各社の詳細は省きますが、今週はだいぶスタートアップの資金調達がバブってきた印象を受けた1週間でした。アベノミクスも無関係ではないのでしょう。この現象についてどう捉えるかは各々の立場によって異なります。
アナリスト的な性格の私はどうしても懐疑的に見てしまいます。(アナリストは悲観的なモノの見方をする性格の人が多いと思いますが、アナリストの皆様、いかがでしょうか)そこで本稿では極力多角的な確度から、このスタートアップの資金調達バブルについてどのような見解を持つであろうかを分析したいと思います。
*ちなみに悲観的な性格のアナリストが「buy」とか「いい!」というものはあらゆるリスク要因を鑑みて算出した結論であることが多いと思うので、それなりに当たる確率も高いと思っているんですよね。勝手に。
■1:投資家(ファンドへの出資者)
資金調達バブルへの見方:△
バブルで一番損をしそうなのが出資者です。バブルにより投資基準が緩和され、リターンの見込みが低い案件にファンドが出資していくことが予想されます。私の知人のS田さんという方が「資金調達バブル?いいんじゃないの?ただし、LPだったらブチ切れるけどな」と仰っており、この一言が結構本質を突いています。
■2:投資家(シリーズA以降)
資金調達バブルへの見方:○
今回のバブルのメインプレイヤーです。億で入れるプレイヤーです。ファンドの金が余っているので、入れざるを得ないとか、場合によっては投資件数のノルマがあるとか、営業会社だろっていうVCもあるようです。この人たちがバブルを演出しているともいえます。しかし、投資基準を緩和して入れた案件のリターンは懐疑的です。数年後に痛い目を見ている可能性が上がっているはずですが、直近ではアベノミクスに乗じて調子に乗る感じかと。
■3:投資家(シードアクセラレーター)
資金調達バブルへの見方:◎
実はポジション的に資金調達バブルを歓迎せざるを得ないのはシードアクセラレーターだと思います。彼らの主な仕事は投資先をシリーズAへ連れて行くことです。言い方は悪いですが、どんな形であれシリーズAへ繋げることが仕事です。シリーズAの引き受け先が増えているのですから(バブっていたとしても)有難いはずで、容易にニ○セイキャピタルを批判できない立場にあるのがシードアクセラレーターの本音でしょう。シードアクセラレーターはこのバブルに乗じるべき立場にあるのです。
■4:スタートアップ経営者
資金調達バブルへの見方:◎
スタートアップの経営者にとっては極論、どこのVCからの資金でも金は金です。集められる時に集めるというのが資金調達のセオリーであることは間違いなく、この地合を当然歓迎しているはずです。どんなに綺麗ごとを言ったとしても、調達して経営を続けることが彼らの最大の優先順位です。
■5:アウトサイダー
資金調達バブルへの見方:△〜◎
このバブルへ懐疑的な見方をしているその多くは当該プレイヤーではないアウトサイダーの人たちがほとんどといえます。メディア、アナリスト、資本市場関係者、ただの野次馬。私はメディア&アナリストごっこをしているので、このアウトサイダーに入ります。
バブルについてどう思いますか?という会話は、天気の会話みたいなものです。私がバブルに懐疑的な理由というのは、成長ポテンシャルが低い企業へ投資しても資金が無駄になるからです。なんかファンドの出資者に似た心理なのかもしれません。よって各案件を見て、自分ならこのファンドの出資者になりたいと思うか否か、ファンドにリターンを類推してしまいます。
■マクロで見るスタートアップ・バブルの功罪
マクロで見たときのスタートアップ・バブルというのはどうなのでしょう。私は実はマクロ経済にかなり疎いため、的を外していたらアレなのですが。わけのわからぬ公共事業に資金を投下されるより、スタートアップに金が回ってくる方が全然いいだろうという見方もあり、たしかにそれはそうだと思います。マクロで見た場合の比較論になりますが。
しかし公共事業同様に金をバラまけばいいわけではなく、見極めが大事だと思います。億で投資をしそうなファンドの設立が相次いでいますが、この辺のファンドのリターンと投資案件の見極めの相関に注目していきたいと思います。
マクロで見ると(相対的に)スタートアップ・バブルは歓迎すべきものなのかもしれない。しかしミクロで見ると回収見込みのない減損銘柄が増える可能性が高まるので、容易に歓迎できない。という「功罪」になります。
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