GILT(ギルト)――ITとファッションで世界を変える私たちの起業ストーリーという本が最近発売されましたね。400ページ強のけっこうな大作でしたが、面白かったです。起業家物語的な本としてはかなり面白い部類だったと思いますので、お時間がある方は読んで損はないかと思います。(私がファッション好きだったから面白かったのかもしれません…)
GILTといえば高級アパレル商材を中心とした会員制ファミリーセールサイトですが、そのマーケティング手法が度々話題に上がることがありました。GILTをただのコマースサイトと見るのではなく、秀逸なマーケティング事例という観点でみると得るものが多そうです。本稿ではGILTの本を読む暇がないであろうお忙しい皆様のために、GILTのバイラルマーケティングの要点をサマライズし、+α私の考察にてお届けします。
尚、本稿はGILTの下記の2章を参照を参考に執筆しました。
P208-第8章バイラル・マーケティングで顧客獲得
P230-第9章草の根作戦
GILTというプロダクトとバイラルの相関性
まず、GILTのケースでは下記のプロダクトの要素がバイラルが有効に働いたと思われる。
■GILTというプロダクトとバイラルの相関性
1:会員性であること
2:サンプルセール自体バイラルと相性が良い
3:人に話したくなるほどの魅力があるサイト(キュレーションされたMD、洗練されたデザイン)
4:GILTを運営する自分たち自身がターゲットユーザーだったこと
この点は次項で後述する、バイラルマーケティング(プロモーション分野)でも触れるが下記のチェックリストの1と2と3を満たす性質があるといえよう。
■バイラルマーケティングへの適正チェックリスト(P223)
1:友人との雑談で自然に話題に上がるような分野か
2:顧客へのメッセージは明確で説得力があり、簡単に説明できるか
3:友人に伝えることで顧客は何か得をするか(金銭&非金銭)
4:ターゲットとする顧客を特定し、すぐに接触できるか
5:繰り返しサイトを訪れ話題にしたくなる動機付けができているか
「GILTループ」によるバイラルマーケティングの仕組み
GILTのバイラルマーケの一部を図解化および抽象化し、解説します。
「GILTループ」と勝手に名付けてみた。このループを構成する5つの要素をそれぞれ解説する。
■1:「ブロガー」はバイラルマーケティングの要
そのプロダクトに興味を持って、記事を書いて伝えたがるような人。情報の発信源になり、そのブロガーはブロガーが関心がある分野の読者を保有している場合が多い。そのプロダクトと相性の良いブロガーへは頻繁に連絡し、時には特別扱いしてブロガーに優先的に情報を送るなど「業界人になった気分にさせる」ことがポイントだ。
これは私もいちブロガーとして同意できる点がある。一斉リリースに興味はなく、事前にいわばインサイダー的な情報を貰えた方がそのプロダクトへのエンゲージメントは上がる。
■2:「インフルエンサー」で情報を拡散
本書では「メイブン(通人)」という表現をしているが、少し意味合いが違ってしまう可能性もあるが一般用語的にわかりやすいであろうと思い「インフルエンサー」に置き換えた。ブロガーとインフルエンサーを区別したのは、ブログを保有しているか否か程度の違いだ。ゆえに被る場合もある。インフルエンサーのターゲティングには2パターンある。
・プロダクトに興味がありそうな人
・バイラルしやすい生活環境にある人(大学生など)
特に「情報交換の機会が多そうな属性」はバイラルマーケティングで活かせると良い。自身のプロダクトと相性が良さそうなコミュニティを見つけることは重要であろう。GILTの場合はまずはこうしたインフルエンサーをオンラインでリストアップして招待メールを送りまくったという。
バイラルする際の「報酬」に関して。GILTの場合は友人を招待するとGILT上で最初の買い物をする際に25ドルの商品券をプレゼントするというリワードを付けた。それ以外にもお得な情報を教えることによる「心理的報酬」や「社会的報酬」で人を動かせる場合もあることを認識しておきたい。
■3:「プレミアム会員」は「インサイダー」になり得る
GILTでは「GILTノワール」というプレミアム会員制度があるようだ。ノワールの特典には下記がある。
■ギルトノワール=熱心なファンのための特別カテゴリー
・他の会員が参加できない特別セールに招待
・内輪の親密なディナーに招待
特にディナー後の効果に関しては、ノワールにとってGILTは「ファッショニスタのためのサイト」から「友人がやっているサイト」になったからか、購買額が伸びる場合が多いという。GILTノワールを「インサイダー・マーケティング」と本書では称していましたが、この表現は面白いですね。重要顧客は顧客ではなく友人に転換させてしまう。という発想。
■4:継続的なオフラインイベントの開催
GILTはそれぞれの都市に自分たちのターゲットユーザーがいると考え、それぞれの都市の生態系にギルトに関するニュースのタネをまき、増殖させることを狙った。その地で影響力のある流行発信人や情報通をもてなすイベントを主催していった。時には「インサイダー・マーケティング」の一貫として、流行発信者に呼びかけ、主催者側の一員としてイベントの企画実行委員会に招待することもあった。
ニュース性があるが、経費があまりかからないイベントを何十回も主催した。GILTのCEOが毎回赴き、アポなしでマドンナが参加したこともあるなど煌びやかなイベントを開催することもあった。それだけでなく、全米の主要都市を数ヶ月以内に再訪した。各都市の流行発信者や情報通と継続的な関係を築くためであった。これが上手く機能して、各都市にGILTを拡める人を増殖できた。
このスキームはRettyのオフラインイベントに近しいスキームですね。GILTのこのスキームを当時知っていたわけではないですが、Rettyを見ていても口コミサイトである分下手するとGILTよりかなり有効に機能しているような印象を受けます。
■5:オフラインイベントをフックにしたメディア掲載
オフラインイベントを機に影響力のある地元紙やTVラジオブログで取り上げてもらう。メディアに取り上げられるようなイベントの演出を心掛けたという。オフラインイベントがきっかけではなかったようだが、GILTが一番会員が増えたのはTV番組で紹介されたときであったようだ。それだけで数万人会員数が伸びたと。
メディア・リレーションとしては普通のことであるが、何回もサイトにアクセスしてもらうために、どんどん話題を提供していった。今後のセール情報を記載してユーザーを期待させるなど。
この5つの要素は独立事象ではなく、連動し合っている。ゆえに「GILTループ」と名付けてみたわけだ。バイラルマーケティングを考える際に、GILTループの考え方が少しでも皆様のお役に立てればと思い、実はGW初日の朝から執筆した。
バイラルマーケティングや「メイブン(通人)」の存在を理解するには、下記の本が参考になる。
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