク先のニュースソースおよびCrunch Base

Facebook：注記⇒特になし
Zynga：注記⇒Valuationは公表されていない
Groupon：注記⇒投資金額はどちらのラウンドも複数の投資家の合計
Spotify：注記⇒KPCBなどと3社同時ラウンドでの合計額が100M
twitter：注記⇒特になし
Zocdoc：注記⇒特になし

存じない方のために説明すると、Spotifyはメジャーレーベルの音楽を無料で聴き放題のストリーミングサービスで日本上陸も計画しているようだ。

NY発のZocdocは病院の予約システムから始まり、今はCGM機能もある。国内の記事ではこの記事とかこの記事が参考になる。初期のラウンドでアマゾンのジェフベゾスも投資している。

既にIPOしたZynga、Groupon、5月にIPOを予定するFacebook、加えてtwitterにまで投資しているDST。IPO確度の高い銘柄への投資戦略ということで、SpotifyやZocdocも数年後にはIPOしている確率がそれなりに高そうですね。真意はわかりかねますが、IPO確度の高さの情報はGSとの関係が深いことから情報ルートを持っているというのはありそうですね。

ちなみに2011年にはY-Combinatorへの出資も発表しています。

中国⇒ロシア⇒アメリカ＆EUという金の流れ

極めて高いパフォーマンスを発揮するDSTですが、一方では2010年に中国のTencentから300Mの出資を受けており、10%のシェアをTencentは持っています。（当時のValuationは＄3Bで上記のロンドン市場へのIPOで＄5.6Bとなっていますね）他の90%の株主構成の詳細は追っていませんが、中国マネーがロシアの投資家を経由してアメリカやEUのベンチャーへ投資がされているというマネーの流れは興味深い例ですね。

これだけIPO確度の高いDSTですが、「DST案件のIPO率が高い理由」や「IPO確度の見極め方」は分析考察できなかったですね。。。ただし、ZyngaはFBへの依存率が高いですが、どの投資案件も単独でプラットフォームとなれるサービスへと投資をしている傾向は見えますね。

DSTを率いるYuri Milner氏は次代のウォーレン・バフェット、ジョン・ドーアと呼ばれる日も遠くないでしょう。既にそうなのかもしれませんが。超一流の投資家のポートフォリオを研究することで気づかされることは多いですね。思いついて2時間でササッと書きましたが、我ながら勉強になりました。