キャッシュポイントが豊富なビズリーチのビジネスモデルの考察

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私がまだ会社員だった頃、2011年の夏。こっそりとビズリーチに登録したことがありました。ビズリーチは年収1,000万円以上の求人情報に限定した転職サイトで、現在の年収が750万円以上の求職者のみ登録できる転職サイトです。ネット企業に勤める3年目の会社員であった私は当時その条件を満たしておらず、モニター会員の募集をしていたのを見て会員になったのでした。(無料で3ヶ月会員とかだったかな)当時からビズリーチのビジネスモデルは面白いなと思っていたので、考察します。

おおよそのビジネスの流れは図の感じ。各モデルの項目別に解説します。

ビズリーチのユーザー課金はドル箱!?

まず、転職サイトにユーザーが課金するというモデルが今まであまりない画期的なモデルです。転職サイトへのユーザー月額課金においては下記のインサイトが考えられます。①の矢印の解説。

■ユーザー月額課金のインサイト

1:年収1,000万円以上をターゲットにしているため、ターゲット層において月額4,980円というのは妥当性のある金額感である。
2:ターゲットユーザーは月額課金してででも、より良い転職先の候補となる情報を欲しいというニーズは高い。

よって、課金ニーズはそれなりに強いといえると思います。

■200万人の高単価な潜在市場

約1年前にあたるプレスリリースで会員10万人突破のリリースを打っています。10万人が有料会員と考えるのは早計で、私のようなユーザーもいるでしょうから、せいぜい7掛けで考えておくと良いかもしれません。日本国内の年収1,000万以上の層は就労人口約4,400万人における5%程度(200万人程度)らしいので(国税庁にデータがあるそうな)200万人程度の潜在市場といえます。(過去記事にも潜在需要の話はありますね)

■月額課金による売上規模の推定

年間ARPU3万円×有料ユーザー7万人=20億円

ARPUの根拠はライフタイム半年と仮定。転職活動の期間として平均半年くらいは適切かと。Umeki Salon調べでは、現状年収1,000万円以上ではなく、年収upして年収1,000万以上の転職を希望する人の退会率が低いのではないかという話がありましたね。750万円〜1,000万円の年収レンジのユーザーがボリュームゾーンになるのではと。

そして1度転職しても、ビズリーチを使って転職が成立したら退会するのでしょうか。成功体験があれば案外退会率は低減できる気がします。意外にライフタイムはもっと長いかもしれません。

有料ユーザー数ですが直近の数字はわかりませんが、少なく見積もってリリーズの10万人会員とうちの7割と仮定し、最低7万人くらいいるのではという根拠。ユーザーからの月額課金で着実に稼げるモデルに見えます。ここはドル箱に見えるのですが、実態はどうなのでしょうか。厳密にいえば、200万人市場ということもあり、今後は回転率や需要の一巡が変数となるでしょう。

エージェントからの紹介成果報酬と企業システム使用料

法人からの課金体系を見ていきましょう。

■エージェントからはエージェントの成果報酬の30%をビズリーチへ

⑤の矢印の解説。エージェント業を営む知人にヒアリングしました。ビズリーチ会員をエージェントがヘッドハンティングして企業が採用して入社した場合、企業からヘッドハンターへは従来の人材紹介同様年収30%のフィーが入ります。そのフィーのうちの30%をエージェントからビズリーチにバックする仕組みのようです。

図では求職者・梅木が年収1,000万円で紹介成立した場合、エージェントに30%の300万円が成果報酬として入り、その30%の90万円をエージェントがビズリーチに支払うという仕組みです。エージェントのデータベース(求職者の情報)使用料があるという説もありますが(リクナビはDB使用料が発生すると聞いています)紹介成立数がどれくらいかの推測は難しいですね。

■企業からのシステム使用料

①’の解説。広告掲載ではなく、システム使用料となるそうです。媒体資料によると、プレミアムプランは6ヶ月で基本使用料180万円+入社時成功報酬40万円、スタンダード基本使用料80万円+入社時成功報酬70万円らしいです。何社契約しているのかはわかりませんが、けっこうここも美味しいモデルで、儲かっているのではと聞いています。

通常の転職サイト運営事業者より人件費比率は低いと想定

一般ユーザーと法人から、3つのキャッシュポイントを見てきましたが、コスト構造はどうでしょうか。

■相対的に低い人件費比率と学歴ターゲFacebook広告

この種の通常の転職サイトであれば広告営業マンを多く抱えているでしょう。実は私も学生時代に転職サイトの広告営業を経験しているので、土地勘がある分野です。企業よりも、エージェントへの登録のリーチを拡げる立ち上げ方をしたのではないかと勝手に推測します。エージェントの人数は限られていますし、エージェントが成功体験を積んで企業へバイラルで拡がるという循環が考えられます。なので既存の転職サイトの運営会社よりは人件費比率は低いと想定します。

広告費に関しては学歴ターゲティングが出来ることから、Facebook広告にかなりの額を投下したのではないかと推測します。現に慶應出身の僕はターゲティングされたのか、一時期はかなりの量のビズリーチ広告を目にしました。立ち上げ初期は相当突っ込んだのでしょう。最近は見かけなくなりました。サイトコンセプトでターゲットを絞っているので、通常の転職サイトよりもCPAは効率的かと思いますが。

■ビズリーチは構造的には高利益体質なビジネスモデル

広告費をどれだけ投下しているかで利益率は全然変わってくるでしょうが、人件費比率を抑えられるため、中長期的には高利益体質になりやすい良いビジネスモデルだと思います。月額課金でストックで設けつつ、成果報酬などのワンショットで積み上げていく。初期は広告費投下で赤字になりやすいでしょうが、ストックで利益を上げやすいモデルなのでは。

このようにいくつかビジネスモデルを研究していますが、キャッシュポイントを複数持つビジネスモデルは収益が安定しやすく、魅力的ですね。事業構想時から極力多くのキャッシュポイントの可能性を模索しておきたいですね。ビズリーチはユーザー課金が画期的だと思います。コンセプトを絞り込んだことで、ユーザー課金を実現させている。

そして、おそらく最初からキャッシュポイントが3つあったと思うんですよね。強いていうなら企業広告掲載が一番最後かも。サービスがスケールしてからマネタイズを考えれば良いという考え方に反対な私にとっては、最初の方のフェーズから課金できているのはとても良いと思います。

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