金を出すだけじゃバリューはない。VCが提供する6つの本質的な価値

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巷では「VC向けの超ニッチブログ」とも言われているらしいThe Startup。
元VCの視点から、VCに関して思うところは色々ありますので
いくつか小出しにしていきたいと思います。
今回のテーマは「VCの本質的な価値」に迫ります。

一時期の金融系VCなどは「金を入れた後は祈るだけであり、銀行の融資担当者と変わらない」
とよく言われていました。
VCというのはその名の通り「Venture Capital」であり、ベンチャーに金を入れるのが仕事です。
ただ、ベンチャーに金を入れるだけでは起業家側もマーケット側も「いいね!」しない時代であり
金以外にそのキャピタリストが投資先に対して提供しうる価値は何なのか。
起業家がVCに金以外に求めるものは具体的には何なのか。
ブレイクダウンして突っ込んだ指摘はあまり見たことがないので
私なりにまとめました。

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■1.キャピタリストのブランド(ヒト)
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日本国内ではかなり狭い業界と言えるVC業界ですが
なんといいますか、「どこの会社がどこに入れた」というのも大事なんですが
「キャピタリストは誰なのか」がかなり重要だったりします。
私が会社員でなければ国内のキャピタリストをまとめた「キャピタリストランキング」
(日経ヴェリタスのアナリストランキングのようなものですね)でもやりたいところなのですが
ペナルティエリア内すぎるので悩みどころであります。
業界で著名で影響力があるキャピタリストが入れた案件には当然注目度が上がります。
キャピタリストのブランド力がダイレクトに投資先の価値に加わることになります。
後述の2-5にもダイレクトに関わるところなのですが
「誰が入れた案件か」そのリードインベスターの色で
業界から(特にVCからの見方)は変わってくるかと思います。

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■2.人材リクルーティング(ヒト)
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ベンチャー企業、特にスタートアップに置いては
人材リクルーティングの難易度はかなり高いと思います。
給料も良くない、未来はどうなるかわからないというのが普通であり
よほど起業家とか事業が魅力的でないと人は採れないと思います。
特に会社の中核をなすCクラス候補はシード時に共同創業とかでない限りは
途中で(特にアーリーステージで)見つけて採用するのは難しいと思います。
いいキャピタリストだとCクラス候補を紹介できたりして
投資先のリクルーティングの手助けをできるかと思います。
アーリーステージでは採用に時間をかけてもなかなかいい成果を残しにくいのが普通だと思いますので
いい人材を紹介して投資先に入れるというのは
特にアーリーステージにとっては人材紹介会社でもできない価値になるかと思います。

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■3.戦略策定などの議論のカウンターパート(情報)
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キャピタリストの地頭や投資先のビジネスへの理解力にもよるのですが
多くの起業家は議論のカウンターパートとしての価値を期待しているようですし
ボラティリティはあれどもVCが提供しうる「最低限の価値」かとも思います。
投資先のビジネスに対してあーだこーだいうだけではなく
マーケット的な視点や競合他社の事例で起業家が持てないような視点からの議論が重要です。
起業家は当然自社サービスを考えることに一番時間を使います。
VCは投資先も含めて色々なサービスを見ています。
マーケットに対する知見がより幅広いのは当然VCであるはずであり
そうした視点からの議論には起業家は価値を感じるでしょう。

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■4.事業シナジーを含む大型アライアンス(モノ)
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起業家はサービスを運営していれば売上ないしはユーザー数を上げたいというのが至上命題であり
VCは起業家が思いつかないような視点の事業シナジーや大型アライアンスを仕掛けることによって
売上の数字で貢献できれば価値になるといえます。
(起業家が思いつかないようなものでなくても、実行できて数字がつけば十分な価値です)
この売上やユーザー数を上げるという価値に対して有利に働くのが事業会社系のVCであり
事業会社系のVCというだけで起業家からは金融系VCと違った目で見られるので
事業会社系のVC側からすると優位性になります。

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■5.イベント開催(場所)
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事業シナジーや大型アライアンスに発展し得る場所の提供ということで
ファンド主導のイベントの開催などもの価値として挙げられます。
国内でもいくつかのファンドがファンド主導のイベントを開催していますが
そういったイベントを開催するファンドの投資先であることで
人脈を拡げやすく情報が入ってきやすくなるという価値はあるかと思います。
その中から人材リクルーティングやマーケットの情報交換、
大型アライアンスに結びつけることができるかと思います。
こうしたイベントを開催できるVCファンドは現状では多くありません。
そのファンドの投資先同士のアライアンスなども
こういったイベントを設けることでアレンジしやすくなるので
イベント開催というのは実は結構な価値になっているといえそうです。
最近ファンド主導のイベントが微増傾向にあるように見えますが
各ファンドがその重要性に気づいてきた証拠と言えそうです。

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■6.次のラウンドの資金調達(カネ)
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これはリードインベスターが主な役割を担っているかもしれませんが
次のラウンドのアレンジでバリュエーションを伸ばせるかどうかも
キャピタリストが提供する価値になるでしょう。
当然、売上やユーザー数が伸びていることがバリュエーションを上げる最低条件なのですが
次のラウンドで入れてくる投資家は起業家だけではなくリードインベスターの言い分も大いに参考にするので
正当にバリュエーションを上げられる交渉力や、次のラウンドの投資家候補をソーシングしてくる力は価値になります。
これは1の「キャピタリストのブランド」とダイレクトに結びついており
具体例としては「シードで榊原さんが入れてるから、ミドルで入れてあげてもいいかな」
とか投資家候補が判断する際に「誰がリードインベスターか」は判断条件に入ってくるかと思います。

以上です。
この6つの価値を提供できているキャピタリストは
相当強いだろうなーと思いました。
他にも「こんな価値あるだろ」など抜けている点があればご指摘頂けると嬉しいです。



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