オプトとセプテーニの業績と新規事業を比較してみた

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未上場企業のネタが枯渇してきたため、上場企業にまでカバレッジ範囲を広げてみます。ネット広告代理店として知られる、オプトとセプテーニ。昔はサイバーエージェントとネット広告代理店3強として競っていましたが、今は競合ですらなくなっていると市場からは見られており、オプトやセプテーニに関する記事をメディアで見かけることもあまりないですね。まずは業績比較を。

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■投資判断

オプト:中立⇒後述の投資事業に期待
セプテーニ:中立⇒後述のメディアコンテンツ事業の利益貢献に期待

結論からいうと、両社とも大きな成長は直近の1-2年では見込めなさそうなので、買い推奨はできません。広告代理事業の売上構成比率が高すぎるがゆえに、営業利益率が低いため、市場からは評価されにくいでしょう。売上規模が小さくても利益率が高いリブセンスのようなビジネスに市場は好感を示します。現状の株価がそれを物語っており、アベノミクスにも関わらず、株価はさほど伸びを示していない。

とはいえ、広告代理事業以外に何も仕込んでいないわけではない。両社の広告代理事業以外の取り組みに本稿では焦点を当てる。

オプトのデータベース事業には懐疑的。今後は投資事業?

■データベース事業:CCCとの合弁のPlatform ID

CCCとの合弁子会社であるPlatform IDを中心とするデータベース事業が好調の模様。売上約27億、営業利益2.8億、営業利益率約10%。2012年度アニュアルレポートによると下記。

インターネット広告の効果測定システムやサイト内解析システムなどのラインナップを備える「ADPLAN(アドプラン)」シリーズをはじめとするデータ分析事業の継続的収益化に加え、株式会社Platform IDにおいて、ターゲティング広告のデータプラットフォーム「Xrost™」シリーズの配信先が拡大

xrostはターゲティング広告配信のプラットフォームツール、ADPLANはアナリティクスみたいなもの。どちらも広告代理事業がアップセル商材として売るのにシナジーがありそう。広告代理事業がマージン削って取ってきた案件を、これらのツールの導入で営業利益率を調整しにいくイメージ。

xrostって他と比べて競合優位性があるのか。一括管理ツールなので、広告主からしたら運用は1ツール使えば十分なはず。ADPLANは少し使ったことがありますが、そこまで価値が高いとも思えず、ユーザーインサイトとかでいいじゃんとか思う。よって、オプトのデータベース事業のアップサイドにはやや懐疑的です。

■オプトがキャッシュリッチでも買収されない理由

ちなみに、オプトは現預金143億で時価総額249億(しかも時価総額は一時期現預金額を割っていた)ので、PEファンドあたりが狙ってきてもおかしくない企業ですが、大株主に電通とCCCが既にいるため、めんどくさくて買収しにくいんでしょうね。

■今後は投資事業に注力?

上記の150億近いキャッシュを活かして、今後は投資事業に注力していくらしいという話をたしかな情報筋より掴みました。既にtrippieceやSumallyにも出資していますが、数億円単位での投資もあり得るとのこと。数億単位のプレイヤーは限られていますから、オプトが数億単位のディールに顔を出す機会が増えると、さらにシリーズAやBが活性化しそうですね。この動きはThe Startupとしては要チェックです。

セプテーニはメディアコンテンツ事業に注力?

セプテーニもサイバーエージェント同様に広告代理事業(ネットマーケティング事業という名称)の依存を脱却しようと試みているようだが、現状はネットマーケティング事業の売上構成比率が95%近くといえる。セプテーニで気になるのはネットマーケティング事業の「Facebook関連事業」と「メディアコンテンツ事業」だ。

■1:Facebook関連事業

Facebookページや広告の運営で売上がけっこう上がっていそうに見える。この手のビジネスはソーシャルメディア黎明期からループスコミュニケーションやトライバルメディアハウスが手掛けてきた領域といえるが、特に前者による高い企画力を元にした運営コンサルならまだしも、リスティングやSEO的な運用をFBページの運用にスライドさせていたとしたらどうだろう。

そして、FBページの運用にそんなに意味があるのかと市場は気づき始めているだろうが、まあ情弱クライアント相手に儲けるにはまだ数年持つかもしれない。FBページの運用。いくらなんだろう。利益率はリスティングより高いのかなあ。ちなみにFacebook ADの取扱高と取扱社数はセプテーニが国内トップらしい。

■2:メディアコンテンツ事業:コミックスマートの新設に期待

ここにはアクセルマーク、サイテックなどのソーシャルゲームを手掛ける子会社やセプテーニベンチャーズという新規事業部が手掛けるファッションブランドやショップのCGMであるMANTというサービスが含まれる。売上構成比率はまだ低いが、今後はこの分野に注力していきたい様子がうかがえる。その兆候が、マンガコンテンツ事業を手がけるコミックスマート株式会社という新たな子会社の設立(参考リンク)。この動きはちょっと面白い。

なぜなら既にマンガプラットフォームとしてかなり大きい規模であった、スパイシーソフトのマンガ★ゲットを事業譲渡でゲットしてきているからだ。会員数90万人(その内月額有料会員数が何万人かはわからないが)の資産を活かしつつ、マンガ家のインキュベーション事業をやるという。

月額会員事業は利益率が高いため、この事業(を継続するのであれば)がスケールするとセプテーニ全体に対するインパクトはまだまだ小さいだろうが、利益率は改善するだろう。いくらで買収したか知らないが、いい買い物だと思った。この事業には可能性を感じる。

オプトとセプテーニの成長戦略を考える

成長の踊り場に差し掛かっているネット系上場企業が取り得る戦略オプションの定石は3つ。

1:海外展開
2:新規事業
3:M&A

まず、ネット広告代理事業は海外展開は考えにくい。サイバーエージェントは北米にスマホ広告とかは進出しているようですが。新規事業に関しては、オプトはデータ関連、セプテーニはマンガ関連とかをやろうとしている。最後はM&A。

M&A余力を見るために、最初の比較表に現預金の欄を設けました。オプトは150億、セプテーニは50億のキャッシュを持っています。この一部を使ってセプテーニはスパイシーソフトからマンガ★ゲットをゲットしており、資産を有効活用して事業を伸ばしにいっている点は評価できるでしょう。

月並みな話ではあるが、キャッシュを活かしてM&Aを仕掛け、新規事業とくっ付けて伸ばしにいくのが最適な戦略かと。オプトは出資から新規事業創出に繋げたいという意図があるようです。この辺、M&Aをほとんどやらないとしているサイバーエージェントとは対極的。とはいえ、M&Aで買ってこれて、上手く事業シナジー作るのは新規事業を内製するのと同様にかなり難易度は高いし、買うに値する案件も市場にはさほど多くはない。

まずは利益率の高いサービスを買収し、全体へのPLインパクトを与えていこうとうセプテーニの戦略は悪くないんじゃないかな。スタートアップのExit先のセプテーニ、出資プレイヤーとしてのオプトという選択肢が増えてくるのは市場としては好ましいことですね。

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